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観察力不足で根本課題が見抜けず対策がズレる典型ミス

目次
はじめに:なぜ観察力不足が致命的ミスを招くのか
現場の問題解決に取り組む多くの人が、表面的な事象にとらわれ根本課題に気づかず、改善策が的外れになるケースが後を絶ちません。
そのバックグラウンドには「観察力の不足」という根本的な落とし穴があります。
昭和から続くアナログ的な業界文化でも、何十年も本質は変わっていません。
「原因は何か」「なぜ同じ失敗を繰り返すのか」、この問いに向き合うためには、表面の現象を観察するだけでなく、“観察自体の質”を疑う視点が求められます。
製造業に20年以上携わってきた筆者の経験も踏まえ、現場目線で“観察力不足”がどんなミスや非効率を生み、それを打破する新しい発想法までを徹底解説します。
業界バイヤー、サプライヤー、現場オペレーターや技術者など、あらゆる立場の方にとって実践的なヒントとなるはずです。
一見正しそうな対策が「ズレる」構造
見えていることと本当に起きていることのギャップ
製造現場での問題解決は、往々にして「不良が出ている」「納期が遅れる」といった現象からスタートします。
しかし、その事象を観察する際、多くの現場担当者は「不良の種類」「発生した時刻」「現場の様子」などの表面的なデータに終始しがちです。
たとえば、“異物混入が多発している”という現象を捉えても、帳票や写真だけを見て原因を推測し、すぐ対策会議にかけてしまう。
ここで「掃除の頻度を上げよう」といった直接的な対応策が打ち出されがちですが、本質的な理由—例:作業者の動線、設備間の死角、標準作業手順の実態—に迫れていなければ、本当の解決はできません。
“慣れ”による観察力の鈍化
良くも悪くも昭和時代からの製造現場は、「経験がものを言う」文化です。
長年同じ現場で働くと、風景も現象も“見慣れて”しまい、異常を見過ごす目になってしまう。
ベテランほど「ああ、またこれね」と流してしまい、本来崩れているはずの“普通”に鈍感になります。
これが「本当の異常」を見抜けない構造的な理由の一つです。
対策がズレることで起きる悲劇
表面観察のまま対策を講じると、「パッチワーク的」な是正策しか出ません。
たとえば、「検査体制を増員して対応」することで一時的に不良流出を防ごうとしますが、根本的な工程の乱れや設計不良、サプライヤーとの情報伝達不足が解消されていなければ、同じ問題は再燃します。
工程にはさらにムリ・ムダ・ムラが増え、現場の士気も下がります。
観察力向上の本質:ラテラルシンキングの活用
現象を“疑う”ことが出発点
本当の観察力とは、「当たり前」を疑い、現場の空気や文脈の“外側”から物事を見直すことです。
異常のパターン把握→プロセス全体の流れ→誰がどんな目的で何をしているか、など、複数の“横断的な視点”を持つことが重要です。
ラテラルシンキング(水平思考)を意識して、「なぜこれが起きたのか?」「この工程は本当に必要か?」「別の工場ではどうやっているか?」と、異なる角度から観察・疑問をぶつけてみましょう。
“人”と“プロセス”の観察が肝
現場では、「モノ」の観察だけでなく「ヒト(作業者や管理者)」の動きや思考パターンも観察すべきです。
作業標準書に沿っていない動き、現場の暗黙知、報告・連絡・相談の本当の現状など、「書面に残らない異常」を見つける目こそが現場力につながります。
また、一つひとつの工程の目的と前後関係を“ストーリー”として捉えて観察することで、思い込みや作業手順の形骸化を発見できます。
現場で実践する“ラテラル観察”の方法
– 現場ウォークでは“定点”だけでなく、日替わりで歩くコースや時間帯を変える
– 工場内外どちらでも、他部署のスタッフに現場の違和感を聞く
– 「なぜ?」を最低でも5回は繰り返す(トヨタ流の「なぜなぜ分析」)
– 作業現場を動画で記録し、第三者(例:別部署のスタッフやサプライヤー担当)と一緒に見直す
– 実際の作業者と一緒に“標準書通り”の動作をやってみる
これにより、習慣化した観察スタイルの外側に出ることができ、今まで見落とされてきた課題に気付くことができます。
昭和的アナログ文化とどう向き合うか
“型にはまらない”観察を良しとしない空気
いまだ根強い昭和の現場文化では、「変化は面倒」「やり方は絶対」「余計なことはしないで」といった発想も少なくありません。
権限移譲型でない現場だと、とくに若手やよそ者の新しい目線が受け入れられにくいです。
この空気が、同じ課題が現場に温存される最大の要因です。
アナログ現場でこそ“仮説検証”型観察が有効
デジタル化の余地が少ない現場ほど、「自分たちの現場はこうだ」という前提を打ち壊す必要があります。
仮説を立てて観察し、小さな実証(例:改善前・後の記録テストやアウトプット比較)を継続することで、現場の“納得”も得やすくなります。
むしろ、五感やアナログ的な対話能力の高さが、現場の観察力を鍛える素材になります。
現場を歩きまわり、作業者とのヒアリングで「不思議だな」「違和感があるな」と感じるまたとない機会を活かしましょう。
サプライヤー&バイヤー両視点からの観察力とは
サプライヤー側の観察力向上
バイヤー(=顧客企業)の要求がどこに本質があるのかを観察するのは、サプライヤーの責務です。
図面やスペックだけを見て「これを作って納めればOK」ではなく、その裏にある品質保証の意図、納品現場の実際、バイヤーが強く気にしているQCD(品質・コスト・納期)の微妙なバランスを観察し理解しましょう。
フィードバックを受けたときは対症療法型の対策で満足せず、「なぜその不具合やクレームが起きたのか」を現場まで追い、サプライチェーン全体で観察を重ねることがリピート受注や信頼醸成につながります。
バイヤー側の観察力:本質を見抜く力
バイヤー自身も、現場の一時的コストや短期納期だけでなく、サプライヤーの現場マネジメント力、その改善文化、提案力の成熟度など、“見えない意識”にも観察力を向ける必要があります。
たとえば、サプライヤーの現場を訪問した時、担当者の身だしなみや工場内の清掃状況、会話の中のヒント(普段どんな点を重視しているか)に、“現場の空気”が表れています。
購買判断には、単なる価格交渉力だけでなく、「現場の観察力」を養うことこそが付加価値になりえます。
観察力養成のため、今すぐできる実践的アクション
– 定期的な現場ウォーク(時間帯、工程、ラインを意識的に変える)
– 作業動画による多視点での確認・フィードバック会議
– 作業標準書のスルーリーディング(現場と本当に合っているか?を吟味する)
– 外部講師や異業種の現場見学をセットする
– 日々の「事象メモ」—単なる出来事だけでなく、自分の違和感や考えたことも記録
小さな習慣から大きな現場変化につながるはずです。
まとめ:観察力の強化が現場力とバリューを高める
観察力は、単なる「現象の把握」ではなく、「本質を見抜き再発防止につなげるための思考力の起点」です。
表面的な対応をやめ、真の現場課題・サプライチェーン全体の最適化を実現するには、ラテラルな視点とアナログ的な“目”を鍛え直すことが不可欠です。
昭和から続く業界文化でも、根本的な現場力の底上げには“観察の質”のアップデートが欠かせません。
バイヤー・サプライヤー・現場オペレーターのいずれの立場でも、“本当の課題”を見抜く観察とアクションを、今日から始めましょう。
それが製造業の未来を切り拓く第一歩となります。
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