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ショットブラスト装置で使うショット衝突板部材の製法と交換基準

目次
ショットブラスト装置とは何か―現場目線で見た基本構造と役割
ショットブラスト装置は、金属表面のさび落とし、バリ取り、表面強化などを目的として、鋼球などのショット媒体を高速で製品に当てる装置です。
多くの工場で使われているこの装置は、鋳鉄や鋼材などの表面処理ラインにとって不可欠な設備です。
古くは昭和の時代から変わらぬ原理で稼働している現場も多く、IT化や自動化の波が押し寄せる中でも人手によるメンテナンスやノウハウ継承が非常に重要な領域となっています。
この装置において、「ショット衝突板」(インパクトプレート/ディフレクタープレート)は、ショット媒体の流れや方向をコントロールしつつ、装置本体の摩耗を防ぐための重要な消耗部材です。
本稿では、そんなショット衝突板の製法や材料選定、さらには現場レベルで押さえておきたい交換基準まで詳しく解説いたします。
ショット衝突板(ディフレクタープレート)の基本的な役割
ショットブラスト装置の心臓部ともいえるタービンやホイールから打ち出されるショットは、非常に高速かつ強力です。
もしこれが直接装置内部やワークに当たれば、瞬く間に摩耗・損傷します。
その衝撃と磨耗から装置を守りつつ、ショットの流れを最適化して分散・均一化するのが、ショット衝突板(以下、衝突板)です。
衝突板は、消耗することを前提に定期交換が必要な部材であり、現場のメンテナンス担当者や購買部門にとっても、コスト・品質の両面から常に改善対象となるパーツです。
現場で主に使われるショット衝突板の材料と製法
代表的な材料:高マンガン鋼とその特性
まず主流となっている材料は高マンガン鋼です。
高マンガン鋼は耐衝撃性、耐摩耗性ともに抜群であるため、特に高荷重・高衝撃な用途に重宝されています。
衝撃を受ければ受けるほど表層が硬化する自己強化特性(ワークハードニング)を有しているため、ショットやスチールグリットなど硬質媒体による衝撃環境にも長期間耐えることができます。
コストはやや高めですが、中長期での交換サイクルや装置のダウンタイムを抑える観点から選ばれることが多いです。
クロム鋼や合金工具鋼、鋳造材が選択肢となる場合
装置の型式やコスト要求、または供給可能性(調達リードタイムなど)によっては、クロム含有量を増した合金工具鋼や、摩耗部分のみを局所的に硬化処理した鋳造品が採用されることもあります。
例えば、最新型のブラスト装置では部材形状が複雑化しており、CNC加工による高精度切削や、表面に硬化処理(焼入れ、ショットピーニング)を局所的に施したりする工夫も増えています。
「耐摩耗鋳鉄」を利用し、難しい形状を一体鋳造で生産しつつ、コストを抑える現場も存在します。
現場調達担当者にとっては、これらの材料・製法ごとに性能、単価、寿命、納期が変わるため、適正な選定が求められます。
製法の最前線:板材切削~鋳造品、そして表面処理技術の進展
・板材切削(ミルシート付きの鍛造材やロール材から切り出す)
・型鍛造からの機械加工
・耐摩耗鋳造による一体成形
・表面硬化層形成(浸炭焼入れ/ショットピーニング/肉盛り溶接等)
製品ごとの生産規模やユーザーニーズによって、合理的な選択が求められます。
例えば小ロットで特殊寸法が必要な場合は精密機械加工が強みを発揮しますし、量産化・標準化されている場合は鋳造+焼入れなどでコスト低減を狙うのが一般的です。
ショット衝突板の寿命と現実的な交換基準
実際の現場で最大の関心事は「いつ交換すべきか」「どこまで使えるのか」という交換基準です。
ここでは、よくある目安や先進現場のメンテナンス手法をご紹介します。
摩耗限度の判定―“厚みの減少”が最重要指標
ほとんどのショット衝突板には新品時の厚み(例えば12mmなど)が設計上決まっています。
そこから3~5mm程度減少した段階(例:新品比で60%以下)を危険源とし、交換を推奨しているメーカーが多いです。
