投稿日:2025年7月25日

市場規模予測韓国中国産業界開発戦略有機EL特徴活かす応用方法

はじめに

有機EL(エレクトロルミネッセンス)はディスプレイ分野における革命的な技術として、過去十数年で急速に進化を遂げてきました。
薄型化や高画質化を実現する有機ELディスプレイは、スマートフォンやテレビ、さらには自動車、サイネージ、照明装置など、幅広い応用分野を持っています。

2024年時点で市場規模の拡大を牽引するのは韓国と中国の巨大メーカーです。
サムスンディスプレイやLGディスプレイなど韓国勢の活発な研究開発、中国のBOEやCSOTといった急成長中サプライヤーが熾烈な開発競争を繰り広げています。

本記事では、韓国・中国産業界の開発戦略、市場規模の予測とシェア争い、有機ELの特徴を最大限に活かす応用例など、現場目線で深堀りしながらご紹介します。
ベテランバイヤー、調達担当、生産現場管理者の視点も交え、昭和的なアナログ現場から一歩踏み出すヒントを探ります。

有機EL市場の現状と今後の成長予測

世界市場規模の現状

有機ELディスプレイの2023年の世界市場規模は約400億ドルに到達しました。
大手調査会社によると、2027年には市場規模が700億ドルを突破すると予測されています。
特にスマートフォンや大型TV向けの用途が伸長しており、スマートフォンでは2019年時点で全体の4割が有機EL搭載というデータもあります。

韓国勢の市場シェアと戦略

韓国の2大ディスプレイメーカー(サムスンディスプレイ、LGディスプレイ)は、技術力・量産力で他国をリードしています。
サムスンはモバイル向けの中小型有機ELで世界シェアの約7割を持ち、LGは大型TV向けパネルで圧倒的な存在感を示しています。
両社の戦略は明確で、画質・耐久性・省エネ性のバランスを追求し、超高精細・フレキシブル・透明といった特殊な形状にも対応したプロダクトを続々と市場投入しています。

中国勢の追い上げ

一方、中国のBOE、CSOTなどは、国家的な戦略産業として膨大な投資を背景に研究開発と生産能力の増強を図っています。
技能者育成や素材企業との密接なネットワークを構築し、近年では中小型スマホ用パネルでサムスンに次ぐシェアを獲得。
独自プロセス技術やコスト競争力、内需の強さも相まって今後の世界的リーダーとなる可能性があります。

今後の業界動向と市場規模予測

5〜10年スパンで見ると、自動車・サイネージ・AR/VR・医療機器などの新分野で有機ELの需要が飛躍的に拡大すると予想されています。
大型・曲面・透過・折り曲げ可能など、これまでにないユニークな仕様がさらなる市場成長を後押しします。
昭和の感覚で「有機ELはスマホだけ」という認識では、サプライチェーンの市場変化についていけなくなるでしょう。

韓国・中国メーカーの開発戦略を読み解く

韓国メーカーの強みと開発スタンス

韓国勢は、有機ELの材料・プロセス・設備投資・量産立ち上げまで一気通貫の垂直統合体制を確立しています。
大規模なR&D投資、長年蓄積した工程管理ノウハウによる高歩留まり化、徹底した品質管理がコアの競争力です。

特にサムスンは、量産と並行してフレキシブル有機EL、折りたたみ、パンチホールディスプレイなど、毎年のように新構造を提案します。
材料メーカーや装置メーカーと並走し、パートナーシップを深める「共創」型サプライチェーン構築にも力を入れています。

中国メーカーのキャッチアップ施策

中国メーカーは国家主導の産業政策を背景とし、多額の資本と助成金で大量生産設備を一気に導入しています。
急激な生産立ち上げによって失敗を繰り返しながらも、人海戦術+データ解析によって歩留まり改善を実現してきました。

