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濾過機用軸受部材の材質選定と耐薬品性

濾過機用軸受部材の材質選定と耐薬品性
はじめに――なぜ濾過機の軸受部材が重要なのか
製造業の現場では、濾過機はなくてはならない設備です。
特に化学薬品、食品、医薬品、半導体業界など、多様な分野で液体や気体のろ過工程が存在します。
その中で、濾過機の寿命やメンテナンス性、生産性に大きく影響する部品の一つが「軸受部材(ベアリング部)」です。
軸受部は濾過機の円滑な回転や安定稼働を担う要のパーツであり、同時に薬液やスラリーなど過酷な環境にさらされるため、材質の選定を一歩間違えるとトラブルが頻発します。
本記事では、20年以上製造業の現場で積み重ねた知識と最新動向を交えて、濾過機用軸受部材の材質選定と耐薬品性について、現場目線で徹底解説します。
濾過機の種類と軸受部材への要求特性
濾過機には大きく分けて、回転型(遠心分離機やドラムフィルターなど)と静置型(加圧式、真空式プレートフィルターなど)があります。
特に回転型濾過機では、回転軸受部に常に液体やスラリー、時に強い薬液が接触します。
軸受部材には次のような特性が求められます。
– 高い耐摩耗性
– 耐薬品性・耐蝕性
– 強度と靭性(割れにくさ)
– 低摩擦係数(摺動性)
– 潤滑不要、もしくは水や薬液潤滑が可能
現場では、化学的な安定性と機械的な信頼性のバランスをどう確保するかが大きなテーマです。
昭和から受け継がれるアナログな常識とその課題
昭和時代からの日本の製造業では、「軸受といえば鋼や青銅、もしくは単純なゴムライナー」といった常識が根強く残っています。
実際、鋼や青銅は入手性・機械加工性に優れ、量産が容易です。
ゴムや一般的な樹脂も低コストで加工しやすいですが、いずれも耐薬品性や、擦過による耐久性で課題が残ります。
中小の現場では「昔からコレでやってきたから大丈夫」と言われがちですが、近年では処理する液体の多様化や、装置の長寿命化要求、ダウンタイム削減のニーズが強く、従来材だけでは現場の課題は解決できません。
また、アナログ時代の流れをそのまま引きずり、事前評価や実機テストを軽視したまま設計・調達を進めてしまうと、後々のライン停止や高額な部品交換費用・ダウンタイムという「隠れコスト」につながります。
代表的な軸受部材の材質と特徴
現場でよく使われる軸受部材の材質を、耐薬品性・耐摩耗性・コストを軸に一覧化します。
金属系(鋼・ステンレス・青銅)
– 軸受鋼(SUJ2など):高硬度・高耐摩耗。ただし耐蝕性に難。弱酸でも錆びやすい。
– ステンレス鋼(SUS304/316等):耐蝕性向上だが、「耐酸性」とは言い切れず、フッ酸や強酸化剤、有機酸には不適。
– 青銅合金:加工性・耐摩耗性に優れるが、強アルカリやアンモニアなどでの腐食に注意。
ノンメタル系(樹脂・セラミック・カーボン)
– フッ素樹脂(PTFE、PFA):最高レベルの耐薬品性。ほぼ全ての酸・アルカリ・有機溶剤に耐える。摩耗性はやや劣る。柔らかく変形しやすいので、メタルインサートやバックアップ部材との組み合わせが多い。
– ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP):耐薬品性に優れ、価格も安価。機械的強度・耐摩耗性は金属に劣るため、低負荷用途向き。
– セラミック(アルミナ、ジルコニア等):最高の耐摩耗性と耐熱、耐薬品性。ただし高価で割れやすいため、衝撃や急激な熱変化に弱い。
– カーボンベアリング:自己潤滑性、高温耐久、耐薬品性があるが、摩耗粉が出やすく、負荷が大きいと割れやすい。
エンジニアリングプラスチック(POM、PEEKなど)
– POM(ポリアセタール):摺動性・強度バランス良好だが、強アルカリ・酸には弱い。無潤滑摺動に向く場面もあり、自動化設備の軸受として人気。
