課長になってから現場改善より会議が増えた現実

はじめに：課長の仕事は「現場改善」ではなく「会議」なのか？

製造業で働く多くの人が一度は感じるジレンマ、それは「課長に昇進した途端、現場から遠ざかり、会議ばかりになってしまう」という現実です。
特に長年現場に身を置き、ものづくりの最前線で汗を流してきた方ほど、その違和感は強いでしょう。

本記事では、私自身が20年以上にわたり製造業現場で体験してきたこと、そして管理職としての実際の業務内容を踏まえ、
なぜ課長になると会議が増えるのか、
本来の「現場改善」への向き合い方を、
実践的な視点で深堀りします。

従来の業界慣習や、いまだ「昭和」のアナログ文化が根強く残る製造現場に向けて
これからの課長世代に求められる「新しい改善活動」とは何かを提案します。

課長の仕事が会議に埋もれる理由とは

なぜ会議が増えるのか？その構造的な背景

現場作業時代、仕事は「手を動かす」ことで成果を出せました。
しかし課長昇進後は、一気に「会議」の比重が増します。
主な理由は以下の通りです。

・意思決定や情報共有のハブとなるため
・部門間・拠点間調整が必須になるため
・経営方針の伝達と目標管理が主要業務となるため

特に製造業の場合、購買・生産・品質・保全・営業・経営企画など多岐にわたるセクションとの調整が日常的に発生します。
また大手メーカーほど、組織が縦割りかつ多層的であるため、「根回し」や「調整会議」が自然と増える構造になっています。

昭和スタイル「ハンコ会議」の温存──なぜ変われないのか

デジタル化が叫ばれる現代でも、いまだに「報告会」「承認会議」「進捗確認会」など、昭和から続くルーティンは根強く残っています。
目的が曖昧なまま“みんなで会議体だけは続ける”。
業界特有の「失敗を恐れる文化」「前例踏襲主義」も、これらを支える要因になっています。

課長になった今こそ現場改善の本質を見直すべき理由

これから「現場改善」はどこを目指すべきか

会議が増えたと嘆く現場出身の課長は多いですが、実は「見える世界」が広がっている証拠でもあります。
このポジションでしか見えない課題、
そして現場改善を全社レベルで進めるチャンスが、今まさに目の前にあります。

単なる「小集団活動」から本当のカイゼンへ

従来の現場改善は「QCサークル」「５Ｓ活動」など、現場主導の小集団によるカイゼンが中心でした。
課長になったあなたは、現場だけでなく、
・サプライヤー
・購買・調達部門
・エンジニアリングチーム
・上流の設計・開発部門
などとの“橋渡し役”を担うことができます。

システム・仕組みとして定着させること。
縦割りや部門障壁を超えて、全体最適の視点で動くこと。
これが本当の意味での「現場改善」であり、課長にしか見えない“新しい地平線”なのです。

製造現場のリアル課題：変われない壁と、その突破策

「現場 VS 管理」とならないために

会議中心の生活になった課長が、現場から「お偉いさん」「机上の空論」と距離を置かれる現象もよくあります。
これは、お互いの立場や論点が見えていないことから生じるものです。

ベテラン現場リーダーやオペレーターは、目の前の不具合や作業効率に常にアンテナを張っています。
一方、課長になると全体最適や収益性、納期遵守、品質保証、コンプライアンスと、
守るべき範囲が一気に広がります。

このギャップを埋めるために、
・繁忙期やトラブル時は現場の最前線に身を置く
・現場リーダーミーティングを自主的に主催する
・「机上の調整」ではなく「現場と共に改善点を洗い出す」フットワークを見せる

こうした地道なアクションが、現場と管理の溝を埋め、本当の現場改善を生み出します。

アナログ文化の中で生き残るデジタル活用術

いまだ紙の帳票、FAX、手渡し伝達など“昭和の習慣”が息づく現場。
ですが、それらを一気に変えることは容易ではありません。

ポイントは「完璧なデジタル化」ではなく、「小さなDX」でうまく仕掛けることです。
たとえば
・EXCELによる帳票の在庫集計
・写真や動画を使った不具合現物共有
・簡単なRPA自動化で伝票入力の省力化
など、現場の負担を減らす「痛みを伴わない改善」から始めるのがコツです。

サプライヤー＆バイヤー視点を“現場改善”にどう活かすか

サプライヤーにとっての課長の価値

サプライヤーからすれば、課長以上は“現場の声と経営意向の両方を知るキーパーソン”となります。
安易なコストダウンや無理な短納期要請で現場を混乱させるのではなく、
「どうすればサプライヤーが本気で力を発揮できるか？」
「一緒に改善を進めるパートナーになれるか？」
こうした視点で会話できる課長は、業界でも一目置かれる存在です。

バイヤーなら理解しておきたい現場課題

購買・調達サイドでバイヤーを目指す人も、“現場改善”に無関心ではいけません。
納入品質不良や遅れ、伝達ミスの多くは、現場のリアルな声から生じることが殆どです。
現場の困りごとやサプライヤーの事情・制約を知ったうえで仕組みを整えることが、最終的にコスト競争力やリスク低減につながります。

課長から「変革リーダー」への成長法

「会議屋さん」に終わらないために必要な３つの習慣

1. 毎朝・毎晩10分だけ現場パトロールを行う
日々の変化に目を光らせ、些細なボトルネックも自分の目で掴む習慣が大切です。

2. 会議の議題・目的・終了後のアクションプランを明確化する
「ダラダラ会議」を排し、「決まったことを即実行」できる会議ファシリテーション力を鍛えましょう。

3. 他拠点・他社の事例を積極的に学び、現場に持ち込む
業界の“思い込みバイアス”を打破するには、外からの新風を取り入れる姿勢がカギです。

改善の主役は現場・推進の主役は課長

現場改善のアイデアは、やはり最前線の声からしか生まれません。
しかし、その改善が
「部門間を超えた全社最適」
「仕組みとして定着する」
「サプライヤー・バイヤー巻き込んで継続性を持つ」
ように推進できるのは、現場経験を持つ課長世代だけです。

まとめ：課長は現場改善の“新しい地平線”を切り拓け

会議が“悪”なのではなく、会議を「現場改善のための情報収集・意思決定の場」として使いこなすことが、これからの製造現場リーダーには求められています。
昭和的なアナログ文化や、現場と管理の距離感に悩む課長こそが
・業界の壁を壊し
・現場・バイヤー・サプライヤーの視点をつなぎ
・真の現場改善をリードする
ポジションにいます。

バイヤーやサプライヤーを目指す方も、課長層の現実を知り、
“今、現場で何が求められているか”
“どこに課題や突破口があるのか”
ぜひ本記事を参考に、さらなる飛躍を目指してください。

会議ばかりで悩む課長の皆さん、あなたの新しい一歩が、製造業界の明日を変えていきます。