投稿日:2025年12月24日

ショットブラスト装置で使うショット供給バルブ部材の製法と詰まり課題

ショットブラスト装置とは?現場での用途と基礎知識

ショットブラスト装置は、金属表面の加工やクリーニング、または塗装前の下地処理など、製造業の幅広いシーンで用いられています。

主な原理としては、高速で投射される金属ショット(粒子)が被加工物の表面に衝突し、錆や塗膜、不純物などを物理的に除去するというものです。

この工程は、部品の寿命を延ばすだけでなく、塗装や溶接の密着性向上にも寄与します。

自動車部品、造船、建築用鋼材など、適用範囲はとても広いです。

昭和から続く多くの工場では手動や半自動のモデルが使われていますが、昨今ではIoTと連動した自動制御型ショットブラスト装置も登場しています。

しかし、いずれの機種でも必須なのが「ショット供給バルブ」の存在です。

ショット供給バルブ部材の役割と重要性

ショット供給バルブは、ショットタンク内のメディア(ショット粒子)を決められた量・タイミングでブラストホイールやノズルへ送り出すための制御機構です。

この部位がうまく機能しない場合、適正なショット供給ができず、以下のような課題を引き起こします。

– 表面処理のムラ
– ショット消費量の増大
– 製品品質の不安定化
– 設備トラブルの多発

そのため、バイヤーやサプライヤーにとっても、ショット供給バルブの部材選定・製法は現場の安定稼働に直結する重大事項となります。

ショット供給バルブで使われる主要な部材とその製法

ショット供給バルブには多種多様な部材が使われます。

主な部材とその製法について現場目線で整理します。

1. バルブ本体(ハウジング)

バルブ本体は、ショットが通過する主要構造体です。

多くが鋳鉄、時に硬化処理を施した炭素鋼鋳物で作られています。

鋳造のメリットは、複雑形状が一体化でき、小ロットでも製作コストのバランスが良好な点です。

最近は耐摩耗用の特殊合金や耐熱鋳鋼も増えていますが、材料コストや後加工(機械加工)が増しがちなため、求められる耐久性とコストバランスを見極めて選ばれます。

2. シート(バルブの密閉部)

ショット供給量を制御するうえで最重要なのがシート部分です。

金属対金属で直接シールする設計と、内面をゴムやウレタンライニングする設計が共存しています。

金属シートの場合は工具鋼やステンレスの削り出し、または熱処理で硬度を上げたものを利用します。

樹脂シートはゴム成型や射出成型で生産されますが、近年は耐摩耗性を追求したウレタン系が増加傾向です。

3. アクチュエータ(駆動部)

バルブ開閉のためのアクチュエータは、手動ハンドル式から空気圧、電動タイプまで用途別に選択されます。

現場では部品標準化と保守性向上のため、国内外の汎用品を流用することも多いです。

そのため、バルブシートとのインターフェース精度や規格準拠性が重要視されます。

4. その他摩耗対策部材

デフレクターやインナーガイド、シールワッシャーなどのサブパーツも部材摩耗対策の工夫が進んでいます。

現場実態としては、簡単に交換できるユニット設計が喜ばれる上、肉盛り溶接や表面硬化処理(ショットピーニングや高周波焼入れ)が応用される例も増えています。

昭和型アナログ業界に根付く「詰まり」課題とその本質

いくらバルブや部材が高品質でも、ショット供給ラインの「詰まり」はショットブラスト工程における永遠の現場課題と言えます。

この詰まりは、現場のオペレーションや設備構造の問題だけでなく、「アナログ業界特有の昔ながらの運用方針」も影響しています。

具体的には次のような要因が複雑に絡み合っています。

1. 異物混入と分級不足

現場で回収したショットを再利用する際、切削粉やバリ、粉塵が混入したまま循環系へ戻る例は昭和型の工場では未だ多いです。

このとき、分級(ショット粒の選別)設備のメンテナンスや運転管理が疎かになると、バルブ部や配管内部で目詰まりを起こしやすくなります。

根本対応は「定期的な分級設備の清掃と点検」ですが、アナログなルールのまま属人的管理に頼っているケースも多いため、未解決となることが少なくありません。

2. ショットの過剰供給・不適切な粒径

「これぐらい多めにショットを流した方がよく落ちるだろう」といった現場独自の勘や習慣で、過剰にショットバルブを開けてしまい、供給量が多すぎて詰まりやすくする場面も見受けられます。