– PEEK(ポリエーテルエーテルケトン):価格は高いが、優れた耐薬品・耐熱・耐摩耗性。溶剤や高温スチームにも耐えるため、最先端分野での需要増。
耐薬品性の評価――現場目線で押さえるべきポイント
単純な「材質表」だけを見て選べるほど実際の現場は単純ではありません。
「塩酸ならこの材質」「苛性ソーダなら大丈夫」という机上論が現場で通用しない実例も少なくありません。
以下が現場でチェックすべき耐薬品性のポイントです。
濃度と温度の影響を見逃さない
同じ酸でも、例えば10%塩酸と濃塩酸、25℃と80℃とでは腐食の進行が桁違いです。
樹脂や金属は温度が上がると急速に膨潤・軟化・劣化が進みます。
安全マージンは必ず加味しましょう。
混合薬液・副産物・不純物の影響
意外と盲点なのが、複数の薬品が混在する工程や、生成する副反応による腐食生成物です。
実験室レベルでOKでも、現場では「思わぬ攻撃的成分」が出てトラブルになるケースが多発します。
機械的ストレスとの複合要因
薬液が「静置された状態」では耐薬品性があっても、強い摺動が加わると「耐摩耗性」「脆性破壊」といった別の問題が発生します。
現場の実態に即して、必ずサンプルテストや現場での実働評価が必要です。
最悪シナリオ=予防保守視点で部材選定
「絶対に壊れない材質はない」ことを前提に、定期交換サイクルや予防保守の視点を持ちましょう。
価格が高い材料の採用でも、長期的にみるとライン全体のダウンタイム削減や品質安定につながることが多いです。
最新動向とバイヤー視点の新しい提案
近年はDXやIoTの流れにより、軸受部の予兆診断や自動監視も普及が進みつつあります。
変形量や摩耗、温度変化、薬液暴露による材質劣化を、センサーで把握できるシステムも登場しつつあります。
部品供給側(サプライヤー)からは、次のような差別化提案が求められます。
– フッ素系樹脂やPEEKなど高機能材でのカスタム提案
– 現地液体に即した専用サンプリングや実機試験データの提示
– 予知保全部品との一体提案(摩耗センサー内蔵ベアリング等)
– 再生材やサステナブル素材を活用した「環境配慮型」軸受
バイヤーとしては、単価比較の安易な値切り競争に走るのではなく、「現場の隠れコスト=ダウンタイム、ライン停止などのトータルコスト」を重視した長期的視点でサプライヤーと交渉すべきです。
この切り口は、旧態依然のアナログ業界から一歩抜け出す競争優位になります。
現場で役立つ材質選定フローチャート
現場担当者やバイヤー、サプライヤー向けにシンプルなフローチャートを提案します。
– ①処理液の種類・濃度・温度を徹底チェック
– ②既存材のトラブル履歴・摩耗進行度をヒアリング
– ③耐薬品表+実液サンプルテストで一次選定
– ④コスト・入手性・加工性を再評価
– ⑤定期交換回数・全体コスト(メンテ人件費含む)で最終比較
– ⑥現場/ラインのカイゼン要求や現場担当者の声も吸い上げ、必要に応じてトライアル導入を実施
「とりあえずいつもの部材でやっておけ」を、現場・調達・サプライヤーが一体となって見直すことが競争力向上につながります。
まとめ――未来を見据えた軸受部材選定の勘所
濾過機用軸受部材の材質選定は、表面的な材質表や従来どおりのアナログな常識では現代の製造業の要求に十分応えられません。
– 薬液種・温度・摩耗など多角的視点から材質を検討
– 金属~高機能樹脂・セラミック等の組み合わせで最適解を探る
– IoTやセンサー、再生材活用など新たな技術も取り込む
– バイヤー・サプライヤー現場担当が一体でTCO(トータルコスト)目線を徹底
こうした新しい地平線を開拓することこそ、日本のものづくりの競争力向上、サプライチェーン全体の最適化へとつながります。
現場経験豊富な皆様が、ぜひ自信と誇りをもって「軸受部材の進化」と向き合い、次世代の製造現場を牽引していただくことを願っています。
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