また、内製化率を高め、材料や装置も中国国内企業との協業を強化しコスト低減と納期短縮を実現しています。
設計〜量産〜販売まで意思決定が迅速で、バイヤーの細かな要望をスピーディに反映する現場力も強みです。

有機ELの特徴と“工場の視点”で見る応用可能性

有機ELの技術的特徴

有機ELディスプレイは、
– 薄型軽量で設計自由度が高い
– 高輝度・高コントラスト・広色域
– 発光原理上、バックライト不要で高エネルギー効率
– 曲げたり丸めたりできる柔軟性(フレキシブル基板対応)
– 低温プロセスで樹脂基板にも実装可能
といった特徴があります。

生産現場の目線で注目すべきは、「設計自由度」と「ラインへの実装性の高さ」です。
従来の液晶と違い、曲面や変形ディスプレイ、ガラス以外の素材にも応用が容易なことが、バイヤーや工場の設計担当に多様な選択肢を提供します。

応用事例:スマートフォンから自動車・サイネージへ

スマートフォンは“薄く・軽く・表示美しく・端部も曲げやすい”という有機ELの恩恵を最も受けている分野です。
しかし今や注目は、自動車の大型曲面ディスプレイや透明ディスプレイ、公共サイネージ、そしてウェアラブル端末へと広がっています。

産業用途では、機器の操作パネル・医療モニター・建材一体型照明など有機ELならではの薄型性、デザイン性、省エネ性が求められています。

工場自動化・生産性向上にも寄与

有機EL関連部品の組み立て工程はロボット化が進めやすく、多品種少量・単品受注にもフレキシブルに対応する新しい組立工場モデルが登場しています。
アナログな昭和工場では「組付ミス=不良」が大きな課題でしたが、有機ELは構造単純化や軽量化によってミスの削減・工程短縮も達成できます。

また、生産ライン自動監視用ディスプレイや、検査情報提示などの現場IoT化にも積極的に使われ始めています。

競争激化時代の「バイヤー視点」「サプライヤー視点」

バイヤーが注目すべき交渉ポイント

1. パネルの技術力(柔軟さ・消費電力・寿命)
2. サプライヤーの生産能力と納期信頼性
3. ロット/カスタム対応力
4. 長期採用後のサポート体制
5. コストとライフサイクル総合コストの最適化

特に中国メーカーの急伸で、コスト重視か、品質重視かのバランス選択が複雑になっています。
現場管理職や生産担当者と一体で使い勝手、安定供給性、ラインへの導入リスクも詳細に評価するべきです。

サプライヤーが知っておくべきバイヤー心理

バイヤーは単に「安ければいい」とは考えていません。
ライン移行リスク、工程追加コスト、保全部品や修理体制まで見きわめ、「全体最適」の視点で比較しています。

昭和時代のアナログ受発注、曖昧な納期回答、駆け引き重視では信頼を得られません。
韓国・中国の大手サプライヤーはデジタルツールを駆使し、工程・物流・アフターケアまで可視化した提案型営業を進めています。

まとめ:有機EL市場で勝ち残るために

有機ELはもはや“液晶の進化系”ではなく、産業用途・IoT・住空間インテリア・医療・車載など、生活や工場現場の至る所でイノベーションの源泉となりつつあります。

韓国・中国メーカーは「技術の深掘り」「垂直統合」「高速展開」という独自戦略で市場成長に対応しています。
日本メーカー・部品サプライヤーも、従来の発注の枠を超えて「応用提案力」「デジタル化」「調達サポート」など新しい強みを見つけ出すべきです。

これから製造業で働く新しい世代も、バイヤーを目指す方も、
サプライヤーの立場で市場やバイヤー心理を学びたい方も、有機EL産業のダイナミズム・進化の現場から多くを吸収できるはずです。
昭和から令和へ——アナログな現場にも柔軟な発想とデジタル思考を融合させ、新たな市場地平線を共に切り拓いていきましょう。

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