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国際物流のCO2排出削減に対応するための製造業の取り組み

目次
はじめに
近年、国際物流におけるCO2排出の問題が世界的に注目を集めています。
環境意識の高まりや各国政府の規制強化の流れを受け、製造業も真剣に「サステナブルな物流」への対応を迫られる時代となりました。
昭和の時代から”ものづくり”大国として走り続けてきた日本の製造現場。
しかし、グローバルサプライチェーンが複雑化するなか、アナログなやり方ではもはや限界を迎えています。
本記事では、20年以上現場で経験を積んだ目線から、CO2排出削減に向けて現実的かつ実践的な製造業の取り組み事例や今後の挑戦を解説します。
なぜ国際物流のCO2削減が急務なのか
規制強化とグリーン調達
世界の潮流は「脱炭素社会」へと大きく傾いています。
国連のSDGs、パリ協定、さらには各国の温室効果ガス削減目標が発表されてから、ESG経営やカーボンフットプリントの「見える化」は待ったなしです。
多くのグローバル企業が取引先を選定する際、「CO2排出量データ」の提出や「削減努力」を調達基準に組み込みはじめています。
逆に言えば、これらに積極的に対応できなければビジネスチャンスを失う時代になったということです。
物流におけるCO2排出の現実
製造業がCO2排出削減に本気で取り組むなかで、ひとつの盲点となっているのが物流部門です。
発電や製造現場でのエネルギー消費の「見える化」は進んでいますが、物流で動くトラック、船舶、航空機が排出するCO2量は膨大です。
とくに海外との取引が多い日本では、国際物流の最適化とカーボンニュートラル化が避けて通れない課題となっています。
現場発・製造業による実践的なCO2削減策
輸送手段の見直しと最適化
これまで「コストと納期重視」で選ばれてきた輸送手段ですが、いまや環境負荷も重要な判断基準となりました。
現場では以下のような工夫が始まっています。
- 航空便から船便へシフト
- 鉄道輸送の積極活用
- コンテナの積載率最大化(混載・共同輸送)
例えば、納期に若干の余裕を持たせ、急ぎ案件以外は船便に切り替えるだけでもCO2排出量を大きく減らすことができます。
また、複数メーカーで混載・共同輸送することで、1回あたりの輸送量を最大化。
データ連携やIoT活用により無駄のない積み付け・ルート選定ができるようになっています。
工場発・現場連携での物流効率化
肝になるのは生産現場と物流の密な連携です。
従来、「生産部門はとにかく作る」「物流は出荷するだけ」と縦割りが当たり前でした。
しかし現在は、
- 需要予測と在庫情報のリアルタイム共有
- 長尺物や重量物に適したパレタイズ・最適梱包の標準化
- 納期の平準化・分散出荷の工夫
など、製造・物流が一体となった効率改善が進んでいます。
例えば、複数部門で共同して週次・月次出荷スケジュールを組むことで「急ぎ便」や「小口運搬」を減らす試みが増えています。
サプライチェーン全体でのカーボンフットプリントの見える化
CO2削減の取り組みを事業の強みとするには、サプライチェーン全体のカーボンフットプリント(CFP)を正確に計測・報告することが必要です。
昭和から続くアナログ文化では「どんぶり勘定」が常でしたが、今ではERPやWMS(倉庫管理システム)に環境データの項目が組み込まれています。
また、取引先とも積極的にデータを共有し、以下のようなPDCAサイクルを回します。
- 各工程ごとのCO2排出量の算定
- 削減目標の設定・進捗管理
- サプライヤーとの共通フォーマットによる見える化
取引先ごとに脱炭素の優先順位や事情は違います。
現場をよく知る製造バイヤーがサプライヤーに寄り添いながら、情報開示や改善活動をリードしていくことも重要です。
最新技術とデジタル活用でさらに進むCO2削減
AI・IoTによる物流最適化
製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)とともに、AIやIoTを用いた物流最適化も注目されています。
たとえばAIによる需要予測、車両動態管理、最短ルート自動計算などが実用化されています。
IoT搭載のタグやセンサーで、貨物の位置や温度、CO2排出量までもリアルタイムに把握。
より現実的で細やかな「カーボンニュートラル戦略」を立案できる時代となっています。
脱炭素モーダルシフトと次世代輸送
カーボンニュートラルに向け、物流港湾や主要拠点での「水素トラック」「EVトラック」導入も広がっています。
また、輸送手段そのものも再構築が進みつつあります。
- 電動航空機やドローン輸送
- 再生可能エネルギー船舶
- 自動運転トラック
など先進技術が実用化されはじめ、今後の選択肢がさらに増えていくことは間違いありません。
昭和的アナログ文化からの脱却—現場が変わるためのアプローチ
現場職への意識改革と教育
CO2削減への一歩は「現場の理解と納得」から始まります。
トップダウンだけでなく、現場からボトムアップで「なぜ脱炭素が必要なのか」「自分の作業がどう影響するか」を腹落ちさせることが重要です。
・継続的な勉強会や意見交換会の実施
・現場主導の改善活動(小集団活動・KAIZEN)への脱炭素要素の組み込み
これらを地道に積み重ねることで、現場レベルの“気づき”を引き出しやすくなります。
データドリブンな意思決定の定着
アナログな「経験と勘」から、定量データを活用した意思決定への転換も必要です。
全社横断でのKPI設定やダッシュボード活用など、経営層から現場作業者まで同じ指標を共有する文化を育てていきましょう。
バイヤー、サプライヤーそれぞれの目線で考える
バイヤー側の課題と戦略
「グリーン調達」の推進は責任あるサプライチェーン構築のための必須要件です。
バイヤーは、
・サプライヤーのCO2削減努力を評価・選定に組み込む
・コミュニケーションを通じた改善要請、共通ゴールの設定
・脱炭素ソリューションや設備投資への支援(インセンティブ付与、共同開発)
など、サプライヤーと”パートナー”として取り組む姿勢が重要です。
サプライヤー側が知るべきこと
サプライヤーの立場からは、単なる「コスト優先」から一変し、
・CO2排出量データの提出
・脱炭素活動のアピール(設備投資、ISO取得など)
・先行事例、効果測定値の提示
が、新たな競争力として求められています。
現場目線で課題・困難を正直に伝えるオープンな関係性の構築が、今後の長期安定取引に資することは言うまでもありません。
まとめ—未来へ向けた“現場発”のイノベーション
CO2排出削減は決して理想論でも一過性のブームでもありません。
国際社会が本気で挑むいま、昭和のアナログ文化にどっぷり浸かった現場であっても、チャレンジとイノベーションは可能です。
現場の知恵とデジタルツール、バイヤーとサプライヤーのパートナーシップを武器に、持続可能なものづくりと物流を実現していきましょう。
製造業の新たな価値が、脱炭素時代にこそ強く輝くはずです。
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