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靴の中敷がズレない滑り止めシートとプレス貼付工程

靴の中敷がズレない滑り止めシートとプレス貼付工程
はじめに:中敷きのズレ問題と製造現場のリアル
靴業界で長年課題となっているのが「中敷きのズレ」です。
市場の声を拾えば、人によって足の形や歩き方が違うため、どれだけフィット感を高めた設計でも、中敷きがずれてしまう不満は常に存在します。
靴メーカーや部品サプライヤーにとって、中敷きの固定方法は製品信頼性にも直結する重要なポイントです。
本記事では、現場での工夫や最新の滑り止めシート導入事例、それに関連するプレス貼付の流れについて、実践的目線で深く掘り下げます。
中敷きのズレが引き起こす不具合とクレーム実例
中敷きがズレると歩行時の快適さが損なわれるだけでなく、以下のような不具合が発生します。
・歩行時に足が滑って靴擦れを起こす
・中敷きの重なりやしわで異物感を感じる
・衛生面での不快感
結果として、消費者から製品クレームや返品が発生し、ブランドイメージの毀損やコスト増加につながります。
特に、作業用シューズやスポーツシューズでは、日常的・過酷な使用に耐えることが求められるため、中敷きズレ対策は欠かせません。
昭和型アナログ発想の限界と”滑り止めシート”の台頭
実際、1990年代以前はボンドや両面テープで直接中敷きを固定するアナログな方法が主流でした。
一見手軽ですが、ボンドがムラになったり、テープが劣化して粘着力が落ちるなどの問題から、中敷きの抜本的なズレ防止には限界がありました。
また、現場作業者の手間もかかり、生産性向上や品質安定の足かせとなっていました。
そこで近年注目浴びているのが「滑り止めシート」の活用です。
成形時から靴本体と中敷きの間に専用の滑り止めシートを挟み込むことで、摩擦力によるズレ防止を実現。
ボンドやテープよりも経年劣化が少なく、脱着可能なタイプも開発されています。
まさに部材メーカー、サプライヤーと靴メーカーのコラボが生んだ実践的イノベーションです。
滑り止めシートの素材・方式の進化
滑り止めシートには大きく分けて2つの方式があります。
・摩擦係数の高いフィルム式(シリコーン系、樹脂系)
・特殊パターン加工によるメッシュ式/テクスチャ式
フィルム式は、薄いシート状で中敷面に貼るだけで優れたグリップ性能を発揮します。
一方で、メッシュ式・テクスチャ式は物理的な凹凸でズレを防ぐ仕組みのため、耐久性能に優れます。
サプライヤーは顧客靴メーカーの要望や用途に応じ、摩擦力・厚み・柔軟性・通気性などを最適設計する必要があります。
近年では高透湿・耐水性・抗菌性等の付加価値を付けた多層構造品、ベタつかず動的滑り摩擦を両立した新規樹脂開発など、素材面でも日々進歩が見られます。
ここには、材料メーカーや加工業者の経験知とノウハウが大きく貢献しています。
実践!滑り止めシートのプレス貼付工程
滑り止めシートの導入効果を最大化するには、プレス貼付工程での精度と安定化が不可欠です。
ここでは、私が管理職として携わった実工程の要点を解説します。
1. 素材選定と前処理
中敷き表面の材質や防水性と滑り止めシートの相性を事前評価します。
中敷き側に残った水分や油分は滑り止め効果を阻害するため、気温湿度管理やアルコールクリーニングを徹底します。
2. 位置決めと仮固定
シートのズレやしわを無くすため、ガイド治具や位置決めマーキングを活用。
ロット毎に中敷きの個体差がある場合は、カット寸法に若干のマージンを持たせて誤組付けのリスクを回避します。
3. プレス貼付機の設定要件
圧力、温度、プレス時間はシートの材質種類に合わせて調整が必要です。
温度が高すぎると中敷き自体の変質(黄ばみや硬化)リスクが、逆に低すぎても滑り止め密着力不足になります。
現場では実機トライアルを重ねて、標準条件をチューニングします。
4. 仕上がり検査
適切な貼付がなされたか、目視と手触りによる外観検査に加え、グリップテスト(実際に歩いてズレを再現)を組み合わせます。
今や多品種少量生産やカスタマイズ需要の増加を背景に、自動化+手作業のハイブリッド工程が主流です。
品質トラブルと現場改善事例
実際の現場では、滑り止めシート導入初期に下記のようなトラブルが発生することがありました。
・プレス温度不足によるシートの浮き
・位置ズレによる片寄り貼付
・素材ロット差による滑り止め効果ばらつき
これらは、現場作業者の声を現物現場で拾い上げながら、各工程でのチェック項目追加や治具の改良を重ねることで徐々に改善しました。
紙上の仕様書だけでは分からない、“汗と経験”に裏打ちされた現場力が成果に直結する好例です。
また、サプライヤー主導での共同検討会開催や、短納期サンプル・試作の繰り返しも品質安定化に大きく寄与しています。
バイヤー目線で見た滑り止めシート発注のポイント
バイヤーや購買担当の皆さんにとって、滑り止めシートはコスト・品質・納期のバランスが鍵です。
選定・発注の際は下記ポイントをぜひ参考にしてください。
・摩擦係数、耐久性、衛生性など客先スペックと整合性が取れているか
・品質異常発生時のトレーサビリティやバックアッププランが確保されているか
・価格だけでなく、貼付後の歩留まり・工程コストも評価して総コストで比較すること
・量産前トライアルとフィードバックを徹底し、サプライヤーとの連携を強化すること
社内で「なんとなく選定」や「前年踏襲」の慣習が残っている場合も多いですが、現場の課題解決型発注ができてこそ、真のプロバイヤーと言えるでしょう。
サプライヤー視点:バイヤーに響く提案とは
サプライヤーの立場からは「バイヤーが本当に現場で困っていること」を先回りして提案できるかが差別化のカギです。
例えば以下のような切り口が有効です。
・でこぼこ素材や難接着素材への最適工法と過去改善事例の提示
・二次トラブル(中敷き剥がれや変色)を予防するための条件設計の提案
・工程の自動化支援(貼付ラインの省人化や治具化)
「単なる部材の売り込み」から、「現場課題のトータルソリューション提案」へ。
このシフトが、バイヤーとの長期安定取引に繋がります。
今後の発展:スマート化・IoT 時代の貼付管理
靴製造現場にもDXの波が押し寄せています。
中敷き貼付工程についても、AIカメラによる自動外観検査や、RFIDタグによる工程履歴トレースなど、IoTを活用した高度品質管理が始まっています。
将来的には「中敷きのズレやすさ」を個人ごとにAI解析し、パーソナライズされた滑り止めシートを自動供給する——そんな時代も近いかもしれません。
まとめ:現場発!徹底した改善こそが差別化
中敷きのズレ対策は、「これでOK」という正解がなく、日々現場での創意工夫が試されます。
滑り止めシートやその貼付工程も、材料メーカー・サプライヤー・バイヤー・現場作業者が一丸となってトライアンドエラーを重ねる“共創の現場”です。
昭和のやり方を惰性で続けていても、品質競争で選ばれることはありません。
足元=現場を見つめ直し、課題本質に向き合って深堀することこそが、アナログ業界の変革と真の競争力強化につながります。
バイヤーやサプライヤーの皆さんもぜひ、自ら現場に足を運び「なぜズレるのか」「なぜ貼付品位がばらつくのか」の疑問に、ラテラルシンキングで挑んでみてください。
きっと明日からのものづくりに、新たなヒントと発見が生まれるはずです。
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