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冷凍・冷蔵混載での匂い移りクレームを防ぐ区画・防臭設計

目次
はじめに:冷凍・冷蔵混載物流の課題と現場のリアル
近年、食品業界や製造業では、物流コスト削減と効率化のために「冷凍・冷蔵混載」の運用が急速に拡大しています。
一つのコンテナやトラックに冷凍品と冷蔵品を一緒に積むことで、車両回転率を向上させ、環境負荷も低減できる点が大きなメリットです。
しかし、その運用現場では深刻な「匂い移り」問題が後を絶たず、クレームや納入先からのペナルティ、最悪の場合は取引停止リスクにもつながっています。
製造現場の長年の経験をもとに、冷凍・冷蔵混載における匂い移りクレームを防止するための区画・防臭設計のポイントを解説します。
そもそもなぜ「匂い移り」が起こるのか
冷凍・冷蔵温度帯混載の典型的なパターン
一般的に冷凍・冷蔵混載は、-18℃以下の「冷凍エリア」と、0〜10℃(多くは5℃前後)の「冷蔵エリア」を車両や倉庫内で区分して運用します。
冷蔵側には野菜、果物、乳製品、肉、惣菜などが多く、冷凍側には冷凍食品やアイスクリーム、生肉・魚介などが積載されます。
一見温度帯で分ければ安全のようですが、実際には「空気の動き」・「梱包形態」・「製品特性」によって想定外の匂い移りが発生します。
臭気成分の移動メカニズム
食品由来の臭気成分は主に揮発性有機化合物(VOCs)で、その多くが冷気に乗って拡散します。
混載時に区画が不十分だと、冷蔵エリアで強い匂いを発する惣菜や漬け物、冷凍エリアでも業務用餃子、にら入り製品、魚介系食品などが周囲の無臭系製品(例:冷凍和菓子やアイスクリーム等)に影響を与えます。
冷凍状態でも密封が甘いと「凍ったまま」臭いが取り込まれ、解凍時に一気に匂いが立ち上がるケースもあります。
現場で実際にあった臭い移りクレーム例
– 冷凍スイーツが、餃子・キムチ・生鮮魚介の匂いを吸収し納入先から返品
– 冷蔵野菜やチーズが同梱していた燻製加工肉・ハムの燻煙臭で再加工不可
– 大手スーパー向けPB商品が匂い原因で棚から消えるロス
– 魚介加工品を直輸送した冷蔵トラックで、後続便の乳製品にクロスコンタミ
これらのクレームは、一度発生すると数百万円単位の損失や、取引先の信頼失墜に直結します。
今も根強い「デジタル不在空間」の落とし穴
多くの現場では、温度管理にはセンサーやロガー、遠隔監視システムを先進的に導入しています。
しかし「臭気対応」自体は昭和から継続するアナログ管理が主で、梱包やパレット配置に頼るのみの事例が目立つのです。
– 「経験で考えるしか…」の属人化管理
– 目に見えないため数値で評価できない
– 区画設計や梱包提案を拒まれる商習慣
この辺りが、製造業・物流現場に共通する「デジタル化の隙間」といえるでしょう。
匂い移りを防ぐ区画設計の鉄則
物理的な仕切り(バルクヘッド)設計
一番の基本は、冷蔵・冷凍エリア間に確実な「物理的バリア」を設けることです。
– 厚手断熱パネルによる床〜天井の完全仕切り
– トラック・コンテナ扉からのエア漏れ防止(スポンジガスケット等)
– エリア間搬入出用カーテンは隙間・破損点検の徹底
一見コスト高に見えますが、クレームロスや再配送に伴う損失に比べれば「安い投資」となります。
圧力制御・空気流量の管理
混載区画内で、空気の流れを「冷蔵→冷凍」方向にコントロールする設計も有効です。
特に製品積載中にドアの開閉がある場合、一時的に循環気流が乱れるため、出入りするドアごとに「簡易換気ファン」や「排気ベント」の設置を検討しましょう。
仕切りが不十分な現場では、区画ごとに微加圧状態を作り「臭気成分が強い側」から「無臭・吸着リスク高い側」へ空気が移動しない工夫が重要です。
消臭・脱臭フィルターの現場活用
パレット間、積載空間内のコーナー部分に消臭フィルターや活性炭マットを配置することで「漂う臭気」のキャッチ・吸収率が高まります。
