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レジリエンス分野における新たなソリューション開発パートナーシップ

レジリエンス分野における新たなソリューション開発パートナーシップ
はじめに:今、なぜレジリエンスなのか
2020年代に入り、製造業を取り巻く環境は大きく様変わりしました。
国際情勢の緊迫、サプライチェーンの分断、未曽有の自然災害、新型感染症の流行、そして急速なデジタル化の波。
これほどまでに「変化」や「リスク」を強く意識させられた時代はかつてありません。
そんな中、製造業においても「レジリエンス(強靭性)」というキーワードが注目を集めています。
単なる現場力や従来の品質管理だけでは、急激なビジネス環境の変化に十分対応できないという危機感が、昭和から続くアナログな現場にも確実に浸透し始めているのです。
この記事では、20年以上現場と経営の最前線に携わってきた視点から、今求められるレジリエンス強化の実践策と、そのための“新たなパートナーシップ”のあり方について深く掘り下げていきます。
「レジリエンス強化」とは何か?
製造業でレジリエンス強化というと、多くの場合「災害に強い工場づくり」「部品サプライチェーンの多重化」などが連想されます。
しかし本質はもっと広く、そして深いものです。
“変化”や“障害”、予測不能な“危機”が訪れたとき、被害を最小限に抑え、できるだけ早く通常の生産活動や供給活動へ戻すこと。
そして、危機からの教訓を未来の競争力へと転換すること。
これが真のレジリエンスです。
つまりレジリエンスは、単なるリスク分散やBCP(事業継続計画)対策に留まらず、製造現場そのものの「アジリティ(機敏性)」や「学習力」と密接不可分な関係にあります。
昭和型アナログ現場が抱える課題
多くの日本メーカーが抱える構造的な課題の一つが、「昭和型」アナログ業務の色濃く残る現場運営です。
・熟練者頼みの属人的なノウハウ伝承
・紙ベースおよび手作業中心のデータ管理
・長年取引ある仕入先とのなあなあ運用
・改善活動の打ち止め感/イノベーション不足
このような「目の前の生産性」「今月の出荷計画」を優先しがちな現場では、未曾有の災害や世界的な供給ショックに柔軟に対応するのは困難です。
多様な危機への柔軟性、変化への迅速な現場展開、データドリブンな判断…これこそが“昭和からの脱却”として今、求められています。
新たなソリューション開発パートナーシップの意義と潮流
では、どうすれば真のレジリエンス強化を実現できるのでしょうか?
答えは、自社単独ではなく「新たなパートナーシップ」にこそあります。
かつてのような親子関係や系列色の強いサプライチェーンではなく、業際連携や共創・価値創造のための横断型アライアンス。
バイヤーもサプライヤーも枠を超えた「共進化」志向の関係づくりが、今後重要度を増していくのです。
具体的には以下のようなソリューション開発パートナーシップが各業界で進みつつあります。
・デジタル技術ベンダー×部品メーカーによるサプライチェーン見える化ソリューションの共創
・中小サプライヤー連携による相互補完型のBCP構築
・現場発DX人材×ITベンダー×コンサルによる業務フロー再設計
・スマート工場プラットフォーム提供企業と現場熟練者による現実的なIoT活用法の探求
これらはすべて、従来の「言われた通り作る」「発注されたものを納める」に留まらない、共創型・ソリューション提案型パートナーシップの発露です。
調達購買部門が果たす新たな役割
従来、調達購買の役割は「安定調達」と「コスト低減」が主でした。
しかし今、製造業のレジリエンス強化局面において、購買バイヤーの役割は劇的にシフトしています。
バイヤーは、
・リスク分散戦略の主導者
・新規サプライヤー開拓と既存サプライヤーの最適配置
・サプライチェーン・イノベーションの推進力
・共創パートナー探索やコネクションハブ
といった多面的なミッションを担うようになっています。
特に、
・海外情勢の急変→複数国からの調達ルート開拓
・サプライヤー倒産や供給ストップ→早期検知&リカバリー策の準備
・素材・技術の進化→ベンダーとの共同開発による自社競争力強化
といった実務対応力が、今ほど問われている時代はありません。
サプライヤーの立場から見た「共創型バイヤー」との向き合い方
一方で、サプライヤー側にも従来型「注文待ち」「価格競争一辺倒」からの脱却が強く求められています。
レジリエンス時代のサプライヤーの在り方とは、
・自社が持つ独自技術や現場知恵の積極提案
・類似企業との連携による“競合協業”
・バイヤー担当者への最新技術・現場知識の情報提供
・危機発生時の柔軟な増産や復旧体制
など、「共に価値を高める姿勢」がますます重視されます。
例えば、海外の調達ルートが一部停止した際、自社工場の稼働調整や緊急輸送ルートの情報提供まで踏み込む。
あるいは、部材不足リスクを先取りし、代用可能な材料提案や共同開発体制を自ら申し込む。
こうした「もう一歩踏み込んだ動き」がバイヤーの信頼を勝ち取ります。
業界を横断する連携の最新事例
自動車業界や電機業界では、すでに先進的なパートナーシップによりレジリエンス向上が実現しつつあります。
例えば、
・大手自動車OEMとサプライヤー群による災害リスク把握AIの共同開発
・半導体メーカーと電子部品サプライヤーによる在庫リアルタイム化プロジェクト
・日欧米連携によるロジスティクス拠点ネットワークの強化
・中小部品企業の連合体による人的リソース・機械共同利用体制
このような枠を超えたオープンイノベーション事例が、今後ますます増えるでしょう。
国内外のベストプラクティスを積極的にキャッチアップし、自社現場の置かれた状況とすり合わせることが肝要です。
ラテラルシンキングで新地平を拓こう
今までの延長線上、つまり「昨年のやり方の焼き直し」「形式的なリスク管理書類作成」では、もはや生き残れません。
新たな地平線を拓くためには、“ラテラルシンキング”(水平思考)の導入が有効です。
例えば、
・他業界のレジリエンス対応を自社製造現場にどう応用できるか?
・デジタル部品管理の強いIT企業とどんな現場課題解決を共創できるか?
・たとえば建設業や食品流通業との横断的なアライアンス構築で何を学べるか?
といった、「今まで考えてもみなかった切り口」から新しいソリューションを生み出す力が求められます。
現場の知見、管理職としての経験値、取引先ネットワーク。
こうした自分の武器・資産をラテラルに組み合わせ直すことで、製造業の次世代パートナーシップが生まれます。
まとめ:現場から“次世代製造業”を創り出す鍵
「レジリエンス分野における新たなソリューション開発パートナーシップ」は、製造業の今後10年20年にわたり、事業継続性と競争優位のカギになるテーマです。
従来型の調達・生産・品質・現場運営に加え、
・共創型バイヤーへの転身
・サプライヤーの主体的価値創造
・業界横断型イノベーション
・デジタルを梃にしたレジリエンス強化
・ラテラルシンキングの活用
こうした複合技術・複合人脈による新パートナーシップが、未来の“強靭な現場”を生み出します。
製造業に携わるすべての方が、今の自社だけでなく周囲・業界全体・社会全体まで視野を広げ、明日の価値創造に向け行動を起こしましょう。
その積み重ねが、昭和に生きた私たちのバトンから、次世代への確かな進化へと繋がるはずです。
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