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投稿日:2026年1月21日

RPA本数が増えるほど管理工数が膨らむ構造

はじめに:RPA導入による業務効率化の光と影

製造業の現場では、生産効率や品質向上のためにさまざまな自動化技術の導入が進められています。

その中でも、RPA(Robotic Process Automation)は、単純な定型業務の自動化を通して人の工数削減やミス防止、業務スピードの向上に大きな効果を発揮しています。

調達・購買部門をはじめ、生産管理、品質管理など、製造業の根幹を担う部門で「RPAが加速度的に増えていく現象」は、まさに現場の“昭和的アナログ精神”と“令和のデジタル化”のせめぎ合いの象徴といえるでしょう。

しかし、RPAの本数が増えれば増えるほど、皮肉にも「管理工数」が膨らんでいくという構造的な課題が見え隠れし始めています。

本記事では、RPA導入による実際の現場の変化や、その構造的課題、そして本数増加に潜む落とし穴について、20年以上の現場・管理職経験をもとに詳しく解説します。

RPAの普及背景と製造業現場のリアル

製造業におけるRPA導入の経緯

日本の製造業では人手不足やコスト競争の激化、グローバル化、そしてレガシーシステムといった課題が山積しています。

“働き方改革”の号令も追い風となり、RPAは従来「人がやるしかなかった事務作業や情報処理」を肩代わりする存在として現場に浸透してきました。

受発注処理の自動化、納期調整や在庫管理の自動通知、品質データの定型レポーティングなど、多様な場面でRPAは活躍しています。

特に調達・購買や生産管理部署では、複数システムからの情報収集や、煩雑なExcel業務の自動化など、部分的な“デジタルアシスト”の導入が一気に増えた時代です。

なぜ本数が増えるのか?現場の心理

現場主導で“できるところから小さく始めてみる”のが、日本の製造業に多いRPAの導入アプローチです。

属人的なノウハウや手書きの伝票処理、各担当が「自分の作業をラクにしたい」というニーズから、徐々に自作RPAや外部サービス導入が広がります。

結果、現場担当者ごと・職場ごとに「一点もの」のRPAが次々に誕生し、業務効率は目に見えて改善されます。

しかし、気がつけばRPAの本数は10本、20本、30本と増えていき、多忙化する現場マネージャーや情報システム部門を悩ませる要因となるのです。

RPAの本数が増えるほど膨らむ管理工数の実態

管理工数増大の原因を読み解く

RPAは「作って終わり」ではありません。

本数が増えてくると、以下のような管理業務が発生します。

– 稼働状況・エラー監視
– バージョン管理と更新(修正対応)
– 操作履歴やログの保存・点検
– セキュリティ対応
– RPA間の連携やインターフェース整理
– 利用者・管理者の権限設定
– シナリオ・業務変更時の再設計
– ライセンスなどのコストマネジメント

特に、昭和的なアナログ現場ではExcelベースや半手動のRPA管理が主流で、「どのシナリオがどこで動いているのか」「エラーが出ているのか把握できない」といった、可視化不足・情報混乱が頻発します。

本数が増えれば、それぞれのRPAごとにマニュアルや変更履歴も必要となり、ブラックボックス化しやすくなります。

属人化と運用負担の増加

現場発のRPAは担当者個人に依存しがちです。

「○○さんしか分からない」「実は担当が退職してしまい誰もメンテナンスできない」というケースは、調達購買や生産現場では少なくありません。

たとえば、町工場の部品調達システムへの自動登録RPAが、「Aさん専用PCのデスクトップ」で動いている場合など、担当者不在やPC故障が発生すると瞬時に業務停止リスクとなります。

この“属人化リスク”は本数が増えるほど顕在化します。

各現場が勝手にRPAを作って運用していると、標準化どころか「野良RPA」「ゾンビRPA」と呼ばれる放置ロボが増殖し、運用負担が雪だるま式に膨らんでいきます。

上司・管理者の苦しみ:統制できない現実

「RPAを増やして現場をラクにしろ」と現場から上がる声に応える一方、工場長やシステム部門のマネージャーは「統制できない」現実に直面します。

管理台帳や運用マニュアルの整備、定期的な監査やパッチ適用、監視体制の仕組み化などが必要ですが、現実には“管理系の人員や工数”には予算がつかないことがほとんどです。

