投稿日:2025年9月16日

ブランド価値を高める消耗品OEM商品のネーミング戦略

はじめに ― 製造業とOEM消耗品の現状

製造業に携わる方なら、日々の現場で「消耗品」と聞いてピンとくるものが多いはずです。
工具、パッキン、フィルター、潤滑油…そのほとんどは現場になくてはならない存在ですが、昔ながらの感覚では「消耗品=コモディティ(代替性が高く、差別化しにくい商品)」というイメージが根強く残っています。

特にOEM(Original Equipment Manufacturer)品は、ブランドの主役というより“黒子”になりやすく、名前やラベルすら気にされず取引されることも少なくありません。
しかし、コスト削減・品質安定化・サプライチェーン再構築が叫ばれる現代、こうした「黒子消耗品」が実は企業のブランド価値・現場の付加価値向上に直結する重要な役割を持ち始めています。

本記事では、消耗品OEM商品のネーミングに着目し、ブランド力を高めるための戦略と、バイヤー・サプライヤー双方の視点で考える実践的なヒントを徹底的に掘り下げます。

なぜ今「消耗品のネーミング」が重要なのか

差別化困難なカテゴリでブランド価値すら変わる

昭和の大量生産時代、消耗品は「安く、早く、大量に」調達することが最優先でした。
現場では「メーカー純正か互換品か」の二択が主でしたが、今や資材調達力・現場力・顧客満足向上の観点で多様な品質・価格帯・供給ルートの商品が選ばれています。

しかし、多くのOEM消耗品は「OEM品〇〇」「互換△△」といった曖昧な呼称しかなく、製品の特徴や品質訴求、ひいては企業のブランド力を高める材料としては活用されていません。
これは大きな機会損失です。

ネーミングひとつで「現場の選択基準」が変わる

最近になり、「材料や部品も他社と同じものでは意味がない!」という現場志向が強まってきました。
単なる価格比較のための“材番”ではなく、現場の問題意識や課題解決の文脈に訴求できる“機能的・価値的な新ネーミング”が求められます。

たとえば、《長寿命型》《現場向け耐油》など分かりやすく特徴を打ち出した商品名に変えるだけで、作業者やバイヤーの印象や調達基準が大きく変わります。

ネーミングは消耗品OEM品が現場で「ただ使うもの」から「選ばれ、評価されるブランド資産」に昇華する第一歩なのです。

実践! 消耗品OEM商品でブランド価値を上げるネーミング法

1. 現場力=共感力で刺さるネーミングを生み出す

ネーミング開発の最初の一歩は“現場の声”に耳を傾けることです。

「工具の交換サイクルを減らしたい」
「不良品をできるだけ現場で見逃したくない」
「交換ミスによるトラブルを減らしたい」

こうした現場の困りごとを徹底的にヒアリングし、解決策を織り込んだキーワードを商品名に活かします。

例)
・「超タフ・エンドレスベルト」:耐久性を超強調
・「見える!チリ取りフィルター」:メンテ性訴求
・「1秒リリース・グリップ」:作業効率アップをアピール

2. 品質や製品特性をストレートに伝える

消耗品は互換品との比較で「安心感」「信頼度」が問われます。
そのため、スペックや認証を明示したネーミングが有効です。

たとえば、“食品工場対応”や“医療用規格適合”など、明確な品質基準が伝わるキーワードを加えるだけで、必要な現場に選択されやすくなります。

例)
・「HACCP適合クリーンパッキン」
・「耐薬品グレード・PTFEガスケット」

価格差以上の説得力を持たせることが可能です。

3. サプライヤーの“想い”を商品名に込める

OEM消耗品は特に“特定業界特化型”や“専用用途型”に進化することで、コモディティから脱却できます。
そこに「どの業種のどんな現場のために開発されたか」の想いを伝えるネーミングが活きます。