特にスライスチーズ、アイスクリーム、饅頭など臭いに敏感な商品は、パレット単位で防臭シートやフィルムカバーの活用が推奨されます。
ハイエンド向け冷凍・冷蔵倉庫では「オゾン発生器」や「紫外線カット照明」との組み合わせも増加中です。
製品梱包の改善―今すぐ見直すべきポイント
多重包装と密封の精度アップ
外袋一枚ではシールミスや端部隙間から臭気が侵入します。
– 冷凍食品は最低限、外箱(段ボール等)+内袋(PE等)の二重密封
– チルド帯はトレー+ラップ+蓋フィルムで「漏れ・空洞」を極力排除
– 真空・ガス充填も併用し「空気の道」を物理的にふさぐ
包装コストを削りたくなる部分ですが、クレーム発生時のダメージに比べると引くに引けません。
臭気発生源商品の単独梱包・仕分け
ニラ、にんにく、キムチ、魚介加工品、燻製食品など明らかに強い臭いのものは、可能な限り単独パレット化・仕分け手配を基本とします。
多品種混載必須の場合は時間指定便やルート単位での積載分離も検討しましょう。
また出荷依頼書や納入マニュアルに「臭気区分」明記を徹底し、物流の現場担当まで情報が漏れなく伝わる体制づくりがカギとなります。
管理職・バイヤーの視点:商流に潜む注意点
「発注側」からの区画提案と交渉テクニック
多くのバイヤーは物流コストばかりに目が行き、「混載条件」は物流部門任せになりがちです。
– 取引時に「臭気クレーム歴の有無」をしっかりヒアリング
– 区画設計提案の一部コストを仕入価格に転嫁する交渉
– 商品登録時に「臭気注意品リスト」を設け、納入単位も規定化
これらをシステマティックに運用できるバイヤーは、社内外からの信頼・評価が格段に上がります。
サプライヤー側が意識すべきバイヤー本音
サプライヤー側は「物流費を抑えて納入数を増やしたい」「積み替え工数を減らして楽に運びたい」と考えがちです。
しかしバイヤー本音は「クレームゼロ」「安心して販売できる品質」「最終顧客への影響排除」が最優先です。
仮にコスト増となっても、臭気移り案件が一度でも起きれば、その影響は仕入れ先選定から販路計画、営業現場まで全社的に波及します。
サプライヤーも「先回りした区画・防臭提案」で高評価が得られ、リピート商談やランクアップの大きな武器になります。
物流業者との連携強化―昭和ノウハウからの脱却へ
現場アナログ×ITの融合設計
実際の区画運用ではドライバーやリフト作業者など、物流現場人員の力がまだまだ鍵を握ります。
習慣や暗黙知に頼る管理から、デジタル機器(温湿度・臭気センサー、写真管理アプリ、チェックリスト運用)とのハイブリッドを推進しましょう。
– 荷積み前の「防臭設計写真」提出の徹底
– 漏れがちな区画部分への配布用チェックリスト作成
– トラブル発生時のログ・センサー履歴活用による原因特定
現場改革の鍵は「人とITの協働」にあります。
定期レビューとリスクシナリオの事前共有
– 業界トラブル事例集の作成・社内勉強会運用
– サプライヤー・物流委託先を交えた「リスクマップ・ワークショップ」
– 季節・商品入替時の輸送条件見直しの仕組み化
工場長・品質管理責任者が主体的に関わり、「現場目線」で防臭・区画設計の継続的改善に取り組みましょう。
まとめ:安全な冷凍・冷蔵混載は「区画・防臭設計」から
冷凍・冷蔵混載の物流はコストダウンと効率化の極みですが、その裏では伝統的な興行の難しさと新しいデジタル化のせめぎ合いが続いています。
区画・防臭設計に手を抜くと、目に見えない「匂い移り」がビジネス全体の足を引っ張ります。
現場の知恵、先進技術、仕組みづくり。
これらを融合した「新しい混載物流の安全基準」を追求し、製造業・流通業の発展に貢献しましょう。
バイヤー目指す方、サプライヤーとしてバイヤーの声を知りたい方は、今日から現場目線でできる「臭気対策」を積み重ねてみてください。
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