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Node-REDとRaspberry Piで旧設備から稼働データを拾う最小構成

目次
はじめに:昭和の工場が残る現場から、DXへの最初の一歩
製造業の現場には、今なお昭和の時代から稼働している設備が数多く存在しています。
高度成長期に導入された多くの工作機械や生産設備は、今でも職人の腕で現役として活躍しています。
一方で、工場全体のデジタル化、いわゆる「スマートファクトリー化」は、どうしても新型設備の導入やITに強い人材の獲得など、大きなコストやハードルが壁となって立ちはだかっています。
しかし、製造現場のデータ収集や可視化は、必ずしも1000万円単位のIoT投資が必要なわけではありません。
この記事では、「Node-RED」と「Raspberry Pi」を使って、レガシーな(古い)生産設備から稼働データを拾い上げる、最小かつ現実的な構成と実践方法をご紹介します。
購買担当や設備担当として苦労している方、サプライヤーとして顧客の設備管理に一歩踏み込みたい方にも、ぜひ役立てていただきたい内容です。
現場の課題:データが見えないという”手探り”の実態
デジタル化したくても、現実はアナログ設備だらけ
多くの現場では、生産計画や実績、中段、中断、停止などの情報を手書き日報やホワイトボード、あるいは人がExcelに打ち込むという形で記録しているのが実態です。
自動車、電機、機械系といった大手メーカーであっても、古いNC旋盤やプレス機、成形機などは「データ取り出し口」自体がありません。
予算がつけば最先端の全自動機に入れ替えられますが、すべての工場、すべての工程に同じ投資はできない現実があります。
帳票文化・紙文化とどう付き合うべきか
作業者がメモしていた稼働、停止のタイミング。
設備メーカーからの保守マニュアルも紙ばかり。
こうした文化を急激に変えることは、現場や上層部双方にもストレスがあります。
そのため、今ある設備から「ひとまずデータを拾ってみる」――そこから始めることが、現実的かつ最短のアプローチになります。
Node-REDとRaspberry Piの選定理由
なぜ「Node-RED」なのか?
Node-REDは、イギリスのIBMによって開発されたオープンソースの「ビジュアルプログラミングツール」です。
複雑なコーディングをしなくても、「ノード」と呼ばれる部品同士を線でつなぐことで、手軽にアプリケーションを組み上げることができます。
製造業では、PLCや各種センサーからデータを取る際に重宝されています。
特に未知の設備に合わせて「つなぎこんでみる」初期段階には、その柔軟性が役立ちます。
なぜ「Raspberry Pi」なのか?
Raspberry Pi(ラズベリーパイ)は、手のひらサイズの小型コンピュータで、数千円から入手できます。
一般的なPCと同様のLinux OSが動作するため、多様なセンサーや入出力デバイスと簡単に連携できます。
安価で、小スペースに設置でき、電力消費も低いため、現場の片隅に置いて24時間稼働も可能。
また、何より「失敗してもやり直しが効く」敷居の低さが魅力です。
旧設備からデータ取得の鉄則:最小構成のポイント
まず「何を拾いたいか」を決める
IoT化というと、「あれもこれも」と全部のデータを集めたくなるものですが、現実的な最小構成では「工場の誰もが価値を実感できる1データ」から始めるのが定石です。
例えば、
– 稼働中/停止中の状態(ON/OFF信号)
– 生産数のパルス信号
– ポカヨケやアラームの発生時信号
といった「すぐ現場の改善や工程管理に役立つ」情報を狙いましょう。
センサー設置の現場的な工夫
NCやプレスの場合、設備自体にデータポートが無ければ、
– ランプのON/OFFを光センサーで監視する
– リレーやカウンターの信号線をテスターで追って取り出す
– パトライトから稼働状況を検出する
といった、いわば”現場的泥臭さ”が有効になります。
Raspberry PiはGPIOピンという端子で直に信号入力できるので、定番の光センサーや無接点リレーの出力配線を直結するだけでもOKです。
Node-REDで可視化!ラズパイ最小構成の実装ステップ
1. 必要な機器と材料
– Raspberry Pi本体(できればPi3以上を推奨)
