- お役立ち記事
- パネル化と歩留まり計算で実装コストを見える化するNPI手順
パネル化と歩留まり計算で実装コストを見える化するNPI手順

目次
はじめに:パネル化と歩留まり計算がなぜ重要か
製造業の現場では、「もっとコストを下げて」「納期を短く」「品質も上げてほしい」といった注文が絶えません。
とくに新製品立ち上げ時(NPI:New Product Introduction)の初動で失敗すると、量産段階で大きな損失や余分な手戻りが発生します。
本記事では、現場経験で培った視点から、NPI手順で絶対に外せない「パネル化」と「歩留まり計算」について、実践的なノウハウを深堀りして共有します。
アナログ思考が根強く残る昭和型製造現場でもすぐ活かせる情報も盛り込み、バイヤー志望の方やサプライヤー目線でバイヤーの本音を知りたい方にも役立つ内容を目指します。
NPI(新製品立ち上げ)とは?製造業現場のリアルな課題
NPIプロセス全体の概要
NPIは、新製品のアイディアや設計段階から量産体制に移行するまでの一連のプロセスです。
企画・試作・評価・設計確定・量産準備・立ち上げという流れが一般的ですが、どのステージでも「コスト」「納期」「品質」がトレードオフで悩みの種となります。
特に試作や設計の段階で「感覚頼み」のまま進めてしまうと、量産に移行した際に重大なコストオーバーや劇的な歩留まり悪化を招いてしまう可能性があります。
昭和型アナログ現場の課題
多くの現場ではいまだに「前回と同じ作り方で」「このくらいのロスは許容範囲」といった経験則・口伝え文化が強く残っています。
こうした属人的な運用は、NPIプロジェクトが多品種少量や高難度化している現代には限界を迎えつつあります。
見積もりの時点で“本当のコスト”が見えていない、また歩留まりの悪化要因分析ができず「何となく」量産移行してしまうことが大きな問題です。
パネル化とは何か?コストを大きく左右する設計手法
パネル化の概要
パネル化とは、基板・成型部品・シート材料などを1枚や1セットの「パネル」として扱い、部品・製品を複数個取りまとめて一括生産・加工する設計手法です。
たとえばプリント基板(PCB)なら、1枚のシート上に複数個の基板形状を面付けし、一連の工程(実装、検査、切断)を効率良く進めます。
パネル化のメリットと実装コストへの影響
パネル化の主なメリットは、
1サイクルあたりの生産個数を増やし、ラインの稼働効率と設備稼働率を向上させる点にあります。
また、部品や製品同士の配置バランスを工夫することで、材料ロス削減、工程間の搬送ロス削減、治具(ジグ)の共用化が可能となり、ひいては部品1個あたりの実装コストを大きく低減させます。
最終的に、こうした「パネル取り設計」は、材料単価だけでなく工程コスト全体を最適化するカギとなるのです。
パネル化設計でありがちな失敗
一方で、パネル化の設計が不十分だったり、歩留まりへの影響を軽視した場合、
・材料歩留まりが悪い(ムダな端材が大量に発生)
・面付け間隔が狭く分割時に割れやすい
・設備や治具との相性が悪い
・手直しや再投入時の作業効率が激減
といった失敗が多発します。
こうした問題は、見積段階だけでなく実際の量産現場でトラブルとなり、想定以上のコスト増加や納期遅延・品質劣化を引き起こします。
経験則に頼るだけでなく、設計段階で「パネル化の適正値」を科学的な計算やシミュレーションで確認することが不可欠です。
歩留まり計算の実践術:現場目線で何が大事か
歩留まりの定義と具体的な計算方法
「歩留まり(Yield)」とは、投入した材料・部品に対してOK品として出荷できた製品の割合を示します。
基本的な計算式は下記の通りです。
歩留まり(%)=(良品数 ÷ 投入数)× 100
表面実装ラインの場合なら、
歩留まり=パネルあたり実装完了良品数 ÷ パネルあたり実装開始ユニット数
ただし、複数工程(実装→検査→分割→組立)にまたがる場合は「各工程ごと」「トータルのプロセスごと」に歩留まりを算出し、最終製品までの合成歩留まり(直列工程なら掛け算)を把握することが重要です。
歩留まり悪化の“隠れコスト”に注意
歩留まりが悪化すると、材料費や工数の増加だけでなく、
・再加工、再実装による設備・人件費増
・納期遅延による顧客クレーム
・品質保証体制へのコスト増大
といった“隠れコスト”が膨れ上がります。
