- お役立ち記事
- スニーカーのミッドソールがクッション性を生む素材配合
スニーカーのミッドソールがクッション性を生む素材配合

目次
はじめに:スニーカーの快適性を支えるミッドソールの進化
現代のスニーカーは、運動性能だけでなく、快適性や健康面でも着用者の生活を豊かにするアイテムとして重要な役割を果たしています。
その中核を担っているのが「ミッドソール」、すなわちアッパーとアウトソールの間にあるクッション層です。
特に最近では、その素材配合や設計思想が大きく進化し、足への負担軽減や運動パフォーマンスの最大化に大きな違いをもたらしています。
本記事では、20年以上の製造業現場で培った知見をもとに、スニーカーのミッドソールがどのような素材配合で「クッション性」を生み出しているのか、最新の業界動向や今後の展望も交えて解説していきます。
現場目線の実践的な内容や、昭和から続くアナログ思考の現場がなぜ進化へと向かったのか…その背景も掘り下げます。
ミッドソールの役割と求められる性能
ミッドソールの主な役割は、歩行やランニング時の衝撃を吸収し、安定した足運びを支援することです。
ですが、一口に「クッション性」といっても、単に柔らかいだけでは高性能とは言えません。
ソール素材が持つ復元力や耐久性、変形のしやすさや温度変化への強さなど、さまざまな物性が組み合わさることで、理想的なバランスのクッション性が生み出されています。
たとえば、トップアスリート向けスニーカーでは、長時間の運動でもヘタりにくい粘弾性と、ランディング時に衝撃を“分散”する力が要求されます。
逆に日常履きやウォーキング用では、足裏全体を優しく包み込むような「ふかふか感」と長期間使っても型崩れしない耐久性が重要です。
この性能設計を「素材配合の妙」が実現しているのです。
代表的なミッドソール素材の種類と特徴
1.EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)
厚底スニーカーから軽量ランニングシューズまで、今や最も「一般的」といえるミッドソール素材がEVA(イーブイエー)です。
発泡させることで、気泡がたくさん入った軽くて柔らかい素材となり、高いクッション性を発揮します。
発泡倍率や架橋剤の種類を変えることで、同じEVAでも硬さ・耐久性・弾力性を細かくチューニングできるため、バリエーションが非常に豊富です。
一方で、加水分解や経年劣化により、数年程度でクッション性が低下することが多いという課題もあります。
2.PU(ポリウレタン)
PUはEVAよりもへたりにくく、長期に渡る圧縮や衝撃でも優れた復元性を持ちます。
そのため、ワークブーツやビジネスシューズなど、耐久性がより重視される製品に使われることが多い素材です。
ただし、重くなりやすい・コストが高いという側面もあり、スニーカー全体の軽量化が進む昨今ではEVAとのハイブリッドも珍しくありません。
また、PUも種類や発泡の度合いによって硬度や感触がかなり異なるため、メーカーごとに「PU配合の秘密レシピ」が存在しています。
3.新素材(熱可塑性ポリウレタン=TPU、PEBA(ポリエーテルブロックアミド)、ナノセルロース他)
近年は、EVAやPUの欠点を補うために、次世代の高機能樹脂を積極的に採用する動きが活発です。
特に有名なのが、adidasの「BOOST(ブースト)」シリーズに採用されたTPU(熱可塑性ポリウレタン)発泡体です。
小さな顆粒(ペレット)をブロック状に圧着することで、高反発で軽量、そして長寿命という特徴を同時に実現しています。
さらにハイスペックな分野では、PEBAやナノセルロースなども使われ始めています。
これらはごく小さな分子構造レベルで衝撃エネルギーを制御することができ、徹底的に「反発」「耐久」「軽量」を追求した素材です。
ただ、製造工程の複雑化や原材料コストの高さ、環境対応の課題もあるため、現状ではごく一部の高級モデルにとどまっています。
4.複合材・ハイブリッド材の可能性
人の足への「理想的なクッション性」を突き詰めていくと、単一素材だけではどうしてもバランスが難しいというジレンマが表面化します。
そこで、複数の素材を積層したり、エリア別に素材を使い分けたりする「複合配合」が次第に主流になっています。
例えば、かかと部分だけPUの弾力材を挟み、前足部には柔軟なEVAを配置するといった工夫です。
また、アウトソールとの接着面に特殊なゲルやエアパッドを入れたり、成形プロセスで極薄のカーボンプレートを仕込んで反発性を高めたりするケースも増えています。
まさに“多層コラボ”による時代です。
