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糸中の炭化物混入を防ぐメルトパイプ清掃と定期的な樹脂置換ルール

目次
はじめに – 現場目線で語る「糸中の炭化物問題」
糸中の炭化物混入は、多くの繊維製造現場で悩みの種となっている不良です。
この問題が生じると、生産ロスだけでなく、下流工程や最終ユーザーにまで悪影響を与えることもあります。
特に高付加価値製品や海外輸出品の生産ラインでは、炭化物混入によるクレームや返品リスクは無視できません。
私も工場長として現場をまとめる中で、炭化物混入の根本対策に頭を悩ませてきました。
その経験から、今回は「メルトパイプの清掃」と「定期的な樹脂置換ルール」の重要性を現場目線で解説します。
糸中炭化物とは何か?~発生原因と業界の現状~
炭化物とは、樹脂溶融時に高温で焦げた異物や、酸化・分解によって発生する黒褐色の異物です。
これが糸中に混入すると、外観不良や物性低下につながります。
また、炭化物は繊維表面に付着しやすく、部品や機械内部に蓄積することで更なる発生サイクルを誘発します。
なぜ昭和のアナログ管理では限界なのか
昔ながらの現場では「ここはベテランの勘でやってきた」「目で見て異常が出たときに清掃する」という運用も見られます。
しかし、現代の製造業はJISやISOなど品質規格の厳格化により、勘や属人化に頼った運用ではグローバル競争に勝てません。
特にバイヤーは、再現性と説明性、標準化こそを重視しています。
メルトパイプ清掃の本質~なぜ清掃が重要なのか~
メルトパイプ(溶融樹脂の通過部分)は、炭化物発生の温床です。
長期間樹脂が滞留することで、樹脂が焦げ付き、ライン再始動時や色替え時に剥離し、突然糸に混入するのです。
清掃を怠ることで起きる問題
炭化物が糸中に混入すれば、品質クレームが発生するだけでなく、
不良対応による生産ロス、歩留まりの低下、社内外の信頼低下など、現場・経営・顧客全体に悪影響が及びます。
また、警戒すべきは「目視では確認できない微細な炭化物」です。
これらも蓄積すれば後々一気に不良として顕在化し、バイヤーやお客様に気づかれてしまいます。
清掃方法・頻度の最適化
昭和スタイルでは「異常が出たら」「定期が来たらとりあえず」でしたが、これではライン停止コストが増加し、
かつ「抜け穴」が生まれやすいです。
現場を発展させるためには、以下のような清掃ルールが求められます。
- 装置図・フロー図に基づいた清掃箇所の明確化
- 樹脂ランクや色替わり・バッチ境界ごとのリスクリスト化
- 過去のトラブル履歴・不良解析結果に基づく清掃頻度の最適化
- 清掃履歴のデジタル記録化、トレーサビリティ確保
慣例にとらわれず「この清掃が工数に対してどれほどの不良抑制効果になるのか」を数字で記録分析することがカギとなります。
定期的な樹脂置換の必要性~なぜ全量置き換えが重要か~
メルトパイプやホットランナー内部には、どうしても「古い樹脂=滞留樹脂」が残ります。
この樹脂は時間と共に酸化や熱劣化、分解生成物を増やし、いわば「不良の母体」となります。
部分置換(バッチ当たり替え)の限界
「流しているから大丈夫」という部分置換の考え方は、実はリスクを内包しています。
分岐や狭隘部、デッドレグ(物が動かない袋小路)など、実は設備内部には“流れているつもり”で実際は入れ替わっていない部位が多くあります。
ここに蓄積された古樹脂が、何かの拍子に剥落・溶出し、一気に不良として表面化します。
全量の樹脂置換プロセス
完全置換を実現するには、以下のようなルールが効果的です。
- 設備停止前や長期ライン停止後の完全置換運転
- 定期的に“ブリード運転”や“パージ材”を使用
- 工程開始時・色替え時・材料替え時に、確実な全量置換の記録を残す
- 現場立会いによるバルクセンサー通過時の確認など、主観だけに頼らない複数チェック体制
事例紹介 – 実務でのルール化とトラブル低減への効果
長年の現場管理経験から、「清掃ルールと樹脂置換ルールの標準化」でどれほどの効果が出るのか、実例を紹介します。
月1回のメルトパイプ全数分解清掃の導入
設備停止や油圧系の異常を防ぐため、月1回の分解清掃方法を定めました。
最初は工数がかかりますが、3ヶ月継続することで「炭化物混入件数80%減」という結果が得られました。
現場スタッフの慣れや工数低減にもつながり、清掃時に摩耗や液漏れ兆候も早期発見できたため、保全面においても一石二鳥でした。
樹脂置換トレーサビリティ管理
樹脂の完全置換作業をバーコード管理+作業記録表にて標準化しました。
これにより「どのロットに、どのバッチに、どんな樹脂切り替え作業をしたか」を一目で追えるようになりました。
取引先への説明や監査時にも有効で、バイヤーからの信用が格段に上がりました。
バイヤーや管理職が求める「見える化」とサプライヤー視点のポイント
バイヤーは「なぜ不良が起きないのか、その根拠」を標準化されたプロセスと定量データで説明することを求めています。
反対に、サプライヤー側は「そこまで手間をかけられない」「やらなくても見逃されてきた」という受動的態度を取りがちです。
しかし現代は、サプライチェーン全体の強靭化が求められる時代です。
デジタルツールによる清掃・置換履歴の自動記録や、IoTセンサーによるパイプ内部異常の早期検知も、今や現場に導入→他社との差別化になる武器です。
現場が変わる「デジタル清掃表」導入のすすめ
シールやマグネットの“清掃済み表示”ではなく、タブレットやバーコードを活用した清掃・置換作業の電子記録化によって、
人的ミスや属人化を防げます。
また、記録データをグラフ化して「不良トレンド」と「清掃頻度・手法改善」を結びつければ、現場の納得感ある改善サイクルが回せます。
まとめ – 糸中の炭化物混入防止は「未来への投資」
糸中炭化物の混入対策は、「手間をかけた分だけコストアップ」という見方も根強いですが、実際は不良低減による企業価値・ブランド価値向上に直結します。
現場の負担を最小限にしつつ、最適な清掃と樹脂置換ルールを構築し、デジタル化による見える化まで進めていく。
これが、昭和の属人主義から一歩抜け出し、グローバルに通用する製造現場改革の第一歩です。
バイヤー志望の方は「なぜこうしたルールが重要になるのか」を現場から学び、
サプライヤー各位は「この点が評価基準になる」「ここを磨けば競合優位になれる」という視点を持って挑戦してください。
現場発の改革こそが、未来の製造業を強くし、日本のものづくりを再び世界へ羽ばたかせる原動力になると確信しています。
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