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ゴム材料解析を活かす非線形CAEと力学特性評価ガイド

目次
ゴム材料解析を活かす非線形CAEと力学特性評価ガイド
はじめに
製造業、とくに自動車や家電、産業機械などにおいて、ゴム材料の存在は欠かせません。
ガスケットやシール、ブッシュ、ダンパーなど多様な製品パーツが存在し、多くの現場で「ゴム材料の特性をどう設計・評価し、最適化するか」が問われ続けています。
近年では、非線形CAE(Computer Aided Engineering)の活用や各種力学特性の詳細な評価によって、昭和から続く“経験だけ”による設計から、確かなエビデンスに基づいたものづくりへと業界は大きく変わりつつあります。
本記事では、ゴム材料解析の実践的な視点と、昭和的アナログ文化が根強く残る業界特有の背景も含め、非線形CAE・力学特性評価の活用法を現場目線で解説します。
これからゴム部品の調達や開発に関わる方、バイヤーを目指す方、サプライヤーとして顧客の信頼を勝ち取りたい方必見の内容です。
1. ゴム材料の奥深さと現場での課題
1-1 ゴム材料の特徴と応用範囲
ゴムは他の樹脂や金属材料と異なり、分子構造が柔軟で、加えられた力に対して大きな変形能力を有します。
その一方で、復元性を持つため、シール性や振動吸収性、電気絶縁性といった独自の機能発現が可能です。
実際、多くの製造現場では「ただ黒い柔らかい素材」という先入観を持たれがちですが、原料の選択、配合設計、各種劣化対策(オゾン・熱・紫外線など)といった専門知識が不可欠です。
また、成形条件や加硫プロセスでも物性は大きく変わるため、生産管理や品質保証の現場では、その特性管理の難しさに長年苦労している方が少なくありません。
1-2 昭和的工程からの脱却とは
これまでは「社内にベテランがいるから安心」という”昭和の職人芸”に頼りがちで、材料配合や工程設定が属人的になっていました。
しかし、これでは世代交代や取引先のグローバル化といった現代の大きな波を乗りこなせません。
今後のものづくりでは、経験や勘に加えて科学的根拠を重視するOMOTENASHI、
そして非線形CAEや高度な力学特性評価の導入によって、品質やコスト競争力を担保することが圧倒的優位となります。
2. 非線形CAEの基礎と最新トレンド
2-1 CAEシミュレーションでゴムを「見える化」する意義
ゴムは、線形(=比例関係)ではなく「非線形」挙動を示すのが最大の特徴です。
つまり、小さな力には大きく変形する一方、大きな力を加えると応答が小さくなる、という性質があります。
従来のCAEでは、一般的な金属やプラスチック用の線形モデルが用いられることが多かったのですが、
現在は有限要素法(FEM)などによるゴムの応力-ひずみ挙動を再現することが主流です。
これにより、設計初期段階から「この形状・材質・厚みだと何ミリたわむか」「長期的にヘタるポイントはどこか」を明確に可視化できます。
これが工場現場でのトライ&エラーを減らし、リードタイム短縮やコストダウン、トラブル未然防止に直結します。
2-2 ゴム用材料モデルの代表例
非線形CAEでは、下記のような材料モデルが実用化されています。
– ムーニー・リビン型(Mooney-Rivlin model)
– オグデン型(Ogden model)
– ニオ・ホークス型(Neo-Hookean model)
それぞれ実験によるデータフィッティングが必要ですが、材料ごとの応力-ひずみ曲線を詳細に再現できるのがポイントです。
また、高度な解析ソフト(例:Abaqus, Ansys, Marc, JMAGなど)は、材料特性データベースの拡充や、マルチスケール解析への対応など日々進化を遂げています。
近年はAIによるパラメータ推定や最適化も進んでおり、技術者の直感では発見できない設計領域を短期間で探索可能になっています。
3. ゴム力学特性の評価技法 ~現場で「見る・測る」を科学する~