放置の結果、「どこかで動いていた古いRPAが、システム切り替えやプロセス改革の足を引っ張る」など、全体最適を阻害する要因となります。

RPA増殖から見る業界風潮:なぜアナログから抜け出せないのか

部分最適と全体最適のギャップ

現場が部分最適に走る背景には、根深い“縦割り文化”や“自己防衛意識”があります。

・まずはできることから効率化したい
・「自分だけつらい思いをしたくない」
・“前例踏襲”への圧力と“変化のリスク回避”

過去の品質問題・事故などが厳しく問われる業界だけに、「今動いているシステムに勝手に手を入れたくない」「新しい仕組みへの変更は上に理解を取れない」という抵抗が横たわっています。

RPAは“小さく早く回せる”のが魅力ですが、その裏に「全体を整理し、持続可能にする眼」が不足しがちです。

業界特有のレガシー系課題

昭和世代の技術者が今も現役で活躍する現場では、紙書類、手書き伝票、現物現場で確認する“見える化”への志向が根強く残っています。

デジタル化のプレッシャーの一方、現場は「つぎはぎの自動化」「暫定運用」で乗り切る習性が強いです。

また、中小サプライヤーの多い業界構造もあいまって、現場ごと・現法ごとに異なるRPA仕様や手法が乱立し、“標準化”が後回しになります。

本数増加の先に待つ「デジタル遅延」のリスク

RPAの本数が無制限に増加することで、「メンテナンスできない野良RPA」「現場でブラックボックス化した業務フロー」「IT部門も把握できない拡散」が慢性化します。

こうした状態で全社的な業務改革や新IT基盤の導入、ERP刷新などに着手しようとすると、“サイロ化したRPAの山”が障壁になります。

最悪の場合、「RPA依存で本来の業務プロセスが複雑化・形骸化し、デジタル化どころか非効率の温床を自ら生み出している」矛盾状態となりかねません。

どうすればいい?管理工数を膨らませないための打ち手

RPAガバナンスの枠組みを作る

RPA選定・開発・運用・棚卸しを一元化するルールや台帳、標準手順の作成が不可欠です。

– RPA管理責任者を明確にする
– シナリオ登録・更新のフローを定める
– エラー・稼働状況の集約ダッシュボードを整備する
– 定期的な“棚卸し”や“利用停止措置”をルール化する

このように、IT部門や現場間で情報共有・ノウハウ交換を促進することで、“なんとなく動かし始めたRPA”の無軌道な肥大化を抑制できます。

現場BPR(業務プロセスの見直し)とRPAをセットで進める

「業務のムダ」と「RPA導入」を切り離さず、本来あるべき業務プロセスの再設計(BPR)とRPAの整備を同期させることが重要です。

– RPA化の前に本当に不要な業務は廃止する
– RPAによる“つぎはぎ自動化”ではなく、標準化+共通化して管理負担を低減
– RPA本数を減らし、統合することで管理コストを抑える

「とりあえずRPAで自動化」から「全体最適・シンプル化」の視点への転換が、今後の業界でますます重要になるでしょう。

教育と属人化リスク対策

RPAを現場メンバー全員が“扱えるブラックボックス化防止”のためには、ナレッジ共有・教育・トラブル対応の標準マニュアル化が抜本策となります。

– RPAの設計思想や運用ノウハウを文書化し、全員で閲覧できる仕組みを作る
– 属人化を防ぐシフト運用や、ペア体制の導入
– 定期的なRPA“健康診断”(シナリオの見直し・更新・統合・廃止)

これらは、現場発の地道な積み重ねにほかなりませんが、「RPAの管理工数膨張スパイラル」から脱却する鍵となります。

まとめ:RPAは管理してこそ活きる武器

RPAは“なんでも楽になる魔法”ではありません。

むしろ本数や種類が無計画に増殖すれば管理工数が爆発し、思わぬリスクをもたらします。

「作って終わり」ではなく、「全社最適を意識した管理・棚卸しこそが最大の生産性向上」と気づき、自社の現場文化やリソース実態に即した運用体制を構築することが、製造業でRPAを持続的に活かすための本質です。

たとえ昭和的価値観が色濃く残る業界動向であっても、「部分最適の罠」にはまり続けていては、真のデジタル変革は実現できません。

本記事が、製造業に携わる皆さん—とりわけ、現場発の変革にチャレンジし続ける方の、一歩前進のヒントとなれば幸いです。

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