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複合材料(CFRP・CFRTP)の材料特性と高効率成形技術

目次
はじめに:複合材料とは何か?
複合材料は、異なる素材を組み合わせて個々の素材の弱点を補い、全体として高い性能を持つ材料です。
近年、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)やCFRTP(炭素繊維強化熱可塑性プラスチック)が、飛躍的に普及しています。
特に自動車や航空機、電子機器、医療機器など幅広い分野で注目されており、「軽量化」と「高強度」を両立させる救世主になりつつあります。
しかし、多くの製造現場では形状設計や加工の難しさ、コスト高、現場への浸透スピードの遅さなど、従来の金属材料とは異なる課題も根強く残っています。
本記事では、長年アナログ文化の色濃く残る製造現場で培った実践的な知恵をもとに、現場目線で複合材料の特徴と効率的な成形技術について、バイヤー・サプライヤー双方の立場も意識しながら徹底解説します。
CFRP・CFRTPとは?その基本と優位性を整理する
CFRPの特徴
CFRPは、カーボンファイバー(炭素繊維:CF)をポリエステルやエポキシなどの熱硬化性樹脂で包み込み、硬化させて作る材料です。
主な特徴は「金属並以上の強度・剛性」と「アルミ以下の軽さ」を両立できることです。
たとえば、比強度(1gあたりの強度)はアルミの約2倍、鉄の約5倍にまでなります。
腐食せず、電磁波を透過する性質なども特徴で、航空宇宙、自動車、スポーツ用品などで広く使われています。
CFRTPの特徴
一方、CFRTPはカーボンファイバーをナイロンなどの熱可塑性樹脂に浸透させたものです。
最大の利点は「再加熱によるリサイクル・リフォームが可能」という点です。
金属と異なり、溶かして再成形できるので、量産性・環境配慮の観点からも非常に注目されています。
近年の自動車業界では、短サイクル成形や多様な工法開発が進み、耐久/衝撃性能・生産コストとのバランスを図る流れが強まっています。
複合材料の欠点も正しく理解する
ただし、夢の素材にも現実的な欠点があります。
CFRPは加工が難しく、切削粉じんの管理・加工機の摩耗・専用金型費用・熟練工程者の不足などがボトルネックになっています。
CFRTPも同様で、大量生産やリサイクル性向上の技術が未だ完全普及しておらず、コストが高止まりしている現状があります。
アナログな製造業ほど「使いにくい」「ノウハウがない」「設計自由度が低い」など、旧態依然としたイメージが強いのが実情です。
材料特性の現場的な見極め方
強くて軽いだけでは決まらない!総合的な材料選定のコツ
材料選定でまず重視されるのは、比重・比強度・熱伝導率・線膨張率・コスト・加工性・調達リードタイムなどの数値データです。
しかし、現場では「現物の作りやすさ」が意外と大きなウエイトを占めます。
たとえばCFRPは設計上、肉厚やリブ構造で大きな違いが生じ、板厚が薄いと曲げやねじりで想定外の変形が起きやすい傾向があります。
また、精密切削ではCFRPの積層方向や部材内クラックリスク、端面のバリやトゲ対策など、金属加工では考えない課題も浮き彫りになります。
最先端現場では、FEM解析やVE提案と並行し「試作品でトライ→現物検証→設計の見直し」という、泥臭いPDCAサイクルが実は不可欠です。
環境・耐久性からの長期評価も重要
航空・建築分野では、紫外線・塩水・熱サイクル・振動などの長期耐久試験も必須です。
複合材料は異種材料の組み合わせゆえ、界面剥離や層間剥離など、金属では想定しないトラブルが多発します。
サプライヤーとしては、納入後の品質トラブル対応を見越し「事前の現場試験データをどこまで積み上げるか」「納入仕様の歩留まり確保」など、取引先バイヤーとの信頼関係強化が成功のカギになります。
高効率成形技術の最新動向
従来型の成形方法と問題点
CFRP・CFRTPの成形方法にはさまざまな種類があります。
従来は、プリプレグ(予備的に樹脂を含浸させたシート)での真空バッグ成形やオートクレーブ成形が主流でした。
これらの方法は品質は非常に高いものの、1サイクル数時間〜10時間も要し、量産には不向きという大きな制約がありました。
