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OEM生産で発生する“型代と検討ロス”の理解

目次
はじめに
OEM生産において、多くのバイヤーやサプライヤーの間で誤解されやすいのが「型代」と「検討ロス」の存在です。
製品の立ち上げから量産に至るまで、これらのコスト要素が与えるインパクトは非常に大きいものです。
特に昭和から続くアナログな製造慣習が色濃く残る中小企業や老舗メーカーでは、「いつの間にかコストが膨らんでいた」「なぜこの金額になるのか説明できない」といった課題も少なくありません。
本記事では、20年以上にわたり調達・生産管理の最前線で得た実務経験を交え、OEMビジネスにおける型代と検討ロスの本質、それを戦略的に捉える方法を深掘りします。
OEM生産における「型代」とは
型代の基礎知識
型代とは、金型・治具など製品を量産するために必要な専用設備を新規で製作する際に掛かる費用のことを指します。
この金型は射出成形、プレス、ダイカスト、鋳造など、さまざまな加工工程で使用されます。
例えば、新しいプラスチック部品を作る場合、その形状に合った金型が不可欠です。
この金型は一度作るのに数百万~数千万円にも及ぶことがあり、OEM製品の初期コストの中でもインパクトが大きい要素です。
型代の発生タイミングと会計処理
型代の費用が発生するタイミングは、設計検討がある程度終わった段階で試作段階に進む時です。
実際の会計処理では、型代を「一括で支払う方式」と「分割で回収する方式」があります。
前者は、発注元が型代全額を初期投資としてサプライヤーに支払い、金型の所有権も発注元に帰属します。
一方、分割回収方式では、型代の一部をサプライヤーが負担し、その分を量産品の価格に上乗せして回収します。
後者の場合、型の所有権がサプライヤー側に残ることが多いのが特徴です。
OEM型代の価格決定メカニズム
型代は「材料費+加工費+設計費+調整費+利益」という要素で構成されます。
これに、昨今では「急な短納期対応による割増費用」「CADデータの複数修正工数」といった、事前に想定できないコストも加味されます。
最近の動向としては、安価な海外金型(中国、ベトナム等)を手配してイニシャルコストダウンを図るケースも増えていますが、品質対応や段取り工数に潜むリスクも大きいです。
OEM検討段階で生じる「検討ロス」とは
検討ロスの定義とその背景
検討ロスとは、発注元とサプライヤーが多数回にわたり図面や仕様を擦り合わせる中で発生する「無駄な検討時間」や「不要な設計変更」「試作のやり直し」など、目に見えないコスト全般を指します。
本来、発注元は詳細な仕様と要求品質をはじめに明確に示すべきですが、多くの場合「おおまかなイメージ」しか伝えず、サプライヤー側で仕様の解釈ブレや認識違いが発生します。
その結果、度重なる仕様調整や試作のやり直しが発生し、設計工数だけでなく調達・生産・品質管理の各現場担当者にも多大な負担となります。
検討ロスが生む実際のコストと現場混乱
設計検討・仕様決めの段階で手戻りが発生すると、1~2週間で終わるはずのプロジェクトが1ヶ月、2ヶ月と遅延し、金型の仕様変更や再試作による追加費用も膨らみます。
また、折衝に追われることで現場は日常業務との両立が困難となり、裏では「残業、休日出勤、現場応援」が不可避となり、本来の生産性を大きく損ねることも珍しくありません。
仕様の曖昧さは、製造現場だけでなく調達・購買のバイヤー、営業、設計、品証すべての部門に“検討ロス”として降りかかります。
昭和スタイルからの脱却が急務の現場実態
なぜいつまでもアナログ検討が直らないのか
多くの日本の製造業工場では「とりあえず現物合わせでなんとかなる」「曖昧な仕様でも納期優先で進める」など、過去の成功体験が抜けません。
紙の帳票、印鑑による承認、FAXでの図面送信、Excel進捗管理…といったアナログ管理が今でも根強く残っています。
この背景には、設計部門と生産現場が分断されていたり、トップダウンの命令指示が多いなど、日本独自の組織風土も影響しています。
また、「うちの業界は特別だから」「今までこれで乗り切ってきたから大丈夫」という意識が、デジタル化・効率化を阻んできました。
“人がなんとかする”が限界にきている
現場力を信じて手間や残業で“しのぐ”昭和流は、今や人手不足や働き方改革の波の中で限界を迎えています。
ベテランの「職人技」に依存した勘と経験のルール、エクセル複製や進捗シート転記作業といった非効率な業務は、検討ロスや型代リスクを増大させる原因となっています。
型代&検討ロスを最小化する現場主義の実践ノウハウ
1. 仕様決定のスピードアップと明確化
OEMプロジェクトを成功させるためには、発注元が「要求仕様・図面・品質基準」をできるだけ具体的に初期段階で伝えることが肝要です。
設計意図の背景や、絶対譲れない仕様と妥協点を区分して明文化し、5W1Hベースで資料化しておくことで、検討ロスの発生を最小限に抑えられます。
2. 3Dデータ&オンラインコミュニケーションの活用
製品設計のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進む現代では、2D図面だけでなく3DCADデータの受け渡しや、クラウド型の進捗共有も有効です。
仕様変更があった場合もCADバージョン履歴の管理やチャット・Web会議による瞬時のフィードバックで、意思疎通速度が飛躍的に向上します。
3. 型代コストの相見積/内訳明細の重視
サプライヤーから型代の見積を取る際は、単なる合計額だけでなく、材料費、加工費、設計費、調整費の内訳提示を求めましょう。
また、競合数社の見積(相見積)を取得し、相場観を把握した上で、「安かろう悪かろう」の落とし穴を避ける必要があります。
4. 試作評価のフィードバックとトライ&エラー体制
1回の試作で全て終わらせようとせず、「まずは機能検証用」「次に量産性評価用」という段階的な試作アプローチも有効です。
型修正のトライ&エラーを前提に「初期型の早期製作」と「想定外仕様の吸収」を試作時点で繰り返すことで、最終的な型代全体を抑えやすくなります。
5. バイヤーとサプライヤーの信頼関係の醸成
コストや納期だけでなく、「お客様の期待と実情」「現場担当者の本音」を率直に共有し合うことで、成果物の精度が高まります。
「ごまかし」や「決めつけ」を避け、現場感ある“本音トーク”ができる関係性は、検討ロス=双方の無駄な苦労の激減にも直結します。
まとめ:OEM生産の新地平へ
型代、検討ロスという古くて新しいコスト課題は、昭和のものづくり文化が色濃く残る日本の製造現場にとって、今もなお大きなテーマです。
しかし、デジタルツールや現場主義の徹底・仕様明確化など「新しい地平線」を丁寧に取り入れることで、コストの見える化と効率的なものづくりは十分に実現可能です。
バイヤーやサプライヤー、協力会社の垣根を越えて「本質的な価値共創」を生み出す先にこそ、日本の製造業が次世代に勝ち残る道があります。
皆様の現場それぞれで、今回のノウハウと視点が実践され、より良いOEMビジネスへと進化することを願っています。