素材選定の現場―昭和的アナログ思考からの脱却
スニーカーに用いられるミッドソール素材の進化は、決してラボの研究者やマーケターだけの成果ではありません。
実際の生産現場、まさに「ものづくりの最前線」でも、一歩一歩地道な工夫と実践が重ねられてきました。
とくに日本の製造業では長らく、カン・コツ・経験に頼りがちだった職人気質な現場が主流でした。
配合比率の調整や樹脂の成形条件なども、ベテラン作業者の「肌感」に基づくことが少なくありませんでした。
しかし、グローバルに競争が激化し、小型化・軽量化・高機能化が常識となった21世紀。
現場も「科学的根拠」に基づく実験データやCAE(構造解析シミュレーション)、さらにはAIによる最適条件設計などを積極的に導入するようになりました。
その背景には、消費者ニーズの多様化と“カスタマイズ”志向の高まりがあります。
また「リサイクル材」や「生分解性樹脂」のような環境配慮型素材の普及も、現場に新たな知恵と視点を与えています。
このように時代の要請に合わせて、従来の昭和的アナログから「データドリブン」へ、徐々に“地平線が広がり”つつあるのが現在の素材開発の現場です。
バイヤー&サプライヤーが知るべき素材競争の裏側
ここで、調達購買やバイヤー、または原材料サプライヤー側の視点も掘り下げてみましょう。
スニーカーのミッドソールに求められる「クッション性」とは、実は単純な“ソフト感”ではありません。
一足一足、サイズや価格帯、ターゲット市場によって最適解は大きく異なります。
バイヤーは以下のポイントを念頭に置き、素材選定・価格交渉・品質監査を行う必要があります。
・「物性データ」と「現場フィーリング」の両方を確認する
・EVAやPUのランク分け(密度・発泡倍率など)を明確に理解する
・原材料供給元の安定性とトレーサビリティを担保する
・新素材(ファンクショナルマテリアル)への切り替え時は生産性や歩留まり、成形条件なども慎重に詰める
・環境対応素材(リサイクルEVA等)のコストとユーザー受容性のギャップに配慮する
逆にサプライヤー側は、ただ安価な原料を出すのではなく、「御社専用」や「ブランドの技術ストーリーに合致する」ような素材アピールが必須です。
近年は「カスタムレシピ」「アライアンス開発」「OEM対応」など、きめ細やかな提案型営業が鍵を握るようになっています。
AI・IoTの時代、クッション開発はどう変わるのか
IoTやAI解析、ビッグデータが現場のあり方を大きく変えつつある今、「ミッドソール=クッション素材」の開発・品質管理も転換点を迎えています。
例えば、ランナーや作業者の動きをリアルタイムでセンサーデータ化し、「どの部位に、どんな負荷が何回繰り返されているか?」を精密に計測できるようになりました。
これによって、単なる「人間任せ」の耐久テストでは見つからなかった微細なダメージや劣化傾向も数値化されます。
設計チームはCAEや解析ソフトを駆使し、想定外の異常変形や滑り・加水分解リスクまで事前検証が可能です。
また、工場現場では成形工程の温度・圧力・時間履歴をすべて自動記録することで「歩留まりの高いレシピ」を標準化することができます。
このような現場発AI活用こそ、かつての“感覚重視”から「知識とデータの融合時代」への大きな変化点です。
まとめ:素材配合は製造現場の熟練×革新の賜物
スニーカーのミッドソールが生み出すクッション性、それは単なる「素材の違い」ではありません。
数十年に渡る現場の知恵と、技術&データによる創意工夫、そして激しい素材革新競争が生み出した総合力の産物です。
「昭和的なアナログ製造」から「サイエンス&DX製造」への転換期にある今、バイヤー、開発者、サプライヤーそれぞれの立場で“深く考えること”“新たな地平線を探し続けること”こそが、真の差別化につながります。
製造現場での経験値と、最新の業界動向の両方を味方につけ、現場レベルから世界レベルの「快適なスニーカーづくり」を目指していきましょう。
ノウハウ集ダウンロード
製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが重要だと分かっていても、
「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」
そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、
どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを
一緒に整理するご相談を承っています。
まずは現状のお悩みをお聞かせください。