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本船スケジュール遅延が発生した際の納期再調整と顧客通知テンプレート

目次
はじめに:本船スケジュール遅延がもたらす現場のリアル
製造業のグローバルサプライチェーンにおいて、海上輸送は多くの場合、物流の要となります。
特に2020年代に入って以降、本船(コンテナ船)のスケジュール遅延は慢性的な現象となりつつあり、納期順守が至上命題の日本の製造業現場には多大なストレスを与えています。
遅延に直面した現場は、顧客との信頼を損なわず、かつ内部の生産計画も維持するという難しい舵取りを求められます。
では、実際に遅延が発生した際、どのようにして納期を再調整し、顧客へスムーズかつ誠実な通知・交渉を行えばよいのでしょうか。
本記事では、現場目線で実践的な対応策と、通知文のテンプレートを含めてご紹介します。
なぜ本船スケジュール遅延が続くのか:アナログ業界のジレンマ
本船スケジュール遅延の原因には、天候や災害、港湾の混雑、国際的な輸出入規制の強化、コロナ禍における人員不足、そして世界情勢によるコンテナ不足など、多岐にわたります。
デジタルトランスフォーメーションが叫ばれて久しいですが、船社やフォワーダーからもたらされる情報は依然FAXや電話、メールでの通知が主流。
情報のリアルタイム性やトレーサビリティの確保が遅れているのが現実です。
このアナログな風土は、昭和時代からの物流現場の慣習が根っこにあり、デジタル化の余地を多分に残しています。
現状のシステム(例えばEDIや基幹ERP)が入っていても、船社からの最新情報が入り次第“手動で”関係各所にメールや電話で共有する、というアナログな作業から完全には抜け出せていません。
この文化が依然として続いているため、バイヤーやサプライヤーは「先手を取った納期調整・顧客コミュニケーション」の重要性を体感しつつも、テクノロジーでの抜本的な解決が難しいのです。
納期再調整の現場フロー:何をどこまで、誰が判断する?
本船遅延による納期影響が判明した際、製造業の現場では下記のようなフローが実践されています。
1. 船社・フォワーダーからの情報入手と一次確認
まずはフォワーダーや物流会社からの遅延連絡を受領します。
ここで求められるのは「確認精度」。
単に到着予定日が延期された、だけでなく、遅延日数、原因、積み替えや再手配の可能性、最悪‘ロールオーバー(次便に積み替え)のリスク’まで精査が必要です。
現場目線では、この一次確認こそがスムーズな社内外調整の命運を分けます。
2. 生産計画・在庫状況との突合と代替案の検討
次は、入荷予定品が自社の生産・納品スケジュールにどう影響するか、在庫が持ちこたえられるか、得意先への直送可否や、部分納品、国内調達品との組み合わせ検討などを一斉に洗い出します。
可能であれば、社内在庫や別ルート調達の緊急手配、中国・東南アジアからのSDV便、航空便転換の検討など、複数案用意しておくことが最も重要です。
3. 社内調整(営業・生産・物流・品証)との連携
調達部門だけで先走らず、営業部門による顧客影響度の定性&定量分析、生産管理部門による作業スケジューリング、品証部門による品質検証要否など、部門間で速やかな合意形成を図ります。
現場では「誰が、どこまで、いつまでに決めるか」を明確化し、泥縄式調整や責任のたらい回しが起きないようにするリーダーシップが求められます。
顧客通知の要諦:バイヤー・営業の思考と現場の現実
サプライヤー(メーカー)にとって、顧客への通知は“納期トラブル時の最初の勝負所”です。
一方、バイヤーとしての立場からは、「現実にどこまで説明し、どこまで交渉余地があるのか」を見極める必要があり、社内交渉能力が問われます。
本船遅延時の顧客通知には、以下の4つのポイントがあります。
1. 迅速かつ正確な連絡
遅延がわかった段階で、極力早く関係者・顧客へ伝えることが信頼維持の第一歩です。
社内稟議を待ちすぎて連絡が遅れれば、「後出しジャンケン」「言い訳通知」と受け止められかねません。
2. 状況説明と原因分析
「なぜ遅延したのか」は必ず明示します。