3-1 基本物性(硬度・引張・圧縮・剪断)試験
ゴム材料の性能評価では、まず以下のような基本試験が用いられます。
– 硬度試験(デュロメーターによるA型、IRHDなど)
– 引張試験(破断応力、破断伸び、応力-ひずみ線図)
– 圧縮永久歪み試験(圧縮荷重後の回復性評価)
– 剪断応力試験(捩れ剛性や耐摩耗性)
これらのデータはCAEモデルの物性値設定にも不可欠です。
現場では、単なる合否判定に止まらず、その数値が「設計値・解析値・保証値」とどのような関係になっているか、を読み解くことが真のノウハウとなります。
3-2 動的特性と疲労・耐久評価
自動車や産業機械に使われるゴム部品は、静的条件下だけでなく、周波数や温度変化が絡む動的環境でも高いパフォーマンスが求められます。
– DMA(動的粘弾性測定):tanδ(損失正接)や貯蔵弾性率・損失弾性率の周波数依存性
– 疲労試験:ヒステリシスループ・クラック進展速度
– 温度サイクル試験、耐オゾン・耐熱老化試験
上記データを、非線形CAEモデルの中でカップリング(つまり時系列や熱機械現象も含めて計算)することで、現場のリアルな使用状況を再現することが可能です。
4. 調達・開発で「信頼されるゴム部品」を実現する実践ポイント
4-1 サプライヤーは「解析+フィールド品質」で差別化を
近年、バイヤーは「材料試験成績書がある」「CAEデータがある」という“形式的な提出”を求めるだけでなく、その根拠や再現性、現場でのフィードバックループまでも重視しています。
サプライヤーとしては、単に物性値を伝えるだけでなく、
– その数値が実稼働下でどのような意味を持つか説明する
– 顧客の使用条件をヒアリングし、最適な評価法を提案する
– トラブル報告があれば、現場実験+CAE解析で迅速な「なぜ?」を可視化する
こうした付加価値提案が大きな信頼・リピート受注につながります。
特に、昭和的な「長年の付き合い」だけに頼っていると、グローバル化・若手購買担当の台頭で一気に淘汰されてしまう時代です。
4-2 バイヤーは「属人的発注」から「データ駆動型調達」へ
購買・調達担当としては、「価格・納期」だけでなく、設計新品質・安全性までトータルで評価する力が求められています。
ゴム材料ではロット差、経時変化、成形バラつきが大きいため、発注時点でデータ化された「設計値」「要求値」「保証値」の整理が極めて重要です。
そのためには供給元(サプライヤー)との密な情報共有、材料トレーサビリティ、工程変更連絡の徹底など、昔ながらの口約束から脱却し「見える化」「エビデンス重視」の運用体制が鍵となります。
4-3 ファーストアプローチからPDCA型連携へ
ゴム部品関連でありがちなのは
「初回納品はOKだが、量産立ち上げ時や設計変更時にトラブル頻発」
「現場が困ってから対応が後手に回る」
といったケースです。
これを防ぐには、初期設計段階で非線形CAEを活用し、現場の実稼働データを反映したPDCAループ(Plan-Do-Check-Act)を作ることです。
たとえば
– 材料配合・工程をパラメータ化し、最適点をCAEで探索
– 評価試験は実機に近い条件でセットし、設計-現場間でフィードバック
– 不具合発生時は「再現性実験+解析+現場観察」の三位一体で再発防止
こうした運用体制が、「データで語る現場作り」を現実のものとし、信頼性とスピード両立を実現します。
まとめ
ゴム材料の特性最大化・最適設計には、非線形CAE・力学特性評価・現場主義の三者を融合することが不可欠です。
従来の経験主義やアナログ的発想から一歩踏み出し、数値根拠と現場感覚を組み合わせた「新しいモノづくり文化」こそ、これからの製造業が高付加価値路線を走るための原動力となります。
サプライヤーの現場で解析技術を磨くこと、バイヤーとしてデータドリブンな調達戦略にシフトすることが、激変の時代を生き抜く製造業人材の“新しい常識”となっています。
本記事が、その一助となれば幸いです。
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