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マスクのフィルター性能を保つ不織布とエレクトレット処理技術

目次
はじめに
マスクは今や我々の生活に不可欠なアイテムとなりました。
その中でも、不織布マスクは高いフィルター性能を発揮し、多くの方々に利用されています。
しかし、そのフィルター性能を支えているのは、ただ布を重ねただけではないことをご存知でしょうか。
この記事では、不織布素材の選択や加工技術、特に「エレクトレット処理」という目に見えない技術がどのようにマスクの性能向上に貢献しているのか、実際の現場経験や最新の業界動向を交えて詳しく解説します。
不織布とは何か、その特長
不織布とは、文字通り「織らない布」を意味します。
繊維を機械的、熱的、化学的に結合させて作る素材で、マスクだけでなく多くの産業分野で利用されています。
不織布は、繊維同士の隙間が小さいため、微粒子を効率よくキャッチできるという特長を持ちます。
一方で、通気性や柔軟性も確保できるため、マスクのように長時間装着する用途にも最適です。
製造現場のリアルな視点から言うと、不織布の選定はコストだけでなく、その用途や使用環境によって大きく変わります。
例えば、工業用と医療用では求められる粒子捕集率や耐久性が異なるため、原材料の繊維種類や太さ、加工方法を慎重に選定しています。
不織布マスクのフィルター性能の秘密
マスクのフィルター性能は「粒子捕集効率(PFE)」や「バクテリアろ過効率(BFE)」で評価されます。
これまでの多くの人が誤解していたように、単に厚みを増せば捕集効率が上がるわけではありません。
むしろ、空気抵抗が増して着用者が息苦しくなり、実用性が失われてしまいます。
そこで登場するのが「エレクトレット処理」です。
この技術によって、不織布の繊維一本一本に電気的な帯電処理を施し、微小な粒子を静電気力で吸着させることが可能となります。
これにより、物理的なフィルターだけでなく、見えない「電気の網」として働き、微粒子やウイルスを高効率で捕捉します。
エレクトレット処理技術の概要と進化
エレクトレット処理とは、繊維材料に高電圧を加えて永久的に電荷を持たせる加工方法です。
日本企業はこの分野で世界的な技術リーダーの地位を築いてきました。
代表的な方法はコロナ放電法やトリボチャージ法などがあります。
現場目線で言うと、エレクトレット処理には慎重な管理が必要です。
温度や湿度の影響を受けやすく、長期間保存すると帯電量が減少するリスクもあります。
そのため、工場の生産管理担当者は、材料の保存条件や工程内の静電気対策、最終製品の性能検証まで一貫した品質保証体制を整えています。
さらに最近では、従来型の帯電処理よりも効率的で安定した「デュアルチャージ型」や「ナノ繊維複合型」など、さまざまな新技術も登場しています。
IoTの導入やAIによる自動検品技術を採り入れる現場も増えており、より確実かつ効率的に高性能なマスクが量産できるようになっています。
現場で直面する課題とその解決策
不織布やエレクトレット処理の導入にあたり、現場ではいくつかの具体的な課題が生まれています。
1. コストと品質のバランス
高度なエレクトレット処理を施した不織布は従来品に比べてコストが高くなりがちです。
購買担当者は、サプライヤーとの厳格な品質要件や納期管理、さらには原材料の価格変動への対応も求められます。
導入初期はコスト高に見えますが、歩留まり向上やリコールリスク低減などトータルで見たときのコストバランスを説得材料にしやすくなります。
2. 加工技術の最適化
エレクトレット処理には技術者のノウハウと熟練度が大きく影響します。
生産ラインごとに静電気の帯電ムラが起きないような装置管理や検査精度の向上が必要です。
昭和から続くアナログ的な感覚だけに依存せず、データ解析や標準化、IoTによる工程監視など、デジタル技術との融合が不可欠です。
3. 環境対応とサステナビリティ
近年、「生分解性不織布」や「リサイクル原料利用」といったサステナブルな生産体制も求められています。
一方で、エレクトレット処理に使われる一部有機化合物やエネルギー消費など、環境負荷低減の観点から改善が急務です。
現場レベルでは、原材料の分別管理やプロセスエネルギーの見直し、供給業者と協力したエコサプライチェーン構築が現実解となります。
バイヤーとサプライヤーが知るべき現場目線の工夫
バイヤーを目指す方、またはサプライヤーとしてバイヤーの意図を汲み取りたい方に向けて、現場のリアルな工夫ポイントをお伝えします。
仕様書・標準化の重要性
エレクトレット処理の有無や帯電量、原材料生産ロットなど、一つ一つ「見える化」し、明文化することがトラブル防止の第一歩です。
調達の現場では、原材料メーカー・中間加工業者・最終製品メーカーと多層構造になるため、全工程でのコミュニケーション密度を高めることが重要です。
品質マネジメントシステムの強化
ISO9001やISO13485など、医療用途対応の品質認証取得は今や必須化しています。
しかし、紙の上だけでなく、現場での実践的な品質確保が最終的な顧客満足に直結します。
システム導入だけでなく、現場作業者に対する教育や日々のパトロール、工程異常に対する即時対応など、アナログ的なヒトの力とデジタルシステムの両輪が理想です。
サプライヤーとの協働
調達購買担当者には、単なる価格交渉力だけではなく、サプライヤーとの技術協力関係が求められます。
現場の悩みや課題をオープンにサプライヤーと情報共有し、仕様改善や新材料の共同開発まで踏み込んだ取り組みが成果に直結します。
業界全体が「共創」へとシフトしている今、調達担当者こそがイノベーションの架け橋となる存在です。
今後の業界動向と進むべき道
コロナ禍を経て、マスク需要は今後減少傾向にあると言われていますが、高機能マスクや産業用途の特殊フィルター、サステナブル素材など、新しい成長領域が生まれています。
特に、エレクトレット処理技術の応用拡大(例:空気清浄機、自動車用フィルターなど)や、新素材開発(例:ナノセルロース不織布、純国産原料など)へとシフトしつつあります。
製造現場では引き続き「高品質・高効率・低環境負荷」を追求しつつ、デジタル化と熟練技術者の知見との融合が不可欠です。
調達・購買部門では、コストダウンと共にパートナーシップ強化、リスク分散、多様化する市場ニーズへの柔軟な対応力が求められます。
サプライヤー側も、単なる供給者ではなく、顧客課題に寄り添う「ソリューションパートナー」への進化が生き残りのカギとなるでしょう。
まとめ
マスクのフィルター性能を支える不織布とエレクトレット処理技術は、日本が世界に誇る現場の叡智と最先端技術の融合です。
アナログ的な職人技とデジタル化による管理の両立、サプライチェーン全体での協創が今後のキーワードとなるでしょう。
調達購買・生産管理・品質管理に携わる方、バイヤーやサプライヤーを志向する方は、現場のリアリティとテクノロジーへのアンテナを磨き、新しい時代の課題解決者としてステップアップしていくことが、業界の未来を切り拓く鍵です。
現場からしか見えない課題、そしてそこから生まれる技術革新や工夫の積み重ねが、これからの不織布産業・エレクトレット技術の発展を支え続けていくのです。
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