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グリップOEMが湿気環境でも滑りを防ぐマイクロデュアルテクスチャーパターン

目次
グリップOEMが直面する湿気環境の壁
グリップ製品をOEMで生産・供給する現場において、湿気による滑りは長年にわたる難題です。
スポーツ用具、医療デバイス、産業用ハンドル、そして自転車やバイクのグリップに至るまで、多くのユーザーが「手汗」「雨」「加湿環境」などで、グリップが滑ると感じたことがあるはずです。
特に高温多湿な日本の気候、工場の温度変化や屋外での使用を前提とした製品では、なおのこと安定したグリップ性が要求されます。
OEMを請け負う側としては、自社の標準設計で本当に多用途か、ユーザーにとって安全・快適か、現場の声を丁寧に拾うことが今ほど必要な時代はありません。
昭和の成功体験を引きずったアナログな開発現場や、“昔ながら”の発泡ゴム素材頼みの風潮も、そろそろ限界を迎えつつあります。
本記事では、OEMの視点・バイヤーの視点・サプライヤーが意識すべき新潮流を、最新の表面構造技術=「マイクロデュアルテクスチャーパターン」に焦点を当て、深堀りしていきます。
アナログな発想の限界──従来の滑り防止策とは
従来型グリップのアプローチ
従来のグリップ製造では、多孔質ゴムや発泡樹脂、凹凸の大きなパターンなど“ざっくりとした改善”が主流でした。
表面に大きなイボ状の突起を設けたり、柔らかいスポンジ構造で「手のひらに貼り付く」感覚を強化したりと、直感的な仕様変更が行われてきました。
これらは確かに乾燥状態では一定の滑り止め効果があります。
しかし、多汗や雨天、機械油や溶剤の付着など「現場のリアルな使用環境」では、表面に水分や油が薄く残ることで逆に滑りやすくなり、本来の性能を発揮できません。
発泡素材は吸水性を有するものの、飽和すると逆に滑りの原因となる。
大きなパターンは手のひらの圧力で潰れやすく、耐久性や美観にもマイナスでした。
このような「場当たり的・過去依存型」の発想では、環境依存性を根本的に解決できません。
なぜ湿気がグリップ性を低下させるのか
表面に水分(湿気や汗)があると、摩擦係数が急激に低下します。
これは「クッション効果」ではなく、「潤滑効果(すべり)」が顕著に現れるためです。
手とグリップ、グリップと手袋、いずれも砥粒のような粗さやスポンジの吸水力だけでは解決しきれない「分子レベルの現象」が発生します。
これを解消するには、単なる素材開発やパターン大型化ではなく、「表面を微細・多層構造に再設計する」必要があります。
マイクロデュアルテクスチャーパターンとは何か
テクスチャー技術の進化と差別化
最新のグリップOEMメーカーは、ミクロン(μm:1000分の1mm)単位、あるいはサブミクロンのパターンを、多層的・複合的に設計するアプローチを拡大させています。
これが「マイクロデュアルテクスチャーパターン」と呼ばれる次世代の表面加工手法です。
「デュアル(2重)」は、複数の異なる形状・大きさのパターンを重層するという意味です。
たとえば「ベース層は波型の粗いパターン」「表層はミクロの微細な凹凸」を重ねる。
この構成により、従来の“単なる大きな突起”や“滑らかな吸水表面”では成し得なかった以下の効果が生まれます。
マイクロパターンの滑り抑制メカニズム
この技術の本質は、「水分膜の破壊」と「多点接触による摩擦力分散」にあります。
湿気や汗が付着しても、ミクロレベルの連続凹凸が毛細管効果で水分を分散し、同時に表面張力を調整します。
水分が均等に広がるのではなく「分断」「吸収」「逃がし」など複数の働きで、手のひら側の圧力がグリップ表面に“しっかりと伝わる”仕組みです。
さらに、2重構造により「大きめのパターンで押しつけ」「微細なパターンで滑りに対抗」できるため、握力の弱い方(女性や高齢者)でも高い保持力を発揮します。
特に多汗や雨天環境でも「手が滑ってグリップから外れてしまう」「急な負荷で手首を痛める」といったリスクが大幅に減少します。
OEM調達・設計の現場での活用メリット
グリップバイヤーの新たな調達指標
バイヤーや製品担当者が“付加価値のあるグリップ”を調達する際、「マイクロデュアルテクスチャーパターン」の有無は大きな選定要素です。
