- お役立ち記事
- 不良の責任を一方的に押し付ける顧客のカラクリ
不良の責任を一方的に押し付ける顧客のカラクリ

目次
はじめに〜「不良の責任」が押し付けられる現場
製造業の現場で、製品の不良が発生したとき、その責任がどこにあるのかは非常にデリケートな問題です。
サプライチェーンが複雑化し、顧客―サプライヤー関係が戦略的パートナーシップを謳っていても、現実には“誰が悪いか”をめぐる駆け引きが日常的に繰り返されています。
特に、バイヤー側から「不良の責任は全てサプライヤー」と一方的に決めつけられた経験のある方も少なくないでしょう。
なぜ、こうした現象が業界文化として根付いてしまったのか。その背景や構造にはどんな“カラクリ”があるのか。
そして、本当に現代の製造業の発展のために必要な品質管理のあり方とは何か。
今回は、40年以上続く昭和的体質の名残と、現場目線のリアルな実態に深く切り込んでいきます。
昭和体質が生み出した「責任転嫁カルチャー」
1. 取引慣習に埋め込まれた上下関係
日本の多くの製造業界では、元請けと下請けという“上下”の関係性がビジネス慣習として強く残っています。
これは昭和の高度成長期に形成されたピラミッド型のサプライチェーン体制に由来するものです。
元請け(顧客)が強く、下請け(サプライヤー)が弱い。
当然、「納入された部品や製品に不具合があればサプライヤーのせい」という思想が染みつきます。
契約書でも、品質不良の責任や賠償規定がサプライヤーに一方的に厳しく盛り込まれている例が後を絶ちません。
2. 不良発生時の“犯人捜し”文化
問題が発生すると、「誰の責任か?」が最重要テーマとなります。
点検表・報告書・不適合品一覧を突き合わせ、証跡の押し付け合いはもはや業界の日常です。
本来なら再発防止やプロセス改善に注力するべきですが、“責任回避”が価格交渉や取引維持に直結する構造ゆえ、現場は消耗してしまいます。
3. 安易なコストダウン要求とリンクする不良責任
バイヤー側は「より安く、より早く、より高品質に」を絶えず求めます。
納期短縮・コストダウン要求・サンプル提出。
このストレスに耐えるほど、サプライヤーの現場は追い込まれ、ヒューマンエラーや品質不良の温床になります。
しかし、不良が出ても「コストダウンした以上は仕方ないですよね」とはなりません。
全責任がサプライヤーの管理体制や技術力不足とされ、損害賠償や値下げ圧力がさらなる悪循環を生み出します。
バイヤーの本音とサプライヤーのジレンマ
1. なぜバイヤーは責任転嫁を選ぶのか
表向きは「品質第一主義」や「Win-Winの関係」を謳うバイヤーも、社内実態を見ると“調達部門の評価軸”や“経営層への説明責任”に縛られがちです。
万が一、市場に不良品が流通すれば、自社のブランド価値が毀損します。
品質問題がSNSで拡散したり、メディアに取り上げられるリスクも年々高まっています。
「サプライヤーの責任にしておけば、社内評価・取引条件に影響を及ぼさない」
こうした心理が根底に存在します。
2. サプライヤーはどう対処しているか
サプライヤーの現場は、習慣的な“火消し対応”を強いられてきました。
「謝罪さえすれば値引きは免れる」
「バイヤーに逆らうと次から受注が来ない」
時に、明らかに顧客設計の矛盾や不合理な仕様でも、“丸呑み”する覚悟と忍耐が求められてきました。
設計上の不備、仕様の変遷、保管・輸送時の問題など、製造以外の起因でもとにかく自社が矢面に立たされます。
サプライヤーの泣き寝入りは業界の構造的損失にもつながり、現場の士気や技術承継意欲の低下も深刻です。
時代は変わる。「品質責任」の進化と共創型バリューチェーン
1. グローバルスタンダードとのギャップ
欧米や東アジアの先進的な製造業では、「責任の共有」「共同検証」「トレーサビリティ構築」が主流となりつつあります。
