投稿日:2024年8月10日

金属積層造形の技術と製造業での応用方法

はじめに

金属積層造形技術(Metal Additive Manufacturing、以下MAM)は、製造業における革新的な技術として注目を浴びています。
この技術は、従来の加工方法では難しかった複雑な形状の部品を作り出すことができるため、設計の自由度が大幅に向上します。
本記事では、金属積層造形技術の基本概念、最新技術動向、さらに具体的な製造業での応用方法について詳しく解説します。

金属積層造形技術の基本概念

金属積層造形技術とは?

金属積層造形技術は、3Dプリンターを用いて金属の粉末層を一層一層積み上げて、最終製品を製造する技術です。
この技術は、Selective Laser Melting(SLM)、Direct Metal Laser Sintering(DMLS)、Electron Beam Melting(EBM)などの異なる方式がありますが、基本的なプロセスは同じです。

基本的なプロセス

1. 設計データの作成:CADソフトウェアを用いて3Dモデルを設計します。
2. 粉末の配置:金属粉末を薄い層に広げます。
3. 造形:レーザーや電子ビームを用いて、選択的に金属粉末を溶融・焼結します。
4. 層の積み上げ:一層ごとの造形が完了すると、新しい粉末層を追加して再び溶融・焼結します。
5. 後処理:造形が完了した製品に対して、必要な後処理を行います(例:熱処理、研削、研磨)。

最新技術動向

高精度化と高速化

最近では、レーザーや電子ビームの精度が向上し、高精度な部品の製造が可能となっています。
また、複数のレーザーを同時に使用することで、造形速度を大幅に向上させる技術も開発されています。

多材料積層造形

複数の材料を同時に使用して積層造形を行うことも可能となっています。
これにより、異なる特性を持つ金属を一つの製品に組み込むことができ、性能や機能を向上させることができます。

大型積層造形

大型構造物の積層造形も進化しており、航空宇宙や建築分野での応用が期待されています。

製造業での応用方法

航空宇宙産業

航空宇宙産業では、軽量かつ高強度な部品が求められます。
金属積層造形技術を用いることで、従来の方法では製造が難しい複雑な形状の部品を製造することが可能です。
これにより、設計の自由度が向上し、最適な材料の配置を実現できます。

自動車産業

自動車産業でも金属積層造形技術は注目されています。
特に、プロトタイプの製造や小ロット生産において、そのスピードと柔軟性が評価されています。
これにより、新しい設計の迅速な試作や、特別仕様車の部品製造が効率的に行えます。

医療産業

医療分野でも金属積層造形技術の応用が進んでいます。
特に、患者個々に合わせたインプラントや義肢の製造が可能となり、個別化医療の実現に寄与しています。

エネルギー産業

エネルギー産業では、タービンブレードやコンプレッサ部品など、高精度で耐久性の高い部品が求められます。
金属積層造形技術を用いることで、複雑な冷却チャネルを含む部品の製造が可能となり、効率的なエネルギー転換が実現されます。

製造現場での活用例

工具や治具の製造

生産ラインで使用される工具や治具の製造にも金属積層造形技術が応用されています。
これにより、短期間での設計変更が可能となり、生産効率の向上が期待できます。

特殊部品のリバースエンジニアリング

古い設備や特殊な部品のリバースエンジニアリングにも金属積層造形技術が利用されています。
これにより、古い設備のメンテナンスが容易になり、稼働率の向上につながります。

技術導入のメリットとデメリット

メリット

設計の自由度

従来の加工方法では難しい形状や内部構造を持つ部品の製造が可能です。
これにより、性能向上やコスト削減につながります。

短納期

従来の方法よりも短い期間で製品を製造することが可能となります。
これにより、新製品の市場投入までの時間を短縮できます。

材料の有効利用

必要な部分にだけ材料を使用するため、材料の無駄を減少させることができます。

デメリット

初期導入コスト

金属積層造形装置は高価であり、初期導入コストが高くなることがあります。

材料の制約

使用できる金属材料が限られているため、適用範囲に制限が生じることがあります。
また、粉末材料の品質管理も重要な課題です。

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