投稿日:2025年10月21日

カフェが自社オリジナルラテカップを作るための成形とロゴ焼き付け工程

カフェのブランディングに欠かせないオリジナルラテカップ

カフェの雰囲気やお客様体験を高める上で、オリジナルのラテカップは重要なアイテムです。
単なる容器でなく、ブランドイメージや店舗の個性を伝えるツールとして、こだわりを持って作られています。

オリジナルラテカップの開発には、カフェ側の要望とサプライヤー(製造業者)の高度な技術が融合します。
今回は、実際の現場で培った知見をもとに、自社オリジナルラテカップを作るための成形とロゴ焼き付け工程について、具体的かつ実践的な視点で解説します。

ラテカップ製作のプロセスとその難しさ

一般的にカフェオーナーが「自社のオリジナルカップを作りたい」と考える際、多くの工程や選択肢があることを知りません。
また、昭和的なアナログ業界の流れが依然として色濃く残る陶磁器業界ですが、近年はデジタル化や自動化も進みつつあります。

1. 企画段階のポイント:バイヤーとサプライヤーの歩み寄り

カップ製造の一歩目は「どんなカップにしたいか」を明確化する企画です。

サプライヤーは「そんな形はコストが高い」「焼き付けられるロゴの色数には制約がある」など技術目線で助言します。
逆にバイヤー(カフェ運営側)は唯一無二の特徴や顧客体験を優先したがります。

これらのギャップを埋めるのが「現場を知る」ことです。
単なる価格交渉ではなく、工場での成形方法の難易度や歩留まり率、焼き付け工程で発生するロスなど、両者がリアルに理解しながら、落としどころを探る必要があります。

2. 成形工程:アナログと自動化の狭間で

オリジナルラテカップの大半は、陶磁器製です。
成形方法にはろくろ成形、型打ち、プレス成形、圧力鋳込など複数のプロセスがあります。

量産品でなくオリジナリティを追求する場合、少量多品種に対応できる圧力鋳込法や手作業の型成形が多いです。

– ろくろ成形:職人による手仕事が魅力ですが、大量生産には向きません。
– 圧力鋳込:現代の工場では、自動機による圧力鋳込が主流です。
しかし型代やセッティング費用が必要になるため、バイヤー側は最低発注ロットやコストアップに留意する必要があります。

この段階で最もトラブルになるのが「サンプル」と「量産品のギャップ」です。
サンプル自体は一つずつ職人技で仕上げることが可能でも、量産移行時には歩留まりや寸法ズレ、形状のバラつきが現れます。

「サンプルOK→工場生産で大きな誤差が出た」こうした現象は、今でも多くの現場で発生しています。
事前に、実際の量産現場を見学し、設備の古さ、人員体制(熟練工と新人の比率)なども確認しておきましょう。

3. 素地と釉薬:仕上がりに直結する選択肢

カップの「素地」材料の選定も重要です。

– 磁器:白さと滑らかさが特徴。ロゴの発色も鮮やかです。
– 陶器:ナチュラルな風合いで、クラフト感を訴求できます。
– 半磁器:両者の中間で、コストと品質のバランスが取れます。

釉薬をかけることで、表面の光沢・色合いが変化します。
この時、釉薬の種類や厚みが、最終のロゴ焼き付け工程にも影響を及ぼします。
(ツルツルすぎる面は焼き付けインクが滑滑し、ざらざらすぎるとロゴがにじむ順応性があります。)

バイヤーとしては、ブランドイメージ・コスト・機能性(電子レンジ可、耐熱性など)も考慮しましょう。

ロゴ焼き付け工程の実際

カフェオリジナルカップの魅力を最大化するのは、やはりロゴや店名などのデザイン部分です。
このステップにもさまざまな技術と現場ノウハウが必要です。

1. 転写紙による「焼き付け」技法

ラテカップのロゴ焼き付けで一般的なのは、転写紙方式です。

– デザインをシート状の転写紙に印刷します。
– 職人または自動機が一つ一つカップに貼付けます。
– 800~900度前後の窯で焼き付けます(デカール工程)。

この段階で起きやすい課題は、
– デザインのズレ(職人の手技頼りの場合が多い)
– 焼成中の色ムラ・剥がれ
– 転写紙インクの化学変化(想定と違う色になる)

