調達購買アウトソーシング バナー

投稿日:2026年2月18日

製造業の中小零細企業をM&Aする際の心構えとメリットデメリットと属人的営業

はじめに

製造業は日本の産業の根幹を支えてきた分野です。
とりわけ中小零細企業は日本独特の強みであり、技術力の根幹を担ってきました。
しかし、人口減少や担い手不足、デジタル化の波など、多くの企業が生き残りをかけてM&A(合併・買収)という選択肢を選ぶようになっています。

M&Aは大企業だけの戦略ではありません。
むしろ、技術や人材の継承、業界再編、自社の成長戦略の一環として、中小零細企業こそリアルかつ身近なテーマといえます。
本記事では、「中小零細の製造業をM&Aする際の心構え」「メリット・デメリット」「属人的文化が強い業界の現実」など、現場目線で深掘りします。

M&Aに挑む際の心構え ―必要なマインドセットとは―

1. 事業承継以上に“人”の継承を意識する

製造業の中小零細企業では、経営者の意思やノウハウ、現場リーダーの熟練技術など、“人”に依存した経営が多いです。
数字上では見えない「信頼関係」や「暗黙知」に支えられている部分も多く、M&Aによりオーナーが変わることでモチベーションや雰囲気が大きく変わります。

実務的な事業承継だけでなく、「会社の空気」「仕事の流儀」「お客様との付き合い方」も含めて丁寧に引き継ごうとする覚悟が重要です。
画一的な制度や管理だけでは、現場はついてきません。
属人的な部分を否定せず“残しながら変革するバランス感覚”こそが肝となります。

2. 短期利益に走らず、長期的な視点で臨む

中小零細の会社のM&Aは、すぐに大きな利益が出るケースは多くありません。
むしろ「最初は混乱期」と考えるほうが現実的であり、その苦しみに耐える胆力が必要です。
最低でも3~5年スパンで「会社が次の10年を迎える基盤を作る」くらいのつもりで臨みたいところです。

3. “昭和的なやり方”へのリスペクトと変革の勇気を両立

根強いアナログ文化は、しばしば「古い・遅れている」と見なされたり、「非効率の象徴」として嫌われがちです。
しかし、そこには単なる効率化とは異なる意味合いがあります。
現場力やお客様との温かい信頼関係、薄いマニュアルでも回る現場力…。
これを完全否定せず、どの部分を活かし、どこを変えるべきか。
まずは理解し、現場に入り込む覚悟が必要です。

M&Aにおけるメリットとデメリット

メリット1:技術力やノウハウの一気獲得

中小零細製造業の多くは「特定分野でしか作れない部品」や「熟練技能者しか対応できない作業プロセス」を有することが強みです。
M&Aを通じてこれらを短期間で自社の武器にできれば、商品力や生産能力の大幅な増強が可能となります。

メリット2:顧客・取引先ネットワークの獲得

受注先や得意先との強固な関係は、数字以上の価値があります。
特にリピート受注が多い業界では、M&Aによってそのまま顧客リストごと信頼を手に入れることになり、販路拡大に直結します。

メリット3:生産能力や設備、リソースの増強

まとまった新しい工場ラインや、長年使い込まれた設備、豊富な在庫や特殊な治工具類も、一から準備するより遥かに短期間で自社の経営資源となります。

デメリット1:属人的営業や技術の“ブラックボックス化”

最大のリスクは「この人がいないと会社が回らない」という属人的構造のままM&Aが進んでしまう点です。
経営者やキーパーソンが辞める、あるいはモチベーションを失うと売上や生産性が一気に低下する恐れがあります。

また、顧客との関係性についても「○○さんの顔があるから発注している」「口約束・慣習で仕事が回ってきている」など、数値や文章で説明できない“空気商売”になっている場合は要注意です。

デメリット2:業界独特の慣習への対応が困難

昭和時代からの慣習が色濃く残る会社では、「朝一で先代の机を拭かなければ怒られる」「定時を過ぎても片付けを終わらせて帰る文化」など、企業風土が毎日の現場を支配しています。
良し悪しを越えて現場の暗黙知で成り立っているため、外部から来たチームがドラスティックにIT化、評価制度導入などを推進しすぎると、一気に人が離れることすらあります。

デメリット3:相乗効果(シナジー)が期待外れとなるリスク

「技術も顧客基盤も丸ごと手に入る」と考えて期待したが、思ったよりも自社との親和性がなく活かしきれない場合や、現場の文化が違い過ぎて融合できず、単なる“お荷物”化してしまうことも多いです。
システム統合が進まない、見積もりや受注管理のやり方がバラバラ、など調整に費やすコストがかさみ、逆に非効率になるケースも目立ちます。

