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採用後の期待値調整ができない人材不足対策

採用後の期待値調整ができない人材不足対策
製造業を襲う慢性的な人材不足の現状
製造業はかつて「人が余る」と言われた時代がありました。
しかし、少子高齢化や若年層の製造離れにより、今やどの製造現場も深刻な人手不足に直面しています。
新卒の採用活動は年々困難になり、中途採用も思ったように進みません。
派遣社員や外国人技能実習生の受け入れにも限界があります。
このような状況下で、「何とか人を採ろう」と現場は必死になっていますが、どんなに頑張っても質・量ともに十分な人材を確保できないのが現状です。
採用できても短期離職や戦力化までの時間がかかるなど、なかなか期待通りの成果は得られません。
なぜ「期待値調整」が採用後に機能しないのか
「いい人が採れた!」と現場が喜んでも、実際はその後の活躍につながらないことがよくあります。
背景には、採用側と入社者側の「期待値」のギャップが大きく関係しています。
たとえば、採用時に「最先端の技術を学びたい」という若手に対し、現場には古い設備や非効率な作業手順が根強く残っています。
一方、現場は「即戦力」と期待しますが、実際に入ったばかりの人材は教育環境も不十分なまま日々の生産に追われます。
結果、双方の「こんなはずじゃなかった」というズレが生じ、定着率が下がります。
期待値のギャップを埋める「期待値調整」が現場で的確に機能しないことで、せっかくの採用が実質的な戦力化につながらないのです。
そもそもの採用基準と現場の価値観が昭和から脱却できていない
多くの工場現場では、採用基準そのものが時代遅れなケースが少なくありません。
「根性がある」「体力がある」「上からの指示に従順」。
これらは高度経済成長期や昭和の工場現場では求められた資質でしたが、今の若年層は違います。
現在の求職者は、「自分の成長」「働く意義」「ワークライフバランス」など、新しい価値観を重視します。
にもかかわらず、古い価値観のまま採用し、現場に配属してしまうと、期待値の調整どころか「最初から大きな溝がある」ような状態でのスタートとなります。
なぜ多くの製造業は期待値調整を怠ってしまうのか
業界全体に「雇った後は、現場で何とかするしかない」という風潮が根強いことが挙げられます。
業務ごとの人手が足りず、現場の教育や育成には最小限しかリソースを割けません。
新人に割く人員がいても、OJTが形骸化しがちです。
また、管理職自身が長年アナログな現場で育ってきており、「教えるよりも見て覚えろ」に偏りがちです。
「まず自分で動け、そのうち慣れる」といった昭和的マインドが根強いため、新人には厳しい現状となっています。
採用後にこそ必要な「期待値調整」とは何か
本来なら、採用した後こそ双方の「期待」をすり合わせ、現実的な落としどころを明確にする「期待値調整」が不可欠です。
企業側は「どのような戦力として成長してほしいのか」、社員側は「どのようなスキルや働き方を求めているのか」、しっかり対話する必要があります。
たとえば、次のようなステップで進めると効果的です。
– 「現場が本当に困っていること」「現時点で任せられる役割」を明確化し、社員に正直に伝える
– 「半年後・1年後にこうなっていてほしい」と具体的な目標を設定し、作業内容とキャリアパスを明示する
– 「最初はミスマッチや疑問があって当然」と伝え、相談の場・フィードバックを仕組み化する
– 必ず「聞ける人」「相談できる人」を現場に配置する
これだけでも「こんなはずじゃなかった」による早期離職は大幅に減らせます。
経営層・現場・調達部門…それぞれの立場で見直すべきポイント
製造業の中で調達・購買や生産管理の担当者が人手不足に悩む場合、自部門だけでなく、工場現場・経営層も巻き込んだ「期待値調整の再設計」が必要です。
現場
短期的な業務のみに引っ張られず、長期的な人材育成像を持ち、きちんと「育てる仕組み」を作る必要があります。
進捗管理やコミュニケーション方法もアップデートしましょう。
調達・購買部門
自社がサプライヤーへ人材確保や教育を丸投げしていないか、現場の実態を定期的にヒアリングし、現実的なやりとり例(たとえば立上げ時の支援や、研修負担の分配)を設けることも重要です。
経営層
人材投資のROI(投資対効果)を短期ではなく中長期で捉え直し、人材の流動性(他現場への異動や多能工化)にも柔軟なシステムを設計してください。
人材不足とDX推進――期待値調整のチャンス
AIや自動化、IoTなどのデジタル技術導入は、「人手不足対策」としても注目されています。
しかし、現場の意識や教育体制が昭和時代のままでは、効果は半減してしまいます。
これらのDX推進にあわせて、「どんなスキルセットが必要か」「どのような人材を求めているか」を明確化し直すことで、結果的に期待値のミスマッチを減らすことができます。
また、新技術の導入は若手や新規人材にとって「成長の場」になり得ます。
「単純作業の人員確保」だけでなく、「最適配置」や「キャリアアップ」の道筋を提示していくことが大切です。
サプライヤー、バイヤー双方が知っておくべき「期待値調整」の視点
サプライヤーとしては「納期厳守」「品質保証」といった課題に追われがちです。
しかし、現実には納期を守るための人手も利益確保も難しくなっています。
だからこそ、バイヤーとサプライヤー間でも「期待値調整」が欠かせません。
たとえば、取引開始時に「現場の人員体制」「教育状況」を率直に共有し、納期や品質基準を現実に合わせて調整する姿勢が必要です。
逆に、バイヤー側も「条件交渉」だけに終始せず、供給体制強化のためのコストや時間への配慮を業者選定や評価項目に加えるとよいでしょう。
現場を熟知した調達担当者ほど、この期待値調整の重要性を痛感しているはずです。
こうした柔軟な要求水準の見直しが、不測の納期遅延や品質トラブルの回避にも繋がります。
脱・昭和思考!「ともにつくる組織」へ現場改革を
採用後の期待値調整=お互いの「現状」と「目指す姿」をすりあわせ、現場のギャップをなくし、柔軟に運用していくことです。
これは、現場だけでなく、管理職や調達・購買、経営層、サプライヤーも含めた全体最適の議論と捉えるべきです。
「とにかく人を集める」「数合わせのために採る」から抜け出し、これからは「ともにつくる・育てる」組織へと進化していくことが、人材不足時代における最大の競争優位になります。
「採用後に放ったらかし」は大きな損失です。
実践的・現場目線での期待値調整を組み込み、時代に合った現場改革を地道に積み重ねていきましょう。
これが、製造業の未来を切り拓く唯一の道だと、現場を歩いてきた一人として心から確信しています。
まとめ:期待値調整こそが真の人材活用のカギ
採用活動だけでなく、「採用後の期待値調整」に注力しましょう。
若手・ベテラン問わず「ともに目標をはっきりさせて育成・現場改善を行う」ことが、結局は現場の生産性や定着率を最大化します。
昭和型の人材管理から一歩抜け出し、「時代に合わせて柔軟に期待値を調整する力」こそ、今求められる現場力です。
この記事が、買い手・売り手・現場それぞれの目線で「人材活用の新しいヒント」となることを願っています。