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膜ろ過メカニズム膜種類と膜分離技術膜モジュールファウリング抑制膜を用いた水処理技術新規開発のヒント

目次
はじめに:膜分離技術の重要性と現場目線でのアプローチ
近年、水資源の有効活用や環境負荷低減への需要が高まる中、膜分離技術の果たす役割がますます大きくなっています。
特に製造業では、製品の品質管理やプロセス効率化の観点から、膜によるろ過や分離の技術革新が要求されています。
本記事では、膜ろ過メカニズムや膜の種類、膜分離技術、膜モジュール、ファウリング抑制対策、さらに水処理技術の新規開発に至る実践的なヒントまで、現場で長年培ってきた知識を交えながら、詳しく解説します。
膜ろ過のメカニズムを知る:分子サイズとろ過現象の基本
ろ過の基本理論と物理的分離の仕組み
膜ろ過は、分子や粒子の大きさ、分布、表面特性の違いを利用し、不要物を物理的に隔離する技術です。
膜の上に原水を通すと、分子量やサイズに応じて特定成分だけが透過し、残りは除去されます。
この現象は「サイズ排除」や「分子ふるい効果」とも呼ばれ、一般的にろ過する対象物のサイズによって以下のように分類されます。
- 限外ろ過(UF:Ultrafiltration) … 大きめ分子やコロイドの除去(分画分子量1,000~100,000程度)
- ナノろ過(NF:Nanofiltration) … 養分や一部イオンの分離(分画分子量200~1,000程度)
- 逆浸透(RO:Reverse Osmosis) … ほぼすべての溶質・イオン除去
- マイクロろ過(MF:Microfiltration) … 微粒子やバクテリアのろ過(0.1~10μm)
製造工程と現場で求められるろ過機能
製造業の現場では、想定される用途ごとに求められるろ過精度やコストが異なります。
食品や医薬、半導体洗浄水、排水再利用など、目的に合わせて最適な膜選定が不可欠です。
現場では、膜の性能指標(透水量、選択性)とともに、交換頻度やメンテナンスの手軽さなど、運用性を重視するケースが多いです。
代表的な膜の種類とそれぞれの特性
有機膜と無機膜の使い分け
膜分離で使われる膜は、大きく「有機膜」と「無機膜」に分類できます。
有機膜はポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアミド、ポリサルフォン(PS)、セルロースアセテートなどの樹脂系が主流です。
これらはコストが安く、加工性や軽量性が強みですが、化学的耐久性や耐熱性は無機膜に劣ります。
一方、無機膜にはアルミナ、ジルコニア、シリカ、カーボン、さらには金属膜などがあり、高温や薬品に強いのが特長です。
ただし、有機膜に比べて高価で、割れやすいなど取扱いに注意が必要です。
最新の材料技術と現場メリット
近年では、グラフェンやカーボンナノチューブなど新素材の膜も開発されています。
これらは耐ファウリング性や選択的透過性能を活かし、バリデーションが厳しい医薬・バイオ分野、微量有害物質の除去、微細分離プロセスでの活用が広がっています。
また、従来よりも薄膜化・多孔化・表面改質などが進み、通水量増大や省エネルギー化が期待されています。
既存の膜と最新の特殊膜を使い分けることで、現場ニーズにマッチしたプロセス設計が可能となっています。
膜分離技術の進化:産業応用と自動化への展望
製造業における膜分離の代表的導入例
例えば、以下のような分野での採用例があります。
- 食品:牛乳脱脂や飲料濾過、酵素製剤精製
- 医薬・バイオ:ウイルス、細菌除去、抗体・ワクチン精製
- 化学・金属:排水から有価金属回収、フッ素・重金属除去
- 半導体:超純水精製、プロセス水のリサイクル
このような管理が厳しい場面では、安定したランニングが重要視されます。
そのため、膜と設備(モジュール)の最適設計、メンテナンスフリー化、インラインでの自動監視・制御技術の導入が推進されています。
自動化時代の膜運用とアナログ業界の変革
昭和時代からのアナログな管理体制では、膜の定期的な目視点検や手動洗浄、都度対応の交換作業が一般的でした。
しかし現在は、膜圧差やフロー情報のセンサー監視、異常予知保全、CIP(定置洗浄)自動運転、メンテ周期予測AI導入など、デジタル化・スマートファクトリー化へ転換しつつあります。
この流れに乗り遅れないことが、現場力の底上げやコストダウン、バイヤーが求める「プロセスの見える化」への第一歩となります。
膜モジュール構造の種類と実践での選定ポイント
各種モジュール形状の特徴と使い分け