– SDカード(OS、Node-REDインストール用)
– 電源アダプタ
– 光センサー、接点リレーなど信号検出用デバイス
– 配線用コード、ブレッドボード等
– Wi-Fiや有線LAN(Air-Gapやセキュリティポリシー考慮)
2. Piの初期セットアップとNode-REDインストール
Raspberry Pi OSをインストール後、ターミナルからコマンド一発でNode-REDを導入できます。
curl -sL https://raw.githubusercontent.com/node-red/linux-installers/master/deb/update-nodejs-and-nodered | sudo -E bash
続いて「sudo systemctl enable nodered.service」で自動起動も設定しておきましょう。
3. GPIOピンで信号を受信する
例えば光センサーの出力をPiのGPIOピンに接続。
Node-REDでは標準搭載の「rpi-gpio in」ノードをドラッグ&ドロップで配置し、「ピン番号」「プルアップ/プルダウン」「イベンド種別」などを指定します。
信号受信時は「msg.payload」で0/1として次のノードに渡せます。
4. データの可視化と保存
Node-REDの「dashboard」ノードをインストールすることで、稼働状態をグラフやゲージでWebブラウザから見れます。
CSVファイルへの保存や、簡単なメールアラートも同じフロー内で連携できます。
データが溜まったら、日毎・週毎のグラフ化や、簡単な「MTBF計算」「停止理由分析」にも発展させられます。
サプライヤー視点:現場目線の価値提案とは
設備ユーザー向けに「この機械、IoTできません」と断るのではなく、
「このランプやモーター信号から、〇〇のデータだけなら拾えます」
と現実的な提案ができれば、サプライヤーとして信頼感が生まれます。
例えばメンテナンス契約に「ラズパイ+Node-REDの最小構成」を抱き合わせて、稼働情報のリモート監視やアフターサポートにもつなげられます。
また、購買部門としても、
「既存設備のIoT化は予算ゼロで試行したい」
という社内ニーズに応えられるはずです。
懸念点・よくある質問への対応策
Q:ラズパイやNode-REDは、業務システムとして大丈夫?
A:本格導入ではなく、「まずPoC(実証実験)」として位置付けることで十分なテストが可能です。
本番化の際は産業用コンピュータやPLCへの展開も容易です。
Q:保守性やセキュリティの注意点は?
A:設備ネットワークと事務ネットワークを分離、SSHやVPN経由のメンテナンス環境を整備すれば、実は既存のシステムと比べても高い安全性が担保できます。
Q:現場の反発や理解不足は?
A:「作業者業務は追加しない」「今ある動線・手順・安全性を守る」ため、非破壊かつ現場作業の負担ゼロで提案することが重要です。
エンジニアリング思考:現場力×ラテラルシンキングのすすめ
設備のデータ取得は、単なる技術導入ではありません。
現場に根付いた文化、職人・技術者の暗黙知、紙とホワイトボードの遺産。
こうした要素にきちんと寄り添い、現場の一歩目を後押しするところに、「Node-RED+ラズパイ」の価値が生まれます。
また、全く同じ設備でも「どこに・どうセンサーを付けるか」「どの信号を拾うか」は工場ごとに千差万別。
既存発想の枠を超え、「まだ世の中に事例がないやり方」に挑戦する――これこそ製造業現場のラテラルシンキングです。
まとめ:スモールスタートで始めよう、現場発IoTの地平線
IoTやDX推進がもてはやされる昨今ですが、その起点は「現場の実感・課題から立ち上がる仕組み作り」です。
Node-REDとRaspberry Piの最小構成は、投資を最低限に抑えつつ、昭和の設備をデータの世界へつなげる最良の一歩となります。
「まずやってみる」。
そのスピリットと少しの工夫が、あなたの工場・会社・お客様を大きく進化させます。
悩んでいる方は、ぜひ明日からでも光センサーとラズパイを手にして、現場のデータを拾い上げる旅に出てみてください。
現場のリアルとITの知恵――その融合こそ、製造業を次の時代に導く道しるべとなるのです。
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