特にパネル化設計が原因で歩留まりが悪化した場合、パネル単位で一部NGが混入すると丸ごと再製造、最悪はすべて廃棄となるリスクも。
見積もり・初期計画段階で「どのくらいの歩留まりが現実的か」「そのときのコストインパクトは?」まで前提として厳密に算出することが求められます。
パネル化設計と歩留まり計算の連動がNPIの勝敗を分ける
「パネル最適化」がコスト低減の起点
パネルあたりの個数設定次第で、
・1個あたりの加工コスト
・材料ロス
・治具費
・設備稼働率
が大きく変動します。
たとえば、24個取れるパネルが28個取れれば1個あたりのコストは4/24=17%も下がる計算です。
しかし、むやみにパネル面付け数を増やすと、歩留まり悪化や後工程への影響が出て逆効果になるリスクも。
設計フェーズで「シミュレーションによる最適解」を導くこと、また現場担当者・設備担当者・サプライヤーからのフィードバックを吸い上げることがとても重要です。
歩留まり予測とコストシミュレーションの実践
NPI段階で必ずやるべきステップは、
1. パネル化による理論コストシミュレーション(設備稼働データも活用)
2. 試作段階で実際の歩留まり・ロス率計測
3. コストインパクト測定(材料・工数・後工程含む総合原価)
4. 現場改善活動(トラブルの早期摘出と打ち手立案)
これらを一度やって終わりではなく、「試作→結果フィードバック→設計修正」のサイクルを短期間で何度も繰り返すことが量産成功への近道です。
「感覚」や「経験だけ」に頼らず、データによる裏付け・予測精度向上が最大のポイントです。
アナログ現場でもすぐできる!現場主導の見える化コメント
現場力の強い日本の製造業では、ただ「計画値」だけを現場に押し付けると現実とのギャップで大きな摩擦が生まれます。
「なぜそのパネル数設計なのか」「この歩留まりならコストはどうなるのか」を現場担当者とバイヤーが同じ土俵で見える化できる簡易シート(設備稼働シート、歩留まり記録、コストマトリクス)を小さく回していくのが効果的です。
Excelでも十分ですし、手書きでもまずは「現物・現場・現実」をビジュアルで見せることが昭和型現場でもコスト意識の醸成・共通認識につながります。
バイヤーやサプライヤーがNPIで知るべきこと
バイヤーや購買担当者としては、「見積もりの根拠」がどれだけ正確か、量産移行後に「予想外のコスト増」が起きないかが気になるところです。
サプライヤー側なら、バイヤーの期待値を上回るコストシミュレーションやリスク提示が差別化につながります。
双方でパネル化設計と歩留まりの“根拠”を見える化し合える関係性が、長期安定取引や利益の最大化への近道です。
この観点から、現場実務者・設計者・バイヤーが、
・どうやってパネル取りや歩留まりを決めているのか
・改善PDCAをどこまでやっているか
・コスト構造をどこまで分解・見える化しているか
を相互に理解し合う必要があります。
AI・DXがもたらす最新トレンドと昭和現場の融合
昨今、AI・デジタルツイン技術の進展によって、パネル化・歩留まりシミュレーションはより短期・高精度化しています。
ただし、“AI任せ”“標準モデル一辺倒”では、現場で起きている「予想外のイレギュラー」「人間による勘どころ」まではカバーしきれません。
昭和型の現場知見と、データ主導をうまく融合し、
・標準化できる部分はデジタル管理
・現場独自のノウハウはナレッジ化・再利用
というハイブリッド思考が、これからの日本製造業で生き残るための必須条件です。
まとめ:パネル化と歩留まり計算で工場のコストを“見える化”する
NPIの現場では「パネル化設計」と「歩留まり計算」を軽視すると、量産移行後に取り返しのつかないコスト増・納期遅延・品質トラブルにつながります。
本当に強い現場・バイヤー・サプライヤーは、
・パネル取りの適正値を現場で何度もシミュレーション
・歩留まりデータで総合原価を厳密に算出
・設計・現場・調達部門が共通言語で見える化
を徹底して行っています。
製造業界で活躍したい方、これからバイヤーを目指す方、現場からコスト改善の打ち手を見つけたい方には、
“パネル化と歩留まり計算”を実践的かつ現場目線で身につけていくことが、これからの成長と製造業の新しい地平を切り開く大きな一歩となるはずです。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)