ISO9001やIATF16949など、品質管理の国際規格も、単なる“罰則”の強化ではなく、リスクコミュニケーションやプロセス協力を重視しています。
一方、日本の中小製造業やアナログ系業種では、相変わらず「人のせい文化」「とにかく謝れ」という前世紀型の対応が根強く残っています。
2. デジタル時代の攻守—エビデンスの民主化
AI導入やIoTによるデータ共有プラットフォームが広がることで、「どこで、どのタイミングで不具合が発生したか」をサプライチェーン全体で見える化しやすくなりました。
例えば
検査記録や製造履歴がクラウドでタイムスタンプ管理されることで、顧客都合による設計変更や無理な条件指示が“証拠”として残ります。
バイヤーにも逃げ道が無くなり、感情論ではなくデータに基づいた冷静な原因究明・責任分担が可能になりました。
3. 予兆管理と再発防止の共創
先行企業は、バイヤー・サプライヤーがリスク共有の考え方に立ち、定期的なプロセス監査やリモート監視を実践しています。
「不良ゼロ=誰かが泣き寝入りする」構造を改め、「不良を生まないために一緒に“予兆”を管理し、実装・設計段階から根本を見直す」共創型バリューチェーンが進行中です。
現場が知るべき「不良責任トラブル」回避のリアル対策
1. 証拠の集積とコミュニケーションの透明化
不良発生時の犯人捜しをなくすためには、日頃からのエビデンス蓄積が鍵を握ります。
・検査記録、作業手順書、材料入荷証明などを厳格に電子管理する
・設計変更や顧客仕様変更も、全てメール・議事録で履歴化する
・現物・現場・現時点の「三現主義」を貫き、その場限りの丸め込みを防ぐ
顧客側にも、決して感情的にならず、事実ベースできめ細やかな情報共有を求めるのが現代流です。
2. 「上手な謝り方」と「必要な主張」のバランス
昭和的な「すぐ土下座」はもはや通用しません。
初動対応においては、「ご不安をおかけした点は謝罪しつつ、技術的検証・事実関係の究明を慎重に進める」ことがポイントとなります。
責任範囲が自社以外にありそうなら「協力して原因の切り分けをさせてほしい」「ご指示通りの仕様で進めましたが念のため詳細のすり合わせをお願いしたい」など、冷静に交渉しましょう。
データの裏付けと理知的な主張の合わせ技が、理不尽な責任転嫁への最大の防御策となります。
3. サプライヤー自らの体質改善も不可欠
「どうせウチが責められる」「また泣き寝入りだ」と自虐的にならないことも大切です。
最新版の品質基準取得、現場改善、AIやIoT導入による見える化はもちろんですが、社内外の“現場・技術・営業のチーム戦”が今後のスタンダードとなります。
柔軟な思考力とデジタルリテラシーを磨きつつ、“顧客の言いなり”から脱却した対等なパートナーシップを目指しましょう。
まとめ~「不良責任押し付け時代」からの脱却に向けて
サプライヤーの現場を疲弊させ続けてきた「不良責任押し付け」の風潮は、昭和から続く日本独特の産業構造と、取引文化の慣習が生み出した負の産物です。
しかし、IoTやグローバル品質管理の台頭により、責任転嫁ではなく「リスクの可視化と共有」「現場同士の協働改善」が新たな武器となりつつあります。
口先だけの“品質第一”ではなく、本当の意味での共存共栄バリューチェーンを現場から創造しましょう。
一方的な押し付けではなく、事実に基づく納得解を得るために、エビデンス重視・透明なコミュニケーション・主体的な現場改革がこれからのサプライヤーには求められます。
バイヤー志望者も、現場と寄り添い合う「責任感あるパートナー」であってほしい。
サプライヤーも、「ただの“下請け”ではなく、共に成長するイノベーティブな現場力」を磨いてほしい。
製造現場で働く皆さんが、理不尽な責任転嫁の犠牲になることなく、もっと誇りとやりがいを感じあえる未来を、共に目指しましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)