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メカニカルシール部材のラッピング不良が起こす漏れ

目次
はじめに:メカニカルシールとは何か
メカニカルシールは、ポンプや回転機器などで流体を漏らさないための重要な部品です。
その基本的な役割は、回転部分と固定部分の隙間を密封し、外部への漏れや異物の混入を防止することです。
一般的にはシール面と呼ばれる2つの部材が、面同士で密着することで密封性を実現します。
水処理設備、化学プラントから自動車や半導体製造装置まで、あらゆる産業で不可欠な存在です。
メカニカルシールの性能や寿命は、部材選定や設計はもちろん、加工や組立て精度によって大きく左右されます。
特にシール面の「ラッピング」仕上げ品質が、漏れ発生の大きな要因となることは意外と知られていません。
ラッピングとは:わずかな凹凸が致命傷となる理由
ラッピングは、メカニカルシール部材の接触面をミクロン単位で滑らかに仕上げる精密研磨工程です。
シリコンカーバイド、超硬、カーボン、セラミクスなど、さまざまな材料がラッピングされます。
目的は、面精度(平面度、粗さ、面あたり)を高め、回転中の”ベタ当たり”を実現することです。
表面の粗さや歪みが大きいと、シール面に微小な隙間が生じ、そこから漏れやすくなります。
また、回転時には摩耗や発熱も増大し、短期間でシール破損につながります。
昭和時代から続くアナログ的な現場でも、ラッピング工程の良否が現場の信頼を大きく左右するため、ベテランオペレーターは「勘と経験」を頼りにしています。
しかし、近年は設備の自動化や品質保証体制の強化を目指す現場が増えています。
ラッピング工程の基本
ラッピング専用機にて、遊離砥粒(ダイヤモンドスラリーや研磨剤)とラップ盤を用い、部材の面をじっくり磨き上げます。
加工時間、圧力、使用砥粒、ラップ盤のメンテナンス―これら一つひとつが最終品質に大きく関係します。
ミクロン単位でわずかに面が波打つだけでも、密封性が大きく落ちる原因となります。
実際、多くの現場で「ラッピングの微妙な違い」がシール漏れの発生率を左右しています。
これこそ地味ですが、現場目線の現実です。
現場で多いラッピング不良の実態
・ラッピング不良が発生する要因はいくつかあります。
代表的なものは以下の通りです。
・研磨時間不足、過剰な圧力による面荒れ
・ラップ盤の偏摩耗やメンテナンス不良
・研磨剤の粒度や分布むら
・加工後の洗浄不足による異物残存
・検査体制の不備やミス
これらが絡み合うことで、シール部材同士が「本来のベタ当たり」よりも、点接触や部分接触になり、面全体で十分な密着が得られなくなります。
実際、ポンプやコンプレッサーなどの現場で「新品なのにすぐ漏れた」「短期間で寿命を迎えた」といった声は、ラッピング不良が引き金となっているケースがかなりの割合を占めます。
ラッピング不良が及ぼす現場への影響
現場でメカニカルシールから漏れが発生すると、いくつもの問題がドミノ倒しで発生します。
まず、部品交換やライン停止による生産ロスが発生します。
水漏れや油漏れは、職場の安全や環境への影響も深刻です。
最悪の場合、設備全体のダウンや、流体が混入し他へ波及するような重大事故につながるリスクもあります。
また、保証期間中の修理コストの増大や、取引先や顧客から信頼を失うリスクも見逃せません。
これらによる損失は、単に部品代や工賃だけでなく、生産計画・人員配置・工程管理など、現場全体の運営に大きく波及します。
現代の製造現場、とりわけグローバル化・多品種少量化が進むなか、「一台一台、手作業でしっかり見ているから大丈夫」とは言いきれません。
たった一つの工程不良が、何百、何千という製品に影響を与えてしまう危険性が潜んでいるのです。
「アナログ品質」と「工数削減」の板挟み
ここ数十年、製造業の現場では「コスト削減」「生産効率化」「自動化」と、「ベテランによる勘と経験」のせめぎ合いが続いています。