です。

近年は転写紙自体の品質も上がっていますが、古い工場やアナログ工程では「熟練工の勘」に頼る部分も多いのが実態です。
焼き上がり検査を十分に行い、不良率や検査基準をサプライヤーと科学的に取り決めましょう。

2. シルク印刷・パッド印刷・レーザー印刷の新技術

デザインや数量、ロゴ色数によっては、転写紙ではなくシルク印刷やパッド印刷、レーザー刻印など新しい技術も活用できます。

– シルク印刷:1色あたりのコストが下がりますが、多色は不得意です。
– パッド印刷:曲面にもインク転写がしやすく、小ロットに向いています。
– レーザー印刷:焼き付け不要で、摩耗しにくいロゴを刻めます。

こだわりのデザインや店舗ごとに複数デザインを持ちたい場合は、このような工法も検討すると良いでしょう。

3. 昭和のアナログと令和の自動化の共生

陶磁器業界では現在も「職人の手作業」が根強く残っています。
その一方、自動転写機やデジタルプリンターの導入も進みつつあり、生産効率やロット、納期にも大きな影響があります。

バイヤー(カフェ側)が気をつけるべきは「最新の設備=高品質・短納期」ではなく、あくまで「自社カップと自社ブランドに最適なバランス」をサプライヤーと共に見極めることです。
ロゴデザインの“こだわり”が、歩留まり低下や納期遅延、コスト増となる場合も多いため、現場のリアルを共有して意思決定する必要があります。

実際の現場で失敗しないためのポイント

現場目線で、オリジナルラテカップをつくる際の注意点やヒントをまとめます。

1. 最低ロット・サンプル費用・追加発注のしやすさを明確に

カフェ経営規模によっては大量発注が難しいケースも多いです。
発注ロット数やサンプル製作費の取り決め、追加発注時の可否やコストも事前協議しておきましょう。

2. コミュニケーションは妥協ラインを明王に

オリジナリティを重視するあまり、過度な特殊形状や色数にこだわると、技術的・コスト的な障壁が増えます。
譲れないポイントと妥協できる部分を整理し、サプライヤーと率直に意見交換しましょう。

3. 現場の“歩留まり”と検査基準を共有

製造工程ごとのロス率や検品基準は、一般消費財より厳しいこともあります。
ノウハウが古いサプライヤーの場合、「現場で発生した不良品はなかったことに」されるケースもいまだに存在します(昭和的慣習)。
現代的な品質管理シートや“見える化”の仕組みも必要です。

4. 物流・納期の現実もしっかり把握

陶磁器は割れ物ゆえに、物流や梱包も慎重さが求められます。
加えて、焼成工程や乾燥工程で想定以上のリードタイムがかかるのが業界の特徴です。
納期には常に余裕を持ち、繁忙期や大型連休前の生産には特に注意が必要です。

デジタルとアナログの良いとこ取りが“現代の勝ち筋”

業界全体として、昭和的なアナログ工程に依存し続けてきた陶磁器業界ですが、近年はデジタル化や生産管理ツールの導入が急速に進んでいます。
これにより、
– 少量多品種(マスカスタマイゼーション)が現実的に
– 注文から納品・検収までが“見える化”されやすくなり
– バイヤー(発注側)が生産状況を把握しやすくなってきています

カフェオーナーとしては、こうした新しい取り組みに積極的なサプライヤーとパートナーシップを築くことで、想像以上のクオリティとコストバランス、そしてブランディング効果が得られるでしょう。

まとめ:理想のラテカップと長く付き合うために

自社オリジナルラテカップの製作は、単なるモノづくりを超えた「ブランド体験」の創造です。

業界慣習の壁や、生産現場のリアルな課題を理解しつつ、サプライヤーとの協働で理想に近いカップを作り上げる。
これこそが今後の“ブランドづくり”の本質となるでしょう。

発注側と製造現場、どちらにも敬意を持ち、最先端の技術と昭和の職人技、この両輪を活かすことが成功の近道です。

これからオリジナルラテカップ作りに挑戦するカフェ経営者や、調達・購買のバイヤー志望者、そしてサプライヤーの皆さま。
ぜひ現場感と未来志向の両方で“納得のいく一杯”をカタチにしてください。

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