寸法精度・表面品質も、熟練工の技と経験に左右される場面が多く、量産工場では「歩留まりの悪さ」が大きな課題でした。
自動車業界を中心に進む高速・高効率成形技術
近年主流となっているのは、プレス成形やインジェクション(射出成形)、熱プレスインサート成形です。
CFRTPでは、金属並みの数分サイクルで量産対応できる技術開発が進み、工法の確立が早急に求められています。
加熱冷却型、加圧型を使い分けることで高精度の量産成形が可能となりつつあります。
また、RTM(レジントランスファーモールディング)やSMC(シートモールディングコンパウンド)などの新工法も、品質安定・コスト低減の面から注目されています。
自動化・省人化の現場事例から学ぶ
設備投資による自動化・省人化は、歩留まりと品質の安定に直結します。
たとえば、自動車業界ではCFRTPのインサート成形&ロボットトリミングラインを導入し、人の熟練レベルに左右されない一貫生産体制を構築しています。
また、材料トレーサビリティや工程モニタリングを強化し、ライン内での自律検査(画像判定AI導入など)によって、人的コストと現場トラブル低減を両立している工場も増えています。
自社の現場でも、外注先の選定条件として「自動化ラインの有無」「細かなトラブル対応力」を重視するバイヤーが急増しています。
バイヤー/サプライヤー視点で抑えるべきポイント
バイヤーの考えていること
バイヤーが複合材料を導入する際、コストダウンと品質安定は当然ながら、納期厳守・環境対応・リスクヘッジ・サステナビリティまで多角的に評価しています。
特に「提案力」のあるサプライヤーへの期待が高く、現場で起きうる問題点や歩留まり管理データ、過去実績ベースの納入事例が信頼獲得のカギとなっています。
表面的な材料スペック比較だけでなく「この仕様でこの形状は実現可能なのか」「どこまで現場で実績があるのか」「再調達や修理時の対応力は?」など、具体的な現場目線での会話が重要です。
サプライヤーから見たバイヤー攻略法
サプライヤーは、材料データシートやパンフレットの情報だけでは通用しません。
現物トライアルでのフィードバック、類似案件でのトラブル報告と改善策、実際のラインでの安定生産実績などを根拠に、日々アップデートされた「現場のリアル」をバイヤーへ伝えましょう。
また、量産移行時の技術サポート体制、品質監査対応の手厚さ、トレーサビリティ管理なども、バイヤーが重視するポイントです。
「使いにくさ」「コスト高」のイメージを払拭するためにも、小回りの効く現場協調力と実体験に基づく改善提案が製造業では評価されやすい傾向にあります。
アナログ文化からの脱却×複合材料活用の未来
昭和的「モノづくり現場」の壁をどう越えるか
長らく現場主義の色が濃かった製造業ですが、デジタル化・自動化の波は避けられません。
金属加工の熟練技能だけでは、複合材料のポテンシャルを最大活用できません。
むしろ、試行錯誤を恐れずトライアルを重ね、現場の声をダイレクトにフィードバックできる企業こそが、新たな競争力を手にする時代です。
ラテラルシンキングで開かれる新たな成形の地平線
たとえば「金型レス試作」「ハイブリッド積層構造」「現場内3D可視化プロセス管理」など、垣根を超えた発想と現場との融合が求められます。
一見遠回りなチャレンジが、従来技術の常識を覆す「裏技」に化けることもしばしばあります。
積極的な失敗、オープンな現場改善、新工法・新規設備の導入トライアルこそが、複合材料時代のイノベーションの種です。
まとめ:現場から始める複合材料革命
複合材料(CFRP・CFRTP)は、現場での地道な挑戦と改良が進むほど、その真価を発揮します。
現場目線で材料特性・成形工程・コスト・品質・調達リードタイムを見極め、バイヤー/サプライヤーが協調して「できること」から着実に拡げていくことが大切です。
アナログ製造業でも、泥臭い現場力と新しいアイデアを掛け合わせることで、複合材料の高いポテンシャルを最大限活用できる時代が到来しています。
今こそ、一歩踏み出して現場から複合材料活用の新たな地平線を共に目指しましょう。
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