属人的営業と製造業のM&Aのリアル

メーカー現場での“属人的営業”の実態

製造業の現場には「○○さんに頼めば何とかしてくれる」「納期ギリギリでもあの課長と話せばスペシャル対応可能」など、個人に依存した営業が根付いています。
属人的営業には柔軟な対応ができる、信頼関係が強固で競合に顧客が流れにくいなどのメリットがあります。
一方で、営業マンの転職やモチベーション低下がそのまま業績悪化に直結しかねません。

M&A後の“営業担当の離職”が生むリスク

属人的営業文化が染み付いた現場では、M&A後に営業担当が離れる、あるいはトップ営業が「やる気を失う」だけで、いとも簡単に主要顧客がごっそり消えてしまうこともあります。

「誰が」「どんな付き合い(契約・非契約含む)」で仕事を取ってきているのかを徹底的に可視化し、属人化を三分割して分散させていく、“複数担当制”の導入などを早い段階で行うことが有効となります。

現場が求めているのは「脱・属人化」か「共感的なマネジメント」か

一刀両断で「属人的文化を排除せよ」と走ると、現場のやる気や団結が一気にしぼむリスクが高いです。
「個人力」に依存してきた日本の町工場文化を理解し、「人は財産」であり「会社の空気=現場の空気」を大事にする“共感的マネジメント”の導入こそが、移行期には重要です。

一定期間は属人的営業も「資産」として残し、一方でゆるやかに“組織営業的な手法”や“情報共有文化”を醸成していく。
現行の強みと近代的な組織力の融合が、第二の成長を生む要となります。

M&A後に“失敗しない”ための現場目線提案

1. デューデリジェンスの「深さ」を見直す

財務諸表や受注リストだけでなく、「現場担当との雑談」「現場リーダーの作業手順」「非公式な工程管理シート」なども見て、実際に仕事がどう回っているかを確認しましょう。
経営者レベルだけでなく、主要な現場社員やリーダークラスにも直接ヒアリングを行うのが成功のカギです。

2. キーパーソンやリーダー層との信頼構築

「新体制への不安」や「自分たちの居場所がなくなるのでは?」と感じている中堅・熟練社員へのアプローチが重要です。
彼らが一人でも抜けると、短期間での混乱や顧客離れが加速します。
「新オーナーは現場の意見を聞く」「変革は無理に押し通さず段階的に進める」といった“一体感”づくりが肝心です。

3. 変革と現場力維持の“二段ロケット”戦略

初動の数年間は、従来のやり方・既存の空気感を尊重しつつ、「見える化」「情報共有」「マニュアルの簡素化」など小さな可視化に取り組みます。
その上で徐々にデジタル化・効率化・新たな人材登用に舵を切る二段ロケット型の変革が、現実的かつ現場に寄り添ったアプローチとなるでしょう。

“アナログ昭和的な現場”を学び直す意味

日本の製造業は今まさにデジタルへの転換期にありますが、中小零細企業の“粘り強い現場力”や“昭和の空気感”はこれからの時代にも強みとなりえます。
単なる効率化や管理強化では掘り起こせない「人の力」「つながり」「知恵や工夫」がそこには宿っています。
M&Aは、技術や資本だけでなく“現場の魂”を継承し、活かすための「学び直しのきっかけ」と捉えることが、令和の成長戦略においては非常に重要です。

まとめ

中小零細の製造業をM&Aする――。
これは単なる企業間の数字や資産の取引ではありません。

“属人的な営業力や現場力をどう活かし、どうバトンタッチするか”
“昭和なやり方をリスペクトしつつ、未来に向けた変革をいかに進めるか”

数字や組織論では語りつくせない「現場の空気」を肌で感じ、受け止め、経営資源とすることが出来るかが大きな分岐点となります。
M&Aの本当の価値は「単に買う」のではなく、「人・技術・文化を未来につなげる」ことに他なりません。

今、製造業に関わる全ての方々が、自身のキャリアや会社の未来、業界発展のために「リアルな現場」を見つめ直すきっかけになる。
この記事が、その一助となれば幸いです。

調達購買アウトソーシング

調達購買アウトソーシング

調達が回らない、手が足りない。
その悩みを、外部リソースで“今すぐ解消“しませんか。
サプライヤー調査から見積・納期・品質管理まで一括支援します。

対応範囲を確認する

OEM/ODM 生産委託

アイデアはある。作れる工場が見つからない。
試作1個から量産まで、加工条件に合わせて最適提案します。
短納期・高精度案件もご相談ください。

加工可否を相談する

NEWJI DX

現場のExcel・紙・属人化を、止めずに改善。業務効率化・自動化・AI化まで一気通貫で設計します。
まずは課題整理からお任せください。

DXプランを見る

受発注AIエージェント

受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。

機能を確認する

You cannot copy content of this page