陶器ポットの印刷で露光ムラを防ぐためのマスク配置と固定方法

陶器ポットの印刷現場で直面する「露光ムラ」問題とは

陶器ポットは、長年にわたり家庭や業務用として愛され続けています。
近年ではギフトやカフェ・飲食店向けなど用途の幅も広がる一方で、加飾の高度化や多品種小ロット生産への対応など、量産ラインだけでなく小規模現場でも品質向上が求められています。
そのなかで陶器ポットの印刷工程において特に現場を悩ませているのが「露光ムラ」問題です。

露光ムラは、絵柄やロゴといった加飾が均一に転写されず、色や濃度、輪郭の鮮明さにバラツキが出てしまう現象です。
とくにシルクスクリーン印刷やパッド印刷など、版を使った間接印刷工程では、露光工程における“マスク”の精度や配置、固定方法が最終品質に大きく関わってきます。

この記事では、現場目線で「なぜ露光ムラが起こるのか」、そして「どうすれば防げるのか」を深掘りし、現場に即したノウハウを共有します。

なぜ露光ムラが発生するのか？アナログ現場の根深い課題

陶器印刷のプロセスにおける露光の重要性

陶器ポットの印刷には、転写紙や感光性の版（スクリーンやパッド）を用いた工程が一般的です。
このとき「露光」とは、印刷版に紫外線などの光源を当てて、感光乳剤を硬化・描画させ、デザイン部分のみがインキを通す状態に仕上げる工程を指します。

露光が適切になされないと、デザインの輪郭がぼやける・一部がカスれる・色飛びする・インキが版から漏れるといったムラが起きやすくなります。
実情として、未だ多くの現場では人の手によるマスクの配置や固定が続けられており、微妙なズレや貼り付き不良がムラの要因となっています。

「昭和」の慣習が残る現場での露光ムラ要因

日本の製造業現場、とりわけ陶器や焼き物の印刷工場では、昔ながらの職人技や勘に頼るケースが少なくありません。
熟練作業者は「このくらいの位置、このくらいの圧」で位置合わせや固定を行いますが、再現性や標準化に乏しい作業となり、属人化の温床となっています。

さらに、固定に用いる治具やテープの品質ばらつき、版やマスク自体の精度、日々変動する作業環境（温度・湿度・埃）の影響も重なり、一定品質を保つことが困難な現場が散見されます。

マスク配置・固定の原理原則と現場改善のポイント

1. マスクの配置は「基準線」と「テンプレート」で標準化する

露光ムラを防ぐ第一歩は、そもそもマスクを正確な位置に配置することです。
昭和型現場では、目分量や現物合わせによる配置が常態化していますが、「基準線」や「位置決め治具」の活用で均質化が図れます。

– ポット本体または印刷版に基準線（リファレンスライン）を設ける
– 基準線に沿ってマスク枠を固定するための治具やテンプレートを用意する
– 作業手順書で配置手順を明確化し、誰がやっても同じ位置に設置できる状態を作る

これだけで、人依存のズレは劇的に減少します。

2. マスクの固定は「全面密着」「剛性均一」がカギ

単にマスクを「貼る」「抑える」だけでは、細かな浮きやたわみ、ズレが発生しやすく、露光ムラが生じます。
重要なのは「マスク全体をフラットに、かつ均一の圧で密着させる」ことです。

– 両面テープやマグネット、スプリング式固定具の活用も有効
– マスクの外周だけでなく、中央部分も均一にセットできる工夫が必要
– 版や枠のゆがみを補正するアジャスター付き治具の導入も視野に入れる

また、使い回しのテープや摩耗したパーツは必ず定期的に交換し、劣化による密着不良を防ぎましょう。

3. マスクの品質管理と印刷前点検の徹底

マスク自体の品質（清浄性、表面状態、歪み）は印刷の出来に大きく関わります。
現場ではつい「前回も使ったから大丈夫」となりがちですが、微細なキズや埃、ヨレは露光ムラの温床です。

– マスクは使用前に必ず照明下で外観チェック
– 清掃エアーブローや粘着シートでクリーニング
– マスクの劣化・変形はすみやかに廃棄基準を設ける

また、「印刷直前点検」として、マスク設置後に仮露光またはトライ露光（試し焼き）を行い、問題があれば即座に是正する体制を作ることで、歩留まりと品質が向上します。

現場が変わる！露光ムラ防止のための進化型アプローチ

デジタル管理・IoTの導入による安定化

近年の製造業では、従来のアナログ管理から脱却し、デジタル管理やIoT化が進行中です。
露光ムラ対策としても、次のような新技術を現場改善に生かすことが可能です。

– 露光装置の照度・均一性をセンサーで常時モニタリング
– マスク位置合わせを画像認識カメラで自動監視・アラート出し
– 作業記録やトレーサビリティをデジタル化し、「誰が」「いつ」「どう設置したか」を可視化

これにより、人の感覚に頼らない品質保証体制を構築でき、不良率の低減と再発防止が実現します。

現場の「気付き」を標準化に昇華する仕組みづくり

現場には、長年の経験に裏打ちされた“勘”や“ノウハウ”が蓄積されています。
これはAIやITだけでは補えません。
重要なのは、その個人スキルや微差感知力を「標準化」や「手順書化」することです。

例えば、
– ベテランの確認ポイントを動画や写真で記録し、若手育成に活用
– 不具合発生時には必ず情報を共有・改善案を提案するカイゼン制度
– 失敗事例・改善事例を「見える化」掲示して属人化を脱却

この繰り返しが、現場の底力を上げ、露光ムラ撲滅に繋がります。

サプライヤー・バイヤー視点で考える：印刷現場の提案力と説得力

陶器ポットを発注するバイヤーや受託するサプライヤーにとって、「露光ムラ防止のためどこまで配慮しているか」は、品質のみならずブランド価値を左右します。
現場の取り組みをバイヤーへ積極的に提案することで、信頼構築や受注拡大の武器となります。

– 露光ムラ削減のための独自工程・管理手法を提案書や見積り書に明記
– 歩留まり改善事例、定期的な品質監査・現場見学の機会を提供
– クレーム対応時も「なぜ起きたか」「今後どう防ぐか」を現場レベルで迅速に説明

こうした姿勢は、脱・昭和のアナログ業界に「進化意識」を波及させ、他社との差別化となります。

まとめ：共に学び、現場力で陶器ポットの未来を切り拓く

陶器ポットの印刷における露光ムラ問題は、単なる「現場課題」に留まりません。
小さな改善の積み重ねが、一流品の創造や新たな仕事の獲得へと繋がります。

現場目線の見直し、地道な標準化、そして“昭和”から踏み出すデジタル進化を、今こそ推し進めましょう。
それが、皆さま一人ひとりの技術力となり、日本の製造業を更なる高みへ導きます。

製造業で働くあなた、これからバイヤーを目指すあなた、サプライヤーとしてお客様と真剣に向き合いたいあなた。
現場の知恵を集め、共に付加価値の時代を拓きましょう。