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中小企業が海外向け製品開発を進めるための市場リサーチ手法

目次
はじめに:中小企業が海外市場開拓に立ち向かう理由
グローバリゼーションの加速により、国内市場のみを相手にしている中小製造業にとっては、成長の限界が見え始めています。
特に少子高齢化が進む日本では、市場のパイがますます小さくなりつつあり、企業存続や飛躍のためには「海外進出」が選択肢として不可避です。
しかし、海外向け製品開発や市場開拓は決して容易ではありません。
言語・文化の壁、情報収集の困難、そして現地ニーズとのギャップなど、さまざまなハードルが立ちはだかります。
本記事では、自身の製造業現場での実践経験や、リアルな“現場感覚”、さらには昭和の時代から続くアナログ業界ならではの課題を交えながら、中小企業が確実に成果を上げるための市場リサーチ手法について深く掘り下げていきます。
現場目線で考える「市場リサーチ」の本質
単なるデータ収集では意味がない
多くの企業が「市場リサーチ」という言葉を聞くと、経済産業省の統計データや調査会社のレポートを集めることに終始しがちです。
しかし、製造業の現場では、紙の上のデータや業界雑誌の資料だけでは、本当の市場ニーズには辿りつけません。
たとえば、同じ“自動車部品”という業種でも、米国・欧州・アジアでは求められる品質や設計思想、求められるコスト水準が大きく異なります。
大事なのは「現地市場で本当に使われている製品がどんなものか」「競合は何を強みにしているのか」「現地ユーザーの“困りごと”は何か」という“リアル”を知ることです。
現場が感じる「声」こそが宝の山
私が工場長時代に重視したのは、海外の現地スタッフや現地顧客の「肌感覚」を聞き出すことでした。
たとえば現地展示会に出向いた際は、名刺交換やパンフレット配布よりも、通訳を挟んで「なぜこれを使っているのか」「どんな部分に不満があるのか」などを徹底的に聞き出しました。
特にBtoB分野では、「価格」「納期」「品質」「サービス」のうち、現地で何が一番評価されているかを聞き取ることが成果につながります。
効果的な海外市場リサーチの具体的手法
1. 業界展示会・見本市の最大活用
コロナ禍でオンライン化も進みましたが、やはりオフラインの展示会は生きた市場を体験できる最高のチャンスです。
最新トレンドの把握はもちろん、競合他社のブースをリサーチし、来場者の表情や反応を現地で観察します。
また、現地のバイヤーやエンドユーザーからのダイレクトな声を聞き、“自社の商材が現地の求めるスペックや価格に合致しているか”をその場でフィードバックしてもらえます。
現場経験が浅い場合は、展示会に通訳付きで視察するだけでも有益です。
現地の生身の声こそが、ネットや資料にはない「事実」を教えてくれます。
2. 業界ネットワークの構築と情報交換
サプライヤーや現地代理店、既に海外展開に成功している同業他社とコンタクトを持つことも重要です。
実は、昭和から続くアナログ的ネットワークこそが海外進出の“裏口”になりやすく、「あの商社に聞けば現地事情が分かる」「業界組合の会合でヒントが得られる」という事例は非常に多いです。
たとえば、海外バイヤーや現地生産者との直接的な交流会・飲み会で、本音ベースの意見を収集することができます。
リアルなネットワークにこだわる海外バイヤーは、意外に多いと感じています。
3. オンライン調査とSNSの活用
デジタル系リサーチも欠かせません。
たとえば、LinkedInやFacebook、現地でメジャーなSNSで業界関係者の投稿やグループを参照し、「どの製品が話題なのか」「ユーザーの悩みは何か」を観察します。
また、キーワード検索やフィードを使って競合他社の評判や事例、現地消費者のトレンドなどもキャッチアップしましょう。
クラウド型のアンケートや口コミ分析も、“現地消費者のホンネ声”を短時間で得るのに効果的です。
