投稿日:2025年12月23日

ショットブラスト装置で使う防塵カーテン部材の材質と耐久性課題

ショットブラスト装置における防塵カーテンの役割と現場での重要性

ショットブラスト装置は、鋳物・金属部品のバリ取りや表面処理、錆落としなどの工程で不可欠な設備です。

この装置を効率的かつ安全に運転するためには、様々な部品が高い性能と耐久性を持っていることが要求されます。

その中でも、装置内部の「防塵カーテン部材」は、ショット材による飛散・粉塵の拡散を防ぎ、機械本体や周囲環境、作業者の安全を守るキーパーツの一つです。

しかし、その防塵カーテンが昭和時代のタイプからほとんど進化せず、耐久性や材質の問題が現場作業者やコスト管理担当を悩ませている現実も否定できません。

本記事では、防塵カーテン部材の選定ポイントや課題、さらにその裏側にある業界性や調達・購買の視点も交えて、深く掘り下げていきます。

ショットブラストの防塵カーテン ― 機能と要求性能の再確認

なぜ防塵カーテンが必要なのか

ショットブラストは、金属表面にショット(鋼球や鉱物系粒子)を高速で打ち付けることで加工を行います。

その際、大量の粉塵や摩耗粉、微細な金属粒子が発生し、装置内部のみならず、外部への漏洩リスクも生じます。

この漏洩が許容レベルを超えると、職場環境の悪化、安全衛生上の問題、機械の故障リスクや近隣へのクレームなど、様々な損失に繋がります。

防塵カーテンは、そうした粒子の飛散を物理的に遮断し、エリア分離・保護・集塵効率向上の3役を担っています。

理想的な防塵カーテンの要件

現場感覚で言えば「丈夫で、長く持ち、摩耗してもパーツ交換が簡単で、コストも手ごろ」というものが理想です。

また、ショット材が衝突した際の耐摩耗性、耐熱性、柔軟性、静電気発生防止、作業員・設備を傷つけないための安全性能、さらには消防法等の安全基準への適合も欠かせません。

これらの要求は年々厳しくなりつつありますが、一方で「昭和型」アナログ設計のまま、なかなかアップデートされていない現場も多いのが実態です。

現在主流の防塵カーテン部材-その材質と特徴

ゴム系材質 ― コストと実用性の現状維持バランス

国内で最も多く使われているのは、天然ゴムまたは合成ゴム(SBR/NBR/EPDM等)製のカーテンです。

ゴム製は衝撃吸収性が良く、微小な変形を繰り返しても割れや断裂を起こしにくいのが特長です。

また、比較的入手性が良く、コストも抑えられることで、多くの老舗メーカー・現場で「安心・安定のベーシックスペック」として採用され続けています。

ただし、弱点もあります。

強いショット材の連続衝突によって摩耗・裂傷が進みやすく、数カ月~半年程度のサイクルで交換が発生することも珍しくありません。

ゴム製カーテンが硬化・劣化すると、防塵性能が格段に落ちるため、「見た目はまだ大丈夫だから…」という判断は危険です。

樹脂(合成樹脂・ビニール系)部材の採用増加

脱・昭和、脱・ゴム化の流れを意識して、一部のメーカーや現場ではPVC(塩ビ)、PU(ポリウレタン)、PET系、さらには高耐摩耗ポリエチレンなどの樹脂製カーテンも採用されています。

樹脂系は比較的軽量で製作コストも低減しやすく、色や硬度など微調整も効きやすいというメリットがあります。

加えて、透明度の高い素材を使えば「視認性」を確保できる用途もあり、労働安全OBからも評価されています。

しかし、ガラス繊維やウレタン繊維を多めに配合した高耐久タイプでなければ、やはり摩耗と静電気、希に火災時の溶融などリスクがあるため、現場ニーズが拡大しきれていません。

ハイブリッド材質や金属複合など新たな選択肢

最近、一部大手ではゴム+繊維強化(ケブラー・ガラスファイバー)や、ゴムベースに金網を内蔵して補強した「多層構造型」の防塵カーテンを開発・導入する動きもあります。

また、アルミ・ステンレスパンチングメタルに高分子樹脂をコーティングした「金属複合タイプ」にも注目が集まっています。

これらの新素材は、従来材質の数倍~数十倍の耐摩耗性能を持ち、交換頻度が大幅に低減されます。

但し、製造コストが高くなるため、「コストとメンテナンス負担のトレードオフ」が依然大きな課題です。

防塵カーテン材質選定の現場課題とラテラルシンキングの視点

昭和型調達現場と「現物合わせ」文化の限界

製造業の多くの現場では「設計図は古いまま。現場判断でカーテンの寸法を測って発注する」「前回と同じゴム業者に頼む。それが安心」という、いわゆる”現物合わせ・前例踏襲型”の調達が根強く残っています。