例)
・「電装盤プロ用絶縁手袋」:業種・職種名をダイレクトに挿入
・「暑さバスター・マスク」:現場の悩みそのままをモチーフに

これにより、ユーザーの心に強いフックを残すブランド化が可能になります。

昭和の常識から脱却!現場発・ラテラルシンキングで攻める

「コモノのままでいいのか?」現場発想が未来を変える

消耗品の多くは「どれでも良い」と思われがちですが、実はその小さな差がライン止めや品質ロス、膨大な現場工数増と直結します。
昭和のアナログ的「安ければ良し」から、IT・データ活用時代には「現場課題を深く捉えた提案型ネーミング」が不可欠です。

たとえば、
・AI点検用の「自己診断フィルター」
・IoT連動「ライフサイクル予測バッテリー」

など、単なる枠組みから逸脱し、現場需要と一歩先んじた価値訴求が重要です。

調達現場・バイヤー目線の転換を誘発するネーミング

バイヤーが消耗品の見積や提案依頼をかける際、必ず参考にするのが「商品名」と「説明書き」です。
差が見えないと値引き合戦が激化しますが、的確な用途訴求や現場課題対応型のネーミングは、
「この会社は現場のことを本気で考えている」と高評価されやすく、調達基準や発注ルートの選定基準にすらなり得ます。

さらに、サプライヤーの立場でバイヤーの目線を分析すれば、“バイヤーが上層部に提案しやすいネーミング” “現場への説明・理解浸透のしやすさ”の観点も極めて重要です。

「消耗品×ブランド戦略」の実践事例 ― 成功企業の共通点

事例1:長期ユーザー維持に成功した現場直結“ニックネーム戦略”

某化学プラントでは、単なる手袋OEM商品を「フルガード・耐蝕PRO」と命名し、
従来の「pH対応手袋」という専門性から、「どの現場員も理解できる言葉」に改めました。

結果、現場での誤用・誤発注が激減し、バイヤーも購買説明資料として活用しやすくなり、
顧客満足度&サプライヤー評価が格段にアップしました。

事例2:「見える化ワード」投入で注文リピート率30%増

機械部品メーカーでは、「高耐久潤滑油(メーカー型番:××123)」を「見える化オイル・PRO」とし、ラベルにも「使用寿命比較グラフ」「劣化診断QR」を追加。
営業活動でも“見える化”を切り口にPRした結果、大手工場の標準品として採用されました。

事例3:DX・SDGsワードと組み合わせて新価値創造

近年注力される「省力化」「カーボンニュートラル」分野では、
・「省電力24/7ラインベルト」
・「CO2レスパッケージ」
のような“潮流ワード”と、既存消耗品名の掛け合わせで新たなブランドポジション確立に成功しています。

ブランド価値を高める消耗品ネーミングの具体的手順

1. ターゲットと現場課題の徹底ヒアリング

・導入先現場への定性インタビュー
・購買担当・現場作業者・上司それぞれの課題共有
・既存商品名の「わかりにくさ・選びにくさ」抽出

2. 製品特徴×顧客価値=ネーミングの骨格化

・「何が一番の強みか」「他社との違いはなにか」を明確化
・用途、スペック、最新トレンドワードを整理し、組み合わせ検討

3. 社内外の目線を活かした評価・フィードバック

・現場試験やモニター評価で伝わりやすさ確認
・サプライヤーからバイヤー、バイヤーからエンドユーザーまでの説明力も検証

4. ネーミングの育成・広報戦略策定

・Webやカタログ、提案書にストーリー性を持って展開
・商品タグやパッケージも工夫し、“口伝・口コミ”を誘発

まとめ ― 変化の時代だからこそブランド価値を磨く

消耗品OEM商品のネーミングは、単なる“名札”ではありません。
現場の困りごとや時代のニーズを深く掘り下げ、ブランド価値として昇華するための強力な武器です。

これからは「どの商品も似たり寄ったり」ではなく、
「現場志向の商品価値を、誰もが理解でき、共感しやすい言葉で伝える」ことがサプライヤーや現場バイヤーの差別化ポイントになります。

昭和の価値観から一歩抜け出し、本質的な現場課題から導いたネーミングで、あなたのOEM商品やサプライヤー提案力を“選ばれるブランド”に変えていきましょう。

製造業の発展は、こうした一つひとつの“現場目線革新”から始まります。

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