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ODMで避けたい“機能過多デザイン”の問題点

目次
はじめに:ODMにおける“機能過多デザイン”の実情
ODM(Original Design Manufacturing)とは、発注元の意向に沿って製品設計から製造までを一貫して受託する製造サービスです。
現代の製造業は、OEM(Original Equipment Manufacturing)とともに、その柔軟性やスピード感からODMの需要が急増しています。
ところが、ODMという仕組みの裏には、しばしば“機能過多デザイン”の落とし穴が待っています。
調達購買、生産管理そして品質管理など、現場のリアルを知る立場から見ても、これは避けるべき大きな課題です。
この記事では、なぜ機能過多デザインが生まれるのか。
その具体的な問題点や背景、そして製造業の現場目線での実践的な解決策を掘り下げていきます。
ODMにおける“機能過多デザイン”とは何か
現場に根付く“盛り込み癖”
ODMでよく問題となるのが「発注元の要求をすべて盛り込もうとする」設計です。
発注側としては、自社製品としての魅力や差別化を打ち出したいがために、他社よりも多機能な製品を指示しがちです。
これに対し、ODMメーカーは「顧客ファースト」を意識するあまり、言われた要求をそのまま全て受け入れてしまうケースが散見されます。
なぜ“機能過多”に陥るのか―昭和型マインドの影響
昭和から続く日本の製造業現場では“お客様の言うことは絶対”というマインドセットが根強く残っています。
この「をんぶにだっこ」の姿勢が、発注者の要求に過剰に応じがちとなり、まるで“注文住宅に全部屋オプション満載”のような結果になります。
また、発注元も設計開発や商品企画視点だけでなく、「せっかくだから」という気持ちで、必要性を十分に精査しないまま、つい機能を追加で要求してしまう傾向があります。
機能過多デザインが引き起こす3つの主要問題
1. コストの肥大化―本当にその機能は必要か
機能が増えれば部品点数は増加し、調達コストや在庫リスクが跳ね上がります。
生産現場では組立工数が増え、作業員の教育も煩雑に。
部材管理や倉庫スペースも拡大し、製品単価は跳ね上がる傾向にあります。
また、価格競争の激しい分野で“コスト高止まり製品”が顧客から選ばれる可能性はグッと下がります。
2. 品質管理の困難化と不具合リスク
機能の多さは、製品トラブルの芽をあちこちにどんどん生み出します。
それぞれの部品が思わぬ干渉や複雑な動作テストを必要とし、どの不具合も“複合要因”が絡み合って解決までに時間を要します。
不良率低減・納期短縮など現場のKPIにも悪影響が出やすいのです。
3. デリバリー遅延と工場負荷の増大
部材やユニットが多い分、1つでも欠品・遅延が発生すれば、全体進捗に大きな影響が出ます。
複数のサプライヤーとの連携も煩雑になり、生産計画の修正や納期遅延が常態化するリスクがあります。
また、現場では段取り替えや部品混載による工数増、ミス誘発のリスクまで跳ね上がります。
なぜ機能過多が“成果”と錯覚されるのか
“全部入り”が正義だった時代の名残
かつての日本製品は「多機能であればあるほど優れている」という“昭和の成功体験”に根ざす価値観が残っています。
消費者の嗜好や購買行動が大きく変わった現在でも、発注者もメーカーも“全部入り競争”にどこか安心感を覚えてしまいがちです。
バイヤーとサプライヤーのすれ違い
バイヤーは「提案力」「差別化機能」「顧客の困りごと解決」を求めますが、現場では「実装しないと失礼」「削るのは勇気がいる」と自分事化できない心理が働きます。
特に、サプライヤーサイドでは「うまく受け流せない」文化があり、気付けばどのお客様にも多機能化依存症になり、長期的なビジネスリスクに繋がりかねません。
機能過多デザインがODMビジネスにもたらす悪循環
“設計の二重手間”と迷走する意思決定
多くの機能要求が入ることで、設計段階では「どこまで本当にやるのか?」「後戻りはできないのか?」と社内外で調整会議が連発されます。
この意思決定コストがODM全体の納期リードタイムを一気に長期化させます。
顧客満足度の“逆転現象”
一見、なんでも詰め込んだ製品は顧客満足につながるように思われます。
しかし、実際には「使いこなせない機能」「不具合発生頻度」「コスト増」など、ユーザー側の悩みや不満が表面化。
結果的に“選ばれない製品”になってしまいます。
ODMで“機能の絞り込み”を実現する現場目線のヒント
ヒアリング力の強化と要求“棚卸し”の徹底
想像以上に重要なのが、発注元との密なヒアリングと“本当の困りごと”の引き出しです。
「その機能はなぜ必要か?」「どう使って欲しいのか?」「ユーザーはどこまで求めているのか?」これらを現場レベルで詰めていくことが欠かせません。
過去の設計開発記録や市場フィードバックも参考にし、必須機能とオプション機能を明確に分けて提案することが重要です。
“引き算の美学”という新しい評価指標
昭和以来の“足し算”発想から、“本当に使うモノだけを残す”引き算思考への転換が求められます。
たとえば、全機能を載せるのではなく段階的リリースや、アップグレード型の設計思想を提案するのも有効です。
こうした“シンプルで強い”製品を目指す姿勢がODMビジネスでの差別化ポイントとなります。
生産現場やサプライチェーンとのリアル連携
設計段階から生産現場・調達部門を巻き込み、部品標準化や工程の簡素化が図れるかを早期に検証します。
また、部品点数減らしによるサプライヤーメリットも積極的にバイヤーへ提案しましょう。
サプライチェーンの簡略化こそ“早く・安く・良く”の三拍子を揃える近道です。
ODMの“現代的価値”を最大に高めるために
バイヤー・サプライヤー両者の“思い込み”から脱却
機能過多を招く根底には、「お客様のため」という大義名分と「削るのは悪だ」という思い込みが隠れています。
時には“本当に要らないもの”や“将来的に増やせばよいもの”を冷静に見極め、提案力を発揮することがODMメーカーに今こそ求められています。
顧客の“使い勝手”を最優先する姿勢の徹底
単に機能の多さで勝負するのではなく、エンドユーザーが「これは使いやすい・便利」と感じるポイントを徹底的に突き詰めてください。
売れるODM製品は、たいてい“適度なシンプルさ”と“現場志向の完成度”を持っています。
まとめ:ODMで避けたい“機能過多デザイン”とは現場課題そのもの
ODMにおける“機能過多デザイン”は、単なる設計思想の問題にとどまりません。
調達コスト増・品質不安・納期遅延など、製造業の現場全体に多大なダメージを与える重大なリスクです。
現場経験に基づく提案力、ヒアリング力を磨き、必要機能を“引き算”する勇気を持ちましょう。
また、サプライチェーン全体の効率や働く人たちの負荷まで踏まえた“本当に現場で使われる製品”を目指す姿勢が、ODMの新しい地平線を切り拓く鍵となります。
昭和の成功体験から一歩抜け出し、“現場ファースト”なODM戦略の実現が、今、すべての製造業とバイヤー、サプライヤーに求められているのです。
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