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監視診断技術ポンプの故障モード振動騒音の発生要因予測低騒音設計振動騒音事例監視診断事例

目次
製造業が直面するポンプの振動騒音問題と監視診断技術の重要性
製造業の中核を担う工場では、ポンプは生産ラインの要ともいえる重要な設備です。
しかし、ポンプは運転中にさまざまな原因で振動や騒音が発生し、時に重大な故障を招くこともあります。
このような問題は、長年「しょうがないもの」と捉えられがちでしたが、近年ではこれらの現象を“見える化”し、監視・診断技術によって未然にトラブルを防ぐアプローチが主流になりつつあります。
本記事では、昭和から続くアナログな現場文化の中で、どのようにしてポンプの振動・騒音の問題と向き合い、低騒音設計や予知保全、監視診断事例を交えて解説します。
また、バイヤーやサプライヤーの立場から現場目線でのポイントも深く掘り下げます。
ポンプの故障モードと振動騒音の発生要因
ポンプの代表的な故障モード
ポンプには多くのタイプがありますが、共通して以下のような故障モードが発生します。
・軸受(ベアリング)の損傷
・インペラ(羽根車)の摩耗・破損
・ケーシング(外殻)のクラックや腐食
・シール部の劣化・漏洩
・カップリングの不良
これらの故障の多くは「振動」「異音(騒音)」「漏れ」といった形で初期兆候が現れます。
とりわけベアリングとカップリング、インペラは振動・騒音の主要な発生源です。
振動と騒音の主な発生要因
1. 機械的不良
・ミスアライメント(芯ずれ)
・アンバランス(重量バランス不良)
・ルースネス(締結ゆるみ)
2. 流体的要因
・キャビテーション(液体が気泡化し衝撃を発生)
・サージング(流量変動による安定運転不能)
3. 構造的原因
・基礎(ベース)の剛性不足
・パイプと接続部の不整合
これらは個別に発生するだけでなく、相互作用することで、より深刻な振動・騒音、そして最悪の場合は設備の停止や大事故に発展します。
ベテラン現場マンの“カンと経験”の限界
かつては「振動が増えてきた」「軸音が変だ」と声や手で感じて異常をキャッチするのが一般的でした。
しかし、現代の設備は大規模かつ無人化・自動化が進み、細かな兆候を見落としやすいのが実情です。
また、人による判定は主観的で、予防保全の精度も十分とはいえません。
このような背景から、現代の製造現場には、より客観的で定量的な“監視診断技術”が強く求められています。
ポンプの振動騒音を“見える化”する監視診断技術
AI・IoTを活用したトレンドモニタリング
近年はセンサ技術とIoTの進化により、振動・騒音をリアルタイムで遠隔監視するシステムが普及しています。
たとえば、軸受に加速度センサやマイクロフォンを取り付ければ、以下のデータが自動的に収集されます。
・ベアリング振動(加速度や速度、変位)
・全体騒音のdB値
・異常運転時のスペクトル分析(FFT)
これらのデータをAIが解析することで「どのモードで、どのくらい危険か」を可視化できます。
「何となく変」が「どの波形が、どれだけ逸脱したか」とデータで説明されることで、現場と保全部門・技術部門での情報共有や意思決定が格段に速く正確になります。
振動監視の具体的な効果
・突発停止や重大事故のリスク低減
・計画的に部品を交換でき、ランニングコストの最適化
・現場“ごと”にカスタマイズした管理指標(KPI)が設定可能
・保全記録をビッグデータ化し、次世代の設計・選定ノウハウに活用できる
低騒音設計、振動低減を実現する工夫とは
設計・選定時点での対策
バイヤーや設計者の立場からは、「現場で付き合いやすい」ポンプを選ぶことがまず重要です。
具体的には以下のポイントを重視しましょう。
・構造剛性の高いボディ(肉厚や材料選定)
・精密なバランス取り済みの軸・インペラ
・多層型あるいは特殊形状のシール
・低騒音型軸受(静音ベアリングや樹脂性インサートなど)
・基礎パッドとアンカーボルトで振動を確実に吸収/分散できる取り付け方法
また、サプライヤーは自社製品の「低騒音化実績」や「現場でのリプレイス事例」を、客観データ付きで訴求できると競争力が高まります。
運用面の工夫とアナログ現場への浸透
いくら設計・選定で精度を追求しても、据付や運転方法、日常メンテナンスが不適切では振動・騒音は必ず再発します。
たとえば、
・据付面のレベル出し(ミリ単位できちんと平坦に)
・配管の支持やフレキシブルジョイントによる振動伝播の防止
・オイル管理、グリースアップの最適タイミング
・定期的なトルク測定による増し締め徹底
これら現場での一手間が、振動騒音トラブルの大半を“未然防止”するカギなのです。
デジタル監視技術と並び、現場力の底上げこそ本質的な改善といえるでしょう。
現場目線の振動騒音実例と監視診断事例の紹介
ここで、実際の現場で体験した振動・騒音トラブル、そして監視診断技術が解決に導いた事例をご紹介します。
事例1:水処理工場でのインペラ損傷とAI診断
ある大型水処理工場では、複数基のポンプが同時に高振動を示し、そのうち1台から異常音が発生。
従来は「様子を見ながら稼働を続ける」しかなかったのですが、IoTセンサによる診断システムがすでに稼働していました。
振動波形の変化パターンを機械学習モデルで解析した結果、「インペラの一部摩耗およびベアリング摩耗によるリターンバランス不良」と診断。
異常兆候から故障までのトレンド線が明示されたことで、計画停止日にピンポイントで現場対応が可能となり、大規模なライン停止を回避できました。
事例2:食品工場でのアンバランス騒音と現場改善
食品向けの小型定量ポンプで「運転中のキュルキュル音と周期的な振動」が多発。
据付時の手順見直し、ベースプレートの剛性アップ、さらに配管サポート追加を実施したことで、騒音値が従来比65dB→58dBへと大幅に低減されました。
アナログな現場でしたが、端末での振動測定が浸透し、「数値」で成果を共有できたことが、現場従業員のモチベーション向上にもつながりました。
事例3:バイヤーによる新規サプライヤー選定
サプライヤー選定では、単にカタログ値だけでなく、「工場現場で監視診断技術を組み込んだ運用サポートができるか」を重視。
導入後はバイヤーとサプライヤー、メンテ担当者がクラウドを用いて振動トレンドを随時確認。
「異常時の即時対応体制」もセットで提供してくれたことで、トータルコストダウンと納入後の安心感が高まった好例です。
まとめ:現場とバイヤー・サプライヤーにとっての本質的メリット
昭和以来続く「音を聞け」「振動を感じろ」の精神論的な現場文化も、最新の監視診断技術によって“定量的管理”へと進化しています。
バイヤーは「製品単体の性能」だけでなく、サプライヤーの保守サポート体制や監視診断技術の導入有無を選定基準とすることで、現場の安定稼働をより強固に支えます。
サプライヤーにとっては、単なる「装置納入」にとどまらず、「お客様の困りごと解決型サービス(監視診断パッケージ)」提供が今後競争力の鍵となります。
現場目線の改善、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進は、決して一足飛びにはいきません。
だからこそ、アナログの「現場力」とデジタルの「データ活用」が融合した、人に優しい、トラブルに強い現場づくりをこれからも追求していきたいと思います。
製造業に関わる皆さんが、それぞれの立場で“現場の声”と“最先端技術”の両方をうまく活用し、より強い競争力と安全・安心の生産環境を築いていくことを心より願っています。
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