特にラッピングなど微細な工程は、「数値化しきれない現場ノウハウ」がものをいいます。
昭和時代には職人肌のオペレーターが品質を支え、多少のばらつきを個人技でカバーしてきました。
しかし令和の今、誰でも一定品質を出す標準化、検査の自動化、工程の見える化が強く求められるようになっています。
それでも、現場に残る課題―例えば設備老朽化、若手人材の育成不足、伝承しきれない暗黙知―は依然大きな障壁です。
バイヤー目線で押さえたいラッピング不良のリスク管理
バイヤーや調達担当者にとって、「ラッピング不良リスク」への配慮は取引先選定やサプライヤー評価の重要なポイントです。
なぜなら、メカニカルシールのわずかな不良が、取引先のライン停止や事故につながり、バイヤー自身の信用問題にも発展するからです。
現場目線でチェックすべき製造・品質管理ポイント
・サプライヤーのラッピング工程の管理レベル
・加工設備(ラッピング機、検査測定器)の保守・精度管理体制
・作業標準書や工程内検査記録の有無
・最終検査時の平面度/粗さ/面あたりの測定方法
・トレーサビリティやロット管理の徹底状況
・現地現物での品質監査の受入れ可否
これらをきちんとヒアリングし、現場で実際に確認することが不可欠です。
「大手メーカー品だから問題ない」「長年の付き合いだから安心」という油断は命取りにつながります。
むしろ、工程管理指導や定期的な技術レビューを通じて、リアルな現場品質を引き出す関係づくりが重要です。
サプライヤーの立場からバイヤーが重視するポイントを読む
サプライヤーとしては、バイヤーが上記のような観点で見ていることを理解し、自社の工程管理や品質データの「見える化」を積極的に進めることが信頼獲得につながります。
例えば「ラッピング面の非接触測定設備の導入」「過去3年間のラッピング不良低減実績」など、定量的なデータや改善活動を根拠に提示することで、価格競争だけにとどまらない差別化が図れます。
ラッピング工程自体の省人化・標準化・自動化への投資は、先々の大きな武器となります。
工場の自動化・デジタル化がラッピング不良を減らす鍵
近年、ファクトリーオートメーション(FA)やIoTを活用したラッピング工程の自動化が加速しています。
最新のラッピング装置では、平面度、粗さ、面圧の自動制御とモニタリングが可能となり、従来は「匠の技」だった領域も一定品質を担保できるようになりました。
また、下記のような取り組みも増えています。
・加工工程にAI画像認識や形状測定を組み込み、不良傾向をリアルタイム検出
・全量データロギングによる「誰が・いつ・どのロットを」管理するトレーサビリティ
・ラッピング盤や治具の自動メンテナンス化
・工程パラメータ自動最適化による、オペレーター依存からの脱却
こうした技術革新は、ラッピング不良の「潜在的リスク」を事前に抑え、不良品の流出やライン停止リスクを大幅に減少させることが可能です。
とはいえ、全てを一気に自動化できる企業は限られています。
まずは「不良の要因分析・見える化」と「工程の標準化・マニュアル化」から一歩ずつ始めることが大切です。
おわりに:「現場目線の品質管理」が未来を創る
メカニカルシール部材のラッピング不良は、一見ささいな面精度の逸脱が、重大な漏れリスクを引き起こす非常にシビアな工程です。
広くデジタル化が進む今も、「現場の気づき」「地味な精度管理」の積み重ねが、現場の信頼と安全を支えています。
バイヤーやサプライヤーといった立場の違いに関係なく、「ラッピング不良による漏れ」という問題を深く理解し、工程内での確実な品質づくりを意識したものづくりの姿勢が、業界全体の発展につながると信じています。
製造業に従事するすべての方へ。
アナログ的な現場知識と、最新技術の融合による進化を、これからも一緒に目指していきたいと思います。
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