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小規模から使える権限設計で情報漏えいを防ぐ最少構成

目次
小規模から使える権限設計とは何か
世の中の多くの製造業の現場では、情報の取扱いに対する意識が高まっています。
特にサプライチェーンが複雑化し、デジタル化が進むなかで、「情報漏洩」は企業の信頼を根底から揺るがす大きなリスクとなりました。
大手メーカーや上場企業では、厳格な情報セキュリティ・権限設計の仕組みが導入されていますが、中小規模や小規模な現場では「そこまでは…」と二の足を踏むケースも多いでしょう。
しかし、取引先の要求やサプライヤーとしての信頼維持の観点から、“最小の労力・最小の機能・最小人数”で始められる「最少構成」の権限設計の考え方が重視されています。
ここでは、20年以上製造現場で培った視点から、「小さく始めて、大きな事故を防ぐ」ための現場型権限設計のエッセンスを解説します。
工場現場に蔓延る“昭和型ゆるい権限”の実態
なぜ権限設定が疎かにされやすいのか
製造現場には、「みんなが仲間で、昔からのやり方を踏襲する」という土壌が強く残っています。
特にアナログ文化が根付いた工場では、「データや書類は、手が空いている人が見るのが当たり前」「USBや共有フォルダは現場全体で使い回し」といった昭和的運用が色濃く残りがちです。
この「現場の都合優先」が、権限を曖昧にし、重大な情報漏えいリスクを内包する原因となっています。
実際に起きている業界内外の情報漏えい例
例えば、現場が共通のUSBメモリを使用していた場合、現場オペレーターが不用意に持ち出してしまい、機密設計データが外部に流出した事件があります。
また、生産管理や購買、品質管理部署が誰でも全データへアクセスできてしまい、サプライヤー情報や価格表が漏れ、不正な価格交渉や発注ミスにつながったケースも。
これらは大手企業だけの問題と思われがちですが、小規模の下請け工場でも実際に起こりうる脅威です。
最少構成で始める“小さな権限設計”の基本思想
「信頼ベース」から「最小権限ベース」へ
従来の“信頼関係”に依存した運用から、役割に応じた“最小権限での運用”へ意識を切り替えることが肝要です。
最小権限(Least Privilege)とは、「その人が担当する職務・作業を行う上で最低限必要な範囲のみ、ファイルやシステムへのアクセス権限を与える」という原則です。
この考え方はIT業界由来ですが、シンプルなフロア管理や紙運用の工場にも効果的に応用できます。
現場に根付かせるために外せない3つのポイント
1. “やっているフリ”の形式主義は排除する
2. 業務フローと合致した「例外運用」も考慮に入れる
3. 現場コミュニケーション、心理的バリアを壊す“言語化”と“見える化”が大切
この3つの現場視点は、机上の設計から乖離させないベースとなります。
情報漏えいを防ぐための現場×IT最小構成モデル
最低限必要なステップで権限を分ける
1. 部署・役割ごとの情報区分け
例:生産計画データ(生産管理のみ)、品質記録(品質管理のみ)、購買先データ(調達のみ)
2. アクセス手段を限定する
パスワードつきフォルダ、紙書類ならキャビネットにカギを設置
3. マスターデータ管理者(1人 or 2人)を決める
データ更新・消去権限を特定の人に集約
4. 外部記録媒体の使用制限
USBや私物端末の社内利用禁止、もしくは貸出簿の徹底
5. 持ち出し・閲覧履歴の記帳(アナログでもOK)
「いつ」「誰が」「何を」確認したか、ノートやExcelで管理
「ゼロから始める権限設計」事例:小規模工場編
たとえば、従業員10人規模の精密部品工場を想定します。
・現場作業者は、日々の作業指示書と自身の生産予定だけ閲覧可能にする
・原価、価格表は現場リーダーと生産管理担当のみ閲覧
・図面や技術資料は設計・品質チームのみ、閲覧・転送は管理者チェック必須
・外部への資料転送・メール送信は原則ブロックし、必要時のみ承認制
それぞれの区分で“最低限の範囲”だけ情報アクセスを許可します。
なぜ “最少構成” の権限設計が小規模企業に最適なのか
ムダな管理コストを抑える
製造現場は、とかく「新しい仕組みは手間が増える」と敬遠されがちです。
権限設計も大規模に構築すると、IT管理コストや教育コストが先に立ってしまいます。
「最小限で分け、イレギュラーは人の目でカバー」と割り切ることで、現場の反発感が小さくなり、無理なく運用を始められます。
“境界線の可視化”による抑止力
簡素な区分けでも、「これは触って良いもの/悪いもの」が明示されることで、“たまたま”的な閲覧・持ち出し事故のリスクが激減します。
小さな一線を引くことで、意識変革と事故防止効果の両輪を回すことが可能です。
サプライチェーンでの対等な信頼構築につながる
最近では大手メーカーが下請けやサプライヤーにも情報管理体制の強化を求めることが増えています。
「小さい会社だから無理」という言い訳が通らない時代、情報セキュリティに対する自社独自の“考えと方策”を示すことが、商談や見積段階から評価されやすくなっています。
アナログ現場への橋渡し:こうすれば現場に根付く
「ITツール不要」アナログでもできる手軽な方法
・共有棚、キャビネットに鍵管理リストを置く
・書類閲覧はノート記帳
・棚ごとに色分けで「閲覧範囲/持出しNG」明示
・職制ごとに“閲覧ラベル”“権限リスト”を壁に貼る
大がかりなシステム導入は不要です。
まずは「何を/誰が持ち出せるか/見せて良いか」を見える化し、紙やラベル、シールまで使って物理・心理の障壁を用意しましょう。
リーダーシップを発揮するのは現場の若手とベテラン
新しい習慣・仕組み導入は、役職だけでなく、現場をよく知る若手・ベテランの「現実視点」を巻き込むと成功しやすくなります。
「新人でもわかる、ベテランでもかんたん」「誰でも声かけしやすい」シンプルな設計が、現場全体の“やらされ感”の解決への鍵です。
権限設計は“攻めの守り”~まとめと今後の展望~
小規模工場やサプライヤーであっても、「最少構成」の権限設計を導入することは、単なるリスク対応にとどまりません。
業務効率化や、取引先からの新しい信頼獲得にも繋がります。
昭和的な“何となく大丈夫”の雰囲気を残したままでは、思わぬ事故で事業継続すら危うくする時代です。
“まずは小さく始める”最小権限と明確な運用区分は、新しい時代の工場経営の基礎となるものです。
どんなに小さな規模でも「自社ならでは」の工夫と現場目線を失わず、現場の声を反映しながら、時代にふさわしい情報管理体制を構築していきましょう。
これらの実践的ノウハウが、現場担当者、これからバイヤーを目指す方、またサプライヤーの立場でバイヤー志向を知りたい方のヒントになれば幸いです。
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