4. 既存取引先の声をヒアリング
すでに一部地域で展開している場合は、現地の既存取引先や現地法人スタッフから継続的に情報を集め、競合製品の動きや新規開拓の方向性を探ります。
商社・駐在員経由でローカル情報を得るのは古典的ですが確実な手法です。
とくに現地の営業、サービス要員はユーザーとの距離が近いので、ユーザー視点の“生きたコメント”が得やすいです。
苦戦する中小製造業の「昭和的」発想からの脱却
製品スペック至上主義から「使い勝手重視」へ
これまでの日本型製造業は、多機能・高品質・高性能にこだわる傾向が強く、カタログ数値では圧倒的に優れていても海外市場で「選ばれない」事例が後を絶ちません。
なぜなら、多くの新興国では“適正価格”や“メンテナンスの容易さ”、“現場の使いやすさ”のほうが重視されるからです。
実際、過去にインド市場で高級機能をウリにした商材を投入したものの、現地ユーザーが「壊れた時に直せない」「部品が手に入らない」と言って他国製を選ぶケースを目の当たりにしました。
スペック的な自信を一度疑い、徹底的に現地ニーズにシフトした開発を進めるべきです。
「大量生産・大量販売」から「小ロット・多品種対応」へ
また、昭和型の“大量生産→コスト競争”という価値観はグローバルでは通用しなくなっています。
むしろ「小ロット・多品種」に柔軟に対応できる体制や、「短納期対応」「カスタマイズ可能性」が競争力につながります。
現場レベルで生産・品質管理の仕組みを見直し、受注生産・変種変量生産へ転換する土台づくりが必要です。
サプライヤー・バイヤー両方の立場で意識すべきポイント
バイヤー目線:現地課題解決型で提案せよ
海外のバイヤーは、「貴社の製品が自社・顧客の課題をどう解決するのか」を最も重視します。
単なる技術や値段ではなく、「現地で起こっているこんなトラブルを、御社の製品が解消してくれるのか」「実際に稼働中の困りごとを把握して、解決策を提示できるのか」を明確に伝える必要があります。
ベンチマークは、“現場密着型”のセールス。
現地でのトライアルやサンプル提供など、現場で体験できる場を提案すると成功率が高まります。
サプライヤー目線:情報発信の「先回り」で差別化
一方でサプライヤー側は、現地ニーズや市場特性を先取りして情報発信する努力が求められます。
形だけのカタログ送付や「日本製だから品質は高いです」では、まったく響きません。
重要なのは、「現地の事情に合わせた仕様変更」、「現地での用法やトラブル対応事例」、「納期短縮やコスト削減事例」など、具体的なエビデンスを示すことです。
また、品質保証・アフターフォローの手厚さをアピールするのも有効です。
すぐに使える実践チェックリスト
・現地市場のニーズ調査は、現地語・現地スタッフに聞き取りを行いましたか?
・業界見本市では、競合製品の詳細を観察・ヒアリングしましたか?
・既存の現地代理店や取引先からの率直な意見を収集しましたか?
・SNSやwebレビューなど、新しい情報源を活用できていますか?
・現地ノウハウや事例を反映した仕様変更の検討を進めていますか?
・フォロー体制やサポート力を現地向けに具体的に提案していますか?
まとめ:海外市場は現場感覚のリサーチから始まる
中小製造業が海外市場へ進出し、成功するには「現場で感じるリアルなニーズ」をつかむことが何より大切です。
机上の空論やカタログスペックに頼るのではなく、実際に現地の人と話し、現地を歩き、現地の困りごとに寄り添う“昭和型”とは一線を画したラテラルな視点が要求されます。
市場リサーチには地味な作業も多いですが、現場目線を徹底した先にこそ新しい可能性が広がります。
この記事が、バイヤー志望者やサプライヤーの方々、製造業を担う現場の皆さんの新境地開拓の一助となれば幸いです。
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