従来はスペック上の“素材名”や“寸法”、“価格”重視でしたが、今や「日常の実使用環境における滑り防止性能」「指紋・皮脂への耐性」「経年耐久性」などを評価軸に加えるべきです。
これにより納入時のクレーム削減、用途ごとの最適配置(例:医療現場の手袋利用、建設現場の装着手袋下での使用)、ひいてはブランド価値の向上に寄与します。
また、デザイン性や触感、衛生面でも高付加価値化が可能です。
サプライヤーの技術提案と差別化
サプライヤー(グリップ製造者)は単なるOEMの「指示通り生産」から、こうした新技術導入の“提案型パートナー”へ転換すべきです。
現場ノウハウを活用し、どんなシーンでどんな滑り方が発生するのか、解析データや事例を交えて提案する姿勢が、長期的な受注拡大と独自性につながります。
社内の生産技術や金型加工ノウハウ、異種材料との複合設計能力、成型現場の声などを活かせば、従来OEM間での価格競争から“技術価値の提案・差別化”の領域に進めます。
バイヤー側も、値段とブランドだけで比較する時代ではなく、現場での「安全・安心・作業効率」まで踏み込む調達眼が求められます。
昭和型アナログ現場も“アップデート”できる理由
職人技×デジタル解析の融合
日本のグリップ工場は、いまだにベテラン職人の手感覚・現物確認が根付いています。
「この配合なら大丈夫だろう」「このぐらいのパターンだったら安心」といった“昭和の勘”も生き残っています。
しかし、最新のマイクロテクスチャー設計は、射出成形金型やレーザー加工、シミュレーション技術の飛躍的な進化により、現場知識をベースとしながらも「科学的根拠」と「データ検証」で裏打ちされたものに変貌しています。
職人の気づきとデジタルの融合で、より高度なパターン設計・改善提案が可能となります。
小規模工場でも導入しやすい理由
初期は高額だったマイクロパターン金型も、今では3DプリントやCNC加工で試作コストが格段に下がりました。
「うちは小ロットだから無理…」と尻込みせず、簡易金型やテストサンプルで営業提案する入り口は広がっています。
バイヤーとの共創による新製品開発や、サンプル比較のデータ採取も容易になりました。
工場スタッフが日々の現場観察を活かし、「試しにこの形状を微細化してみた」「指先・手のひらの動きと滑りを検証した」などのアナログな改善に、デジタル精密加工・CAE解析を導入する。
昭和から続く現場力を“アップデート”して、令和型OEMビジネスの武器となり得ます。
今後の業界動向と、現場が掴むべきポイント
欧米・アジア市場の潮流と規格順守
海外、特に欧米や東南アジアでは「手から滑ることでの事故リスク」を法規制・監査で厳しく問われる傾向が強まっています。
OEMで海外展開を目指す企業は、単なる滑り止め性能だけでなく「ISOやEN規格」「食品・医療グレード」「エコ設計」まで視野に入れるべきです。
マイクロデュアルテクスチャーは、そうした国際対応にも効果的です。
バイヤー/サプライヤー間での“共創”の重要性
これからの製造業は、OEM設計者・バイヤー・サプライヤーが「現場の困りごとを可視化し、透明な情報共有を進める」共創型体制が肝心です。
マイクロパターンの滑り比較デモや、実使用シーンの動画・数値での可視化、ユーザーフィードバックの速やかな反映など、“机上の会議では見えない現場力”が競争力になります。
また、グリップ製品そのものにシリアルコードやQRラベルをつけ、現場での評価や不具合情報をフィードバックできる「DX化」も進展しています。
まとめ:現場発・先端技術による新たな付加価値創出へ
グリップOEMの分野において、マイクロデュアルテクスチャーパターン技術は、湿気や手汗など日本独自の使用環境への“本質的な対応”を可能にしました。
単なる素材置換やパターン模倣、コスト競争から脱却し、現場から生まれる気づきとデジタル技術の融合、“体感できる安全・快適”という真の価値を提供する時代です。
製造業の現場・設計者・バイヤー・サプライヤーそれぞれが、正しい問題意識を持ち、共にアップデートすることが、次の時代の産業競争力を左右します。
グリップ製品から広がるイノベーションの波に、ぜひ主体的に乗り込んでみてください。
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