顧客側も、社内でそのまま上長や自部門にエスカレーションするため、客観的な事実・数字・根拠(例:船名、BLNo、遅延日数、港湾混雑、天候影響等)は明記が必須です。
3. 代替策と今後の影響見通し
部分先行納品、国内在庫転用、航空便化等の具体的な代替策がなければ、「遅れます、諦めてください」では信頼は絶対に得られません。
可能であれば、今後の見通しにも言及し、似たリスクの再発防止についてもコメントを添えましょう。
4. お詫びと補償・フォローアップ
形式的ではなく、自分事としての謝罪と真摯な対応の言葉を入れます。
場合によっては遅延に伴う特別価格対応、次回納期の優遇、スポット輸送費分担なども交渉材料として掲示します。
本船遅延時の顧客通知テンプレート(例文)
以下に、調達現場・サプライヤー側の立場から、顧客に送る納期遅延連絡の実践テンプレートを記載します。
各社の現場状況や顧客との力関係に応じて、柔軟にカスタマイズしてください。
件名:【重要】ご注文品 納期遅延のお詫びとご報告(B/L No. ●●●●●)
本文:
いつもお世話になっております。
●●株式会社 購買部の○○でございます。
このたびご注文頂いております下記商品につきまして、海上輸送中のコンテナ船「▲▲」のスケジュール遅延(台風による寄港地混雑の影響)が判明いたしました。
【対象商品】
品番 :■■■■
数量 :■■個
現地出港予定:△月△日 → 新:□月□日
本船名/BL No.:▲▲ / ●●●●●
遅延原因の詳細は以下の通りです。
・台風22号接近のため、上海港で2日間停滞
・現地での港湾混雑によるスロット不足
・現時点で日本到着は当初予定より△日遅れの見込み
これに伴い、御社への納品予定も当初○月○日から、○月○日へ変更となります。
急なご連絡となり、心よりお詫び申し上げます。
社内在庫・代替品の緊急調達も検討いたしましたが、同スペック製品の国内在庫は未調達であり、本件は上記のスケジュールとなります。
なお、現時点では港到着後、優先的な通関・物流手配にて早期お届けに最善を尽くす所存です。
また、もし一部出荷・納品等での先行分ご要望がございましたら、ご指示賜れますと幸いです。
本件に関するご質問やご要望がございましたら、何なりとお申し付けください。
ご迷惑をお掛けしますことを重ねてお詫び申し上げます。
今後このような事態の再発防止に、引き続き努めて参ります。
何卒ご理解・ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
(署名)
バイヤー・サプライヤーが今後身につけたい「先手必勝」の調整力
サプライチェーン混乱が常態化する今、サプライヤー(製造業メーカー)・バイヤー双方にとって、アナログな情報伝達に依存したままの“対応力”には限界があり、事前予測・先回りしたリスク通知・調整が必要です。
現場では、あいまいなアラートや所属間の“たらい回し”が致命傷となりかねません。
今後求められるスキル・マインドセットとして、以下2つを提案します。
1. 情報収集・社内合意形成のスピード強化
フォワーダー、船社、システム、現場作業員などのあらゆる情報源へのアクセス力と、初動での「最悪・現実的・楽観」三パターンの想定、そのうえで営業・生産・品証・在庫部隊を巻き込んだ早期合意形成スキルが不可欠です。
2. 顧客通知のカスタマイズ力
形式的なメール文ではなく、顧客の納期要求度や社内での立場、事業インパクトを考慮した“相手目線”でのお詫び・提案が大切です。
また、「再発時の優先納品手配」「逐次連絡」「将来的なBCP対応」など、付加価値提案を添えることで、信頼関係の深化へつなげましょう。
まとめ:昭和の現場知恵と、令和型のデジタル補完
本船遅延は避けがたい現象ですが、その対応はメーカーとして、バイヤーとして一段深い「調整力/交渉力」が問われます。
昭和から培ってきた“現場の細腕繁盛記”的な先読み力と、令和の「デジタル活用=迅速な情報共有や顧客カスタマイズ通知力」の双方を活かすことが、本質的な納期管理・トラブル対応の鍵となります。
本記事の現場フローや通知テンプレートが、皆さんそれぞれの現場・顧客対応の一助となれば幸いです。
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