こうしたアナログ志向は、イニシャルコストと“とりあえずの安心感”には強みがあるのですが、長期的なコストやトータル管理、環境・SDGs、増加する人手不足リスクへの対応、グローバルサプライチェーンの安定性という観点ではデメリットも小さくありません。

バイヤー/サプライヤーそれぞれの立場から見る材質選定

発注側(バイヤー)は「価格」と「納期」「既定購買先との信頼」が重視されがちです。

一方で、サプライヤーは「標準品」でまとめたい、高機能材質を提案したいが値上がりも避けたい、というジレンマがつきまといます。

現場目線で言えば、「そもそも適材適所の材質検討がなされていない」「過去と同じものに妥協している」ことが、両者にとってロスを生んでいるケースも少なくありません。

ここで求められるのが、いかに「ラテラルシンキング=水平思考的な選択」と、「修正主義」ではなく「本質志向」の合意形成ができるか、という点です。

ラテラルシンキング事例:AI/IoTデータ連携で寿命管理を自動化

新しいアプローチとして注目されているのが、「交換頻度や摩耗状態をIoT・AIで検知、可視化する」技術です。

たとえば、防塵カーテンの裏面や取り付けベースに摩耗度を測定するセンサーや厚み測定センサーを設置し、装置稼働時間と連動して適切な交換時期を自動で通知できれば、材料選定やコスト設計に圧倒的なパラダイム変化が起こせます。

この仕組みが普及すれば、「どの材質が最もトータルコストが安いか」「現場の使い方に最適化できているか」を、データドリブンで選べる時代が訪れるでしょう。

今後の製造業が取るべき調達・購買戦略とは

SDGs・サステナブル素材への転換とその準備

国際的に、カーボンニュートラルやリサイクル材利用の要請が高まるなか、防塵カーテン分野でも「リサイクル材混合タイプ」や「焼却時の有害物質発生が極小のエコロジー素材」への転換が不可欠となります。

現時点では素材メーカー側のコスト転嫁が起きていますが、いち早くグリーン調達ガイドラインを満たすサプライヤーとの連携、LCA(ライフサイクルアセスメント)での材質選定はバイヤーにとっても「先義後利」の勝ち筋です。

バイヤーとサプライヤーのパートナーシップ深耕

単に「安いものを定期購入」するだけではなく、生産現場の運用データや改善要望をサプライヤーと共有し続けることで、真に現場に合った防塵カーテン材質や構造改良が生まれます。

定期的なオンラインコミュニケーションや共同勉強会など、水平連携の仕組み構築も生き残りのカギを握ります。

調達・購買担当はイノベーション契機の起点に

新素材や新技術を「どの現場に、どのタイミングで、どの製品で使うか」といった判断は、既存事業の枠を越えたイノベーションの種です。

購買・調達部門が「守り」のスタンスから、「攻めの現場力」に変われば、工場の競争力は飛躍的に向上します。

経営幹部や現場リーダーと積極的な情報交換をし、メーカー・ユーザー・サプライヤーが一丸となって課題解決を目指す姿勢が求められるでしょう。

まとめ:防塵カーテン部材選定の本質と新たな地平線

昭和から続くアナログ的な安全・防塵対策は、いま大きな転換点に来ています。

防塵カーテン一つをとっても、素材や耐久性、コスト、サステナビリティ、IoT活用、現場データ主導の最適化…さまざまな新視点が必要です。

ラテラルシンキングを持って、現場の課題を本質からひも解き、長い目線で価値を生む調達・購買、そしてサプライヤービジネスの共創が、製造業全体の競争力を確実に押し上げていくはずです。

現場で働く方、これからバイヤーを目指す方、サプライヤーとして現場理解を深めたい方、それぞれが一歩先の考え方を持ち込むことで、“防塵カーテン”という小さな部材から、「工場全体の未来」を築きましょう。

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