また、本来の設計流量や粒径選定を無視し、異なる規格のショットを混用するのもトラブルの原因です。

高度に自動化された最新設備ではセンサー制御などで這う可能ですが、アナログ業界では現場判断のまま運用されて課題が温存されがちです。

3. 洗浄・メンテナンス文化の成熟不足

現場目線の話として、「生産が忙しい」「品質に問題なければまだ動くから使い続けよう」と点検や洗浄を後回しにしがちな現状も指摘できます。

これによりバルブの差し込み口にショットが積層したり固着するリスクが高まります。

定期メンテナンスルールや権限をあいまいにしたまま属人化したオペレーションが根付いている工場ほど、こうした問題が繰り返し発生します。

詰まり課題の解決へ—現場改革の視点と最新ソリューション

こうした詰まり課題に挑むためには、単なる設計変更や高価な部材導入だけでなく、現場目線・運用プロセスの見直しが不可欠です。

また、近年はIotやデータ分析を活用した新しいアプローチも登場しています。

1. 設計思想の転換とメンテナンス性向上

詰まりやすい部位には「肉盛りや耐摩耗材を施す」「消耗部品をワンタッチで交換できる」など、最初からメンテナンス工数最小化を狙った設計思想が求められます。

また、バルブの流路をより丸みを帯びた構造にしたり、デッドスペースをなくす設計変更も有効です。

これは単なる材料選定だけにとどまらず、現場スタッフが自ら修理・分解しやすい構造を意識することも大切です。

2. IoTセンサー連携による詰まり検知、定量管理

最新のショットブラスト設備では、供給バルブ付近に流体圧センサーや振動センサーを装着し、詰まり兆候を検知するなどの仕組みが進化しています。

また、ショットの消費量や投入量を自動記録し、適正な範囲から外れたときだけアラームが上がるようなシステムも導入されています。

これにより属人的な現場勘から脱却し、科学的なデータにもとづく管理に一歩近づくことができます。

3. 洗浄・点検を自動化しやすいフロー設計

詰まりやすいバルブ部に、定期的に圧縮エアを逆流させて異物を弾き飛ばす「エアパージ機構」や、ワンタッチ分解式のカバー設計は現場に大変好評です。

また映像系IoTカメラを取り付け、詰まりの進行状況を遠隔で監視できる工場も増えてきました。

こうした自動化システムを活用することで、従来の「異常があってから対応」に頼る運用文化から「異常を予防する運用」へとパラダイムシフトが進んでいます。

サプライヤー・バイヤーが知るべき現場ニーズと業界の未来

サプライヤー・バイヤー双方が理解しておきたいのは、「単なるコスト競争」だけでは現場評価を得られない、という今後の動向です。

現場の声を拾い上げ、どのような使われ方・問題が起きているのかをリアルに把握することが重要です。

バイヤーは、詰まり課題やメンテナンスの実態まで踏み込んだ調達基準を設け、PoC(試験運用)やサンプル評価を重ねて情報収集を進めています。

サプライヤーは、材料や製法面だけでなく、現場運用を理解した提案力、IoTやメンテナンス自動化に対する柔軟な技術力も評価基準に入っています。

従来の「価格」「短納期」重視から、「現場力の強化」「ダウンタイム減」「属人化の解消」に ~軸を移しつつあるのが大きなトレンドです。

まとめ—製造現場の新たな地平を目指して

ショットブラスト装置で使うショット供給バルブは、単なる部品ではなく、現場の品質安定と生産効率の要です。

その選定や運用には、材料・製法のノウハウのみならず、詰まり対策や効率運用への深い理解が求められます。

アナログ業界の「昭和型習慣」から脱却し、IoTや自動化と融和させることで、日本の製造業はさらに次のステージに進めるはずです。

バイヤーを目指す方、サプライヤーサイドで現場課題に真剣に向き合う皆様には、ぜひ現場目線・運用目線から新たな提案や発信にチャレンジいただきたいと心から願っています。

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