タックルバックパックOEMで徒歩釣行快適度を上げるMOLLEモジュールシステム

タックルバックパックOEMで徒歩釣行快適度を上げるMOLLEモジュールシステム

はじめに：製造業視点で考える釣り用バックパックの進化

徒歩での釣行が主流となりつつある現代において、釣りの効率を大きく左右するのがタックルバックパックです。

私自身、大手製造業メーカーでの工場オペレーションや調達、生産管理に携わった経験から、一見アナログにも思える釣り業界においても製造・購買サイドの視点が求められる局面が多いことを痛感しています。

特にOEM（Original Equipment Manufacturer）での製品開発例は、ユーザー視点と製造サイドのニーズが交差する重要なテーマです。

今回は、今注目されている「MOLLE（モール）モジュールシステム」を活用したタックルバックパックのOEM開発にスポットを当てつつ、現場目線の実践的な観点から、その真価や業界動向を掘り下げていきます。

MOLLEモジュールシステムとは？製造業から見た設計思想

MOLLE（Modular Lightweight Load-carrying Equipment）とは、本来は軍用の装備品収納システムの一つです。

ナイロン製のテープ（ウェビング）をグリッド状に縫製することで、さまざまなポーチや装備品を自由自在に後付けできるという拡張性が最大の特徴です。

この設計思想は、実はアナログ思考が根強い製造業界にも強く刺さる要素を持っています。

なぜなら、MOLLEシステムは「最初から全てを決め打ちで設計しない」「ユーザーの多様なカスタム需要に後からでも柔軟に対応できる」というアーキテクチャを持ちます。

まさに現代のサプライチェーン改革やQCD（品質・コスト・納期）改善にも通じる柔軟性のある思想です。

設計段階から「応用可能性」を意識することは、後戻りコスト（リワーク費用）や購買リスクの最小化にも繋がるため、製造業バイヤーや開発担当者にとっても重要なポイントとなっています。

OEM開発でのメリット：バイヤーとサプライヤーの双方から見る利点

OEMでタックルバックパックを企画・開発する場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。

まず、調達バイヤーの視点で言えば、
・独自仕様のバックパックを低コストかつスピーディに市場投入できる
・既存工場の生産設備や技術を活用することで開発リードタイムを短縮できる
・将来的なラインナップ拡張や機能追加も、MOLLEモジュールシステムのおかげで容易
という点が挙げられます。

一方でサプライヤー側のメリットとしては、
・MOLLEという“グローバル標準インターフェース”があることで、部材共通化によるコスト低減が可能
・受注生産や追加生産の見通しも立てやすく、在庫リスクや生産調整リスクが軽減
・OEM供給によるブランド力強化や新規取引先開拓のチャンスが生まれる
といった点があります。

このようにMOLLEモジュールをベースにした製品設計は、バイヤーにもサプライヤーにも「拡がり性」「リスクヘッジ」「コスト最適化」といった現代の製造業に必須の価値をもたらします。

タックルバックパックOEMの機能要件と設計のポイント

では、実際にOEMでMOLLEシステム搭載のタックルバックパックを開発する場合、どのような要件・設計配慮が求められるのでしょうか。

以下、現場感覚から押さえるべきポイントを挙げます。

1. 人間工学的な背負いやすさ
歩き釣行では、10kmを超える長距離歩行も珍しくありません。

そのため、ショルダーベルトの当たり具合や荷重分散設計、背面パネルの通気性、ヒップベルトの有無など、使い手が本当に「快適」と感じる細かな工夫が必要不可欠です。

2. MOLLEインターフェースの拡張性
MOLLEポーチの追加設置だけでなく、水筒やロッドホルダー、レインウェアケースといった独自ギアの取り付けも想定した設計が重要です。

OEMでは国によって部材規格やミリ間隔が微妙に異なるため、グローバル共通部材を意識すると後々の調達購買や多拠点展開に有利です。

3. メンテナンス性・耐久性
野外利用が多いタックルバックパックは、泥・水・雨・紫外線といった厳しい条件でも耐える必要があります。

縫製ステッチやファスナー選定、防水・撥水加工の有無など、耐久性と修理性（リペアビリティ）を両立させた設計が求められます。

特にOEMでは品質保証体制をどう構築するか（初期不良率やクレーム対応含む）が大きな課題となります。

4. バイヤー目線のコスト管理
小ロット多品種への対応力がMOLLEモジュールの美点ですが、その分発注サイクルやロット未達による調達コスト増には注意が必要です。

BOM（部品構成表）やVAVE（価値分析）を活用し、「どの部材がコストドライバーか」「どのポーチ・部材をキーパーツとして共通化できるか」といった設計配慮が現場バイヤーには求められます。

昭和的アナログ思考と新しい潮流の狭間

タックルバックパック業界も、根強い昭和的アナログ商習慣が残る分野です。

昔ながらの問屋中心取引や、仕様書至上主義と現場裁量とのバランスで日々のオペレーションが回っている現実を無視することはできません。

特にOEMでは「設計図通りだが使い勝手が悪い」「現場現物を見て初めて分かる不具合」「QCD管理の優先順位がバイヤーとサプライヤーで異なる」など、アナログ的な壁が多く立ちはだかります。

しかし、MOLLEモジュールの思想を持った製品設計は、こうした昭和的な“ガチガチの縦割り”を打ち破る可能性を持っています。

ユーザーの使い方や現場要件に柔軟に対応できる「カスタマイズの余地」があるからこそ、双方の歩み寄りや新しい商習慣の創造にも繋げられるのです。

事例から学ぶ成功へのポイント：現場視点のOEM運用術

実際にMOLLEシステム搭載型タックルバックパックをOEM展開した現場での成功事例を紹介します。

ある釣具ブランドでは、従来の自社設計バックパックでは対応しきれなかった特殊用途（夜釣り・ライトゲーム・磯釣り用）に対し、MOLLEインターフェースを採用したOEM品を追加開発しました。

この際、現場バイヤー・生産管理・品質保証・サプライヤー窓口が一体となって
・現場のテスターによる早期サンプル評価
・サプライヤーとの同席による仕様すり合わせ
・量産時の工程FMEA（故障モード影響分析）実施
・クレームフィードバックのループ構築
といった昭和的な“泥臭さ”とデジタルの“論理性”を併用しながらプロジェクトを進行。

結果として初回ロットのリードタイム短縮と不具合件数激減を実現し、エンドユーザーからの高い評価・SNS拡散へと繋がりました。

この例に見られるように、現場視点で“目で見て触って使って検証する”姿勢と、最新システムの設計思想や管理ノウハウを掛け合わせることで、OEMの成功確率は大きく高まります。