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投稿日:2026年1月20日

ASTM A36の機械的特性と使用時の注意点

ASTM A36とは―製造業現場での位置づけ

ASTM A36は、世界中の製造業や建設業で広く利用されている炭素鋼の一種です。

ASTM(米国材料試験協会)で規格化されており、特に汎用の構造用鋼材として多くの現場で採用されています。

昭和から今日に至るまで、その扱いやすさとコストパフォーマンスで日本の工場にもしっかりと根付いた素材です。

発注側―バイヤーにとっては調達コストや納期、サプライヤー側からすれば加工性や在庫負担の観点から、いずれも現場で何度も議論されてきた“定番鋼材”のひとつです。

本記事では、現場目線でASTM A36の機械的特性と使用時の注意点を掘り下げます。

ASTM A36の機械的特性

化学成分:ほどよい炭素量による安定性

ASTM A36は、炭素含有量がおおよそ0.25%以下で、マンガン、リン、硫黄などが微量含まれます。

この炭素量の“ほどよさ”が、コスト・溶接性・加工のしやすさの絶妙なバランスを生み出します。

もちろん、これが高度な強度や耐食性を必要とする部品用途には採用されない理由でもあります。

現場では、溶接や切断工程が多い大量生産部品への適用が多いのも特徴です。

引張強さと耐力

ASTM A36の最大の魅力といえば、構造部材として求められる十分な強度と十分な加工性を両立していることです。

代表的な数値は下記の通りです。

  • 降伏点(耐力):250 MPa(端的に言えば、これ以上の応力で永久変形が発生)
  • 引張強さ:400~550 MPa(破断までに耐えることができる最大応力範囲)
  • 伸び率:20%前後(50mmゲージ長基準)

このため、ビーム材、フレーム、橋梁等に広く使われてきました。

加工性と溶接性

現場でよく話題になるのが「工数」「手間」「再現性」の議論です。

特に高度な技能や特別な熱処理を要さず、ガス切断やアーク溶接を容易にこなせる点がA36の強みです。

昭和時代から培った職人技術だけでなく、ロボット溶接や自動化設備との親和性も高く、工場の生産性向上にも寄与しています。

ASTM A36が選ばれる現場の理由

コストパフォーマンスがダントツ

A36の用途は、建築構造物、機械のベース、鉄骨フレーム、治具、ブラケットなどどこでも目にします。

従来から流通量が多く、ミルシートやトレーサビリティも明確なため、調達の安心感がバイヤーにとって魅力です。

サプライヤー側からしても、在庫リスクや調達リードタイムが安定するため、提案のしやすいアイテムになっています。

安定した入手性と納期リスクの低減

インフラや工場設備での「いざというときの修理・増設」でもすぐ手配できる点は、プロジェクト管理や突発対応の現場で大きな安心材料となります。

海外調達やサプライチェーン分断リスクが高まる中でも、入手性の良さは大きな競争力です。

多用途対応と国内規格との互換性

日本国内で主流のSS400材とほぼ同等のスペックであるため、設計・現場段取りでも扱いやすい規格でもあります。

逆に、ASTM規格とJIS規格の違いが業務ルールの混乱を招く場合は、しっかりと仕様確認をする必要があります。

ASTM A36使用時の注意点

表面品質・内部疵(きず)リスク

ASTM A36は用途に応じて熱間圧延、場合によっては鋳造品もあります。

安いがゆえに「表面疵(きず)」や「内部非金属介在物」が許容範囲の広い設計となっています。

ロボットラインや精密溶接工程では、表面欠陥由来の不良に注意が必要です。

検査や外観確認、取り扱い時の衝撃にも注意を払いたいポイントです。

機械加工精度の限界

A36は「ダレやすい」「細かな面粗度や精密な寸法出しが難しい」といった声も多く聞きます。

たとえばマシニングセンターで仕上げ寸法や高精度なねじ穴加工を求められる部品では工夫が必要です。

また、大量生産現場で設備の自動化が進んだ場合、A36の材料ばらつきによる機械トラブルにも備えが要ります。

現場では『設計と製造の意思疎通』を強化し、事前に許容しきれる精度範囲を職場で共通認識にしておくと安心です。

耐食性の問題

ASTM A36は基本的に一般的な構造用炭素鋼です。

耐食性は低く、表面処理や塗装がされていなければ、屋外や水分の多い環境で急速に錆びが進行します。

現場では「所定の塗装」「亜鉛メッキ」などの後工程管理が重要になります。

ひと手間惜しまず、しっかりと製品寿命全体でトータルコストを見据えた素材選定とするべきです。

現場に根付く“アナログ発注・管理”の壁

A36ほど伝統的な鋼材は、デジタル化や自動化が進む今でも受発注~仕様変更の伝達が電話・FAXで行われることが珍しくありません。

よく“昭和のやり方”と言われる状況ですが、withコロナ、SDGs、ESGが叫ばれる時代、トレーサビリティや環境負荷も重視され始めています。

調達担当やサプライヤーは、目先の価格や納期だけでなく、新基準への適合性も並立して検討する時代になっています。

ASTM A36―これからの調達・製造業に求められる視点

バイヤーの立場で見る選定ポイント

コストや納期、規格の該当性以外にも、今後の海外展開や働き方改革、企業ブランディングまで見据え、素材選定基準自体が進化しています。

ASTM A36だけでは将来的な差別化ができなくなる可能性もあるため、次世代の高強度鋼、耐食鋼、リサイクル材との比較検討も欠かせません。

バイヤーは「従来慣例」+「次世代の調達基準」を持つことが、仕事の幅を広げるコツと言えます。

サプライヤーの立場で把握すべきこと

ASTM A36の調達は「安く・早く・品質均一」が前提として求められ続けています。

しかし、品質トラブルや納期遅延が一度でも起これば、サプライヤーの信頼は一瞬で失われます。

A36取り扱いの業者でも、さらなる付加価値(たとえば小ロット対応、短納期加工、表面処理まで一貫対応、品質管理の高度化)を打ち出すことで価格競争だけに巻き込まれずに済みます。

まとめ

ASTM A36は、現代製造業でもっとも標準的な構造用炭素鋼として、不動の地位を築いています。

その機械的バランス、コスト、入手性から、今後も多用途な現場で選ばれ続けるでしょう。

しかし、昭和から続くアナログ文化が残る現場で、これからのSDGsやトレーサビリティの課題にどう対応するかは、新しい世代のバイヤーやサプライヤーの腕の見せどころです。

現場目線を忘れず、素材だけでなく情報やプロセス面でも「ひと工夫」を加えていくことで、日本の製造業は新たな地平線を切り拓くことができると信じています。

最後に、ASTM A36という素材を使い倒すことで、毎日の生産現場が少しでも安全に、少しでも効率良く進められることを願ってやみません。

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