この値以下になると局部的な割れや、ショットの打痕による亀裂、ついには本体損傷や近接する他の部品破損に直結するため、現場では安全マージンをとって定期点検と厚み測定を行うことが重要です。
目視点検・傷・亀裂の発生も要注意サイン
定期の停止点検で衝突板表面に目立ったクラック(ひび割れ)、異常摩耗、ショット溜まりやショット削れによる変形が見つかった場合も、即時の交換を検討してください。
破損箇所からショットが想定外の方向へ飛散することは、機械損傷のみならず作業者の安全リスクとなります。
ショット材質や装置異常による“加速摩耗”にも注意
異常摩耗の主な要因は、ショットの質やサイズの変化(硬度、粒径、形状が変化してエッジが鋭くなる等)、過大な吐出量(設定以上のショット流量)、タービン異常(回転バランス不良)などです。
こうした場合、正常時より早期に摩耗進行するため、異変にいち早く気づくためにも運転記録・点検記録をこまめにつけることが、現場力向上には不可欠です。
調達・購買担当者の視点で考える“最適なショット衝突板選定”とは
資材調達の担当や工場管理者としては、以下の観点で自社装置に最適な衝突板を選定することが、全体最適・コストダウン・品質向上につながります。
コストだけでは選ばない“全体最適”思考
単価が安い部材でも、摩耗・破損で停止が増えたり、装置本体のダメージにつながると、トータルコストは跳ね上がります。
衝突板は他の装置部品との相互作用も大きいため、ダウンタイム総コスト・予知保全の考え方も取り入れて、長期視点での評価が求められます。
サプライヤーとの情報共有・品質保証体制の構築
サプライヤーからはミルシート(材料証明書)や品質試験成績書を適切に受領し、次世代以降の設計変更情報や不具合履歴も含めて管理します。
また、設計変更や量産仕様変更の際には、購買部門から現場への積極的な情報展開・共有も不可欠です。
ひと昔前は稟議を通してからの“御用聞き購買”が主流でしたが、今や調達担当者もエンジニアリングやデータ活用が求められる時代です。
サプライヤーとのパートナーシップで“自社仕様”実現を
標準品だけでなく、自社仕様や改善要望がある場合は、サプライヤーと共同試作や材質比較試験(摩耗・耐衝撃テスト)を行いながら、自社に適した最適仕様を探ることがカギとなります。
ここをサボると、カタログ値頼みの部品選定に終始してしまい、コストアップ・品質劣化の悪循環になりかねません。
昭和的現場文化が根強く残る製造業での“ラテラルシンキング”のすすめ
日本の製造業は誇るべき現場力・熟練技能に支えられ、効率一辺倒ではない“現場目線の知恵”が今も大切にされています。
一方で、急速な自動化やデジタル化が進む中、今こそ従来の枠を越えたラテラルシンキング(水平思考)で現場改善に挑むことが、業界の未来を切り拓きます。
・摩耗状況をAI画像判定するIoTカメラ導入
・点検頻度・交換周期をビッグデータで解析し、自動発注スケジューリング
・現場の“暗黙知”をデジタルマニュアル化
こうした事例が、ショット衝突板のようなパーツ管理にも応用できる現代です。
人に頼るだけの勘と経験を現場から「見える化」し、組織資産として共有していくノウハウが、今後ますます重要となります。
まとめ―ショット衝突板で現場とサプライヤー、バイヤーがつながる時代
ショットブラスト装置の要となるショット衝突板は、材料や製法だけでなく、現場の日々の運用・メンテナンス体制・調達手法までが密接に関係しています。
購買・バイヤーは単なる価格交渉役でなく、現場とサプライヤーを結ぶ“橋渡し”として、仕様適合、ライフサイクルコスト最適化、全体のバリューチェーン強化を担う重要なプロフェッショナルです。
ショット衝突板に関する「現場の声」「メーカーの最新技術」「サプライヤーの提案力」をうまく組み合わせることで、生産性・安全性・コスト競争力は大きく高まります。
これからの製造業は、変化の時代です。
ぜひこの記事をきっかけに、目の前の一枚のパーツから、部門や会社、そして業界の枠を超えた新しい連携や学び合いを一緒に生み出していきましょう。