膜を利用した装置(モジュール)には、いくつか代表的な構造があります。
- 中空糸型:細いストロー状の膜束。省スペース・大量処理に適し、産業用で主流。
- 巻き取り型(スパイラル):フラットな膜を巻いた形状。逆浸透やナノろ過で多用。
- 平膜型:板状。パイロットスケールや特定用途に適合。
- チューブラー型:太い管型。高流量ラーメンや高汚泥排水の前処理など特殊用途。
現場での選定は、原水の濁度・成分、所定流量、設置スペース、メンテナンス性の他、運転コストや水損(廃水率)なども評価軸となります。
導入成功のために押さえるべき現場ノウハウ
複数メーカーの同一性能スペックを比較した際、原水の質が微妙に違うだけで長期信頼性・ファウリングの出方が大きく変わります。
現場試験結果や既存プロセスの稼働実績、サプライヤーの保守対応など総合評価し、仕様書スペックに現れない「現場での実力」を吟味する眼力が重要です。
バイヤーとして調達観点では、装置価格だけでなく長期運転費用(ランニングコスト)、定期部品供給の安定性も加味して判断しましょう。
膜ファウリングのメカニズムと実効的な抑制策
ファウリング現象の種類
膜ろ過プロセスで避けられない課題が「ファウリング(目詰まり)」です。
主な原因は以下の通りです。
- スケーリング:硬度成分やシリカ凝集による無機沈着
- 有機ファウリング:タンパク、油脂、微生物汚染などによる汚れ
- 生物ファウリング:バイオフィルム形成など微生物起因の目詰まり
ファウリングは透水量低下・選択性低下・エネルギー増大に直結し、過度の場合は膜破損のリスクも伴います。
現場で役立つファウリング対策
代表的な防止・対策手法は次の通りです。
- 原水の前処理:砂ろ過、凝集沈殿などで大きな異物や油分を除去してから膜に流入
- 定期逆洗・空気洗浄:物理的に膜面をクリーニングし堆積物を剥離
- 化学洗浄(CIP):アルカリ・酸・酵素剤や塩素で膜の付着物やバイオフィルムを分解・除去
- 流速やドレン量調整:流路内のデッドゾーン回避や滞留時間短縮
- 表面改質膜やファウリング耐性膜の選定:疎水・親水性バランス/特殊コーティング済みの膜材
アナログ管理から一歩進んで、圧損や水質変動の自動アラートシステム、メンテナンス履歴のデータベース化・予測保全も、現場の稼働率向上に大きく役立ちます。
膜を用いた最新水処理技術と新規開発の着眼点
水処理分野における膜技術の革新例
膜分離法は、従来の物理・化学的処理だけでは到達困難だった分離性能を発現し、以下のような用途で広がっています。
- 中水・下水の再利用 … ROやNFにより工場排水の再生・省水運転へ
- 高付加価値排水リサイクル … 貴金属・貴重成分の濃縮と回収
- エネルギー分野 … バイオガスプラント排水処理やイオン交換との組合せ
- 環境規制対応 … ハロゲン・重金属・有機溶媒など法令値クリア
また、IoTやAIと連携した膜状態自動監視、効率的な更新タイミング提案なども進展中です。
新規開発・導入のヒント
製造現場での新技術導入のヒントとして、以下が挙げられます。
- 自社の排水や原水組成を分析し、他社製品との性能比較だけでなく「自工程での膜評価試験」を重視する。
- 設備側だけでなく、化学薬品やエネルギーも含めた「トータルコスト」の試算を行う。
- 現在主流であるアルミナ・カーボンのみならず、次世代膜(グラフェン膜、ゼオライト等)の試験導入や共同開発を検討する。
- アナログ管理に留まらず、運転・保全の自動化、デジタル技術の統合を設計段階から視野に入れる。
- 市場変化や環境規制を見越して、リサイクル水・省資源型生産の社内提案材料に膜技術を活用する。
バイヤー視点では、単に「膜ユニットを買う」だけでなく、供給安定性、アフターサポート体制、メーカーの改良意欲なども含めた総合的な調達戦略が今後ますます重要になります。
おわりに:膜分離技術による現場改革と価値創出
膜分離技術は、単なる「水をきれいにする」装置ではなく、製造プロセスの効率・安定・価値向上を担う重要な要素技術です。
昭和時代のアナログ作業から一歩踏み出し、膜モジュールや自動化技術、ファウリング抑制策など最新動向を柔軟に取り入れていくことが、現場の強みを次世代につなぐ鍵となります。
バイヤーやサプライヤーだけでなく現場担当者も、深い知識とラテラルシンキングでプロセスを見直すことで、新たなコスト削減や品質向上、環境対策のヒントが見えてくるはずです。
現場から未来を創造するために、膜分離技術の進化を積極的に活用していきましょう。
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