投稿日:2025年9月13日

日本製品輸入で発生する輸送リスクを管理する購買部門の対応策

はじめに:製造業における輸送リスクの重要性

日本製品のグローバルな評価は依然として高く、アジア諸国のみならず、欧米への輸出入も活発に行われています。
一方で、製造業の現場では、輸送中のリスクがしばしば問題として浮上します。
特に調達購買部門を中心に、「輸送リスク管理」の重要性は日に日に増しています。
昭和時代から変わらず、輸送事故や納期遅延といったトラブルは現場を悩ませてきましたが、グローバル化や国際事情の変動も加わり、より一層その対応力が問われる時代になっています。
本記事では、製造業の現場経験者として、実践的な視点で購買部門が取るべき輸送リスク管理策を詳しく解説します。

輸送リスクの種類:購買部門が把握すべき基本知識

1. 物理的リスク

物理的リスクには、「破損」「紛失」「盗難」「水濡れ」といった、貨物自体に直接ダメージを与えるリスクが含まれます。
国内・海外問わず、港や空港、積荷・荷下ろし時の作業ミスによるトラブルは後を絶ちません。

2. 遅延リスク

最も多いのは納期遅延です。
天候不良、通関業務の遅れ、輸送手段(航空・海運・トラック等)の遅延など多岐にわたります。
これにより生産ラインの停止や追加コストが発生するため、未然の防止が重要です。

3. コンプライアンス・規制リスク

近年、各国で輸入規制が複雑化するにつれ、無申告や誤申告による差し止め、追徴課税などの規制リスクが増加しています。
安全保障貿易管理の観点からも、購買・調達部門が適切に対応する必要があります。

4. コスト変動リスク

燃料費の高騰や為替変動による運賃の値上がり、国際情勢によるサーチャージの急増なども、購買部門で対策すべきリスクです。

現場で見落とされがちな真のリスク:昭和的‛慣習’の弊害

日本の製造業の多くは、長年培われたアナログな運用を踏襲し続けている現場が多いのも事実です。

根拠のない「今まで大丈夫だったから大丈夫」という油断や、サプライヤー任せの丸投げ購買は、重大なリスクに直結します。
例えば、受け入れ検品が形骸化していたために異物混入や破損に気づかず、全数クレームに発展してしまったケースを現場で何度も目にしてきました。

購買部門が「モノが決まったように届く」という考え方だけでなく、一歩踏み込んで現場や物流部門、サプライヤーと連携し、「リスク発見→共有→対策」まで推進しなければなりません。

購買部門ができる実践的リスク管理対策

1. インコタームズ(貿易条件)の理解と適正選択

見落とされがちですが、インコタームズの適切な採用はリスク責任の範囲を明確にします。
FOB、CIF、DAP等、荷渡し時点での責任分担を正確に社内外で確認することで、「どこからどこまでの輸送リスクをどちらが取るのか」を明らかにできます。

2. サプライヤーとの契約書整備

万が一の破損・遅延時の補償範囲について、サプライヤーごとに明文化しておくことが大切です。
調達購買は日本的な曖昧さを残さず、「納入品質保証書」や「事故報告プロトコル」まで整備することが、トラブル時の交渉力を高めます。

3. 輸送保険(海上・運送保険)の再点検

どの範囲まで補償対象なのか、どんな事態が保険対象外になるのかを必ず精査しましょう。
輸送経路や貨物の性質、市況変化にあわせ、年度ごとに見直すことを推奨します。

4. 物流ベンダーマネジメントの強化

物流会社任せではなく、輸送中のモニタリングやリアルタイム情報共有(GPS追跡、進捗アプリ等)を積極導入することで、トラブルを迅速に検知できます。
また、ベンダーの選定は価格だけでなく、緊急時の対応力や事故時の報告体制を重視してください。

5. 受入検査(IQC)や検品体制の高度化

昭和の現場でありがちな「納入された箱を開けて検品するだけ」では不十分です。
外観だけでなく現物サンプルチェックや試験動作、パッケージ破損の有無等、より構造化された受入検査体制を整えてください。

6. リスクマップの社内共有

購買部門だけでなく、品質、生産、物流、営業など関連部門と「輸送リスクマップ」を共有することが肝要です。
また、リスクが発生した際の対応フロー(意思決定プロセス、連絡網、報告先等)も同時に明文化しておきましょう。

デジタル活用×アナログ知見のハイブリッド戦略

現場の経験値が活かされるアナログ視点

例えば「過去にX港では通関遅延が頻繁に起きる」「この時季は台風が多くリードタイムに余裕が必要」など、現場で蓄積された肌感覚や実体験は依然として重要です。
購買部門内のベテラン・現場担当者の声をデジタル記録と紐づけましょう。

最新のITツールでリスクを可視化

貨物追跡システムやサプライチェーンマネジメント(SCM)ツール、AIによる納期予測システムを活用することで、膨大な輸送データを分析できます。
これにより、近々のリスク傾向や経路ごとのボトルネックを可視化し、事前シナリオ策定が可能になります。

ラテラルシンキングで「起こりうる」を先回り

たとえばコロナ禍や2023年以降の「スエズ運河封鎖」など、突発的な国際情勢変化は今や想像を絶するスピードで発生します。
過去の延長線にない多様な視点で、「もしも…」の仮説を立て、複数ベンダーとの在庫分散、マルチルート調達等も戦略的に検討しましょう。

サプライヤー視点で知っておくべき購買部門の「本音」

サプライヤーから見て、バイヤーである購買部門は「価格」「納期」「品質」だけを重視しているように見えがちです。
しかし本音では、未知の輸送リスクまでキャッチし、関係部署と連携できている企業ほど、長期的信頼につながると評価されています。

サプライヤー側も、輸送工程の棚卸やリスク診断、事故や遅延事例の共有レポートを自主的に提供することで、「単なる供給者」から「高度なパートナー」へとアップグレードされます。
輸送リスクが判明した際の迅速な連絡、お詫びの姿勢、代替案の提示も現場で非常に高評価につながります。

まとめ:購買部門が担う日本製造業のサプライチェーン進化

製造業の購買・調達部門が輸送リスクを的確に把握し、先回りして対応できるか否かが、企業の競争力を決定づける時代になりました。

昭和的な「慣習ベース」から脱却しつつ、現場に根ざした知恵や工夫、粘り強い現業マインドを生かしながら、デジタルの力で一歩先を行くリスク管理体制を構築すること。
これが製造業全体の発展と、より強固なグローバルサプライチェーン構築に欠かせません。

購買部門にとって、リスクは「誰かの問題」ではなく、常に自部門の責任範囲です。
だからこそ、惜しみなく現場での実践知見を共有・発信し、ともに業界全体をアップデートしていきましょう。

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