投稿日:2025年10月21日

フィットネスジムがオリジナルプロテインを作るためのOEM契約と成分管理の実際

フィットネスジムがオリジナルプロテインを導入する時代背景

近年、健康志向の高まりとともにフィットネス業界は大きな変革を迎えています。

「通うだけのジム」から、「会員の目標に寄り添うトータルサポート」「食事・栄養戦略まで提案できるジム」へと価値が進化しています。

この流れの中で、フィットネスジムが独自のプロテインを開発し、会員に提供する事例が加速度的に増えてきました。

こうした自社ブランドのプロテインを提供することは、差別化や継続課金モデルの強化、ブランディングに直結します。

しかし、オリジナルプロテインの開発・販売には、OEM契約、品質・成分管理、製造現場に潜むリスク管理など、製造業ならではの課題が数多く存在します。

この記事では、現場目線と業界トレンドを押さえつつ、フィットネスジムがオリジナルプロテインを作る際のOEM契約の実際と成分管理について、バイヤー・サプライヤー双方に役立つノウハウを解説します。

OEM契約の基本と、その実際

OEMとは何か ― 製造委託の現場で起きていること

OEM(Original Equipment Manufacturer)は、発注企業(この場合はジム)が自社ブランドで販売したい商品を、専業メーカーに製造委託する仕組みです。

多くのプロテインは自社で原料調達から製造・包装まで行うのはコスト・スキルの面で非現実的です。

それゆえに、信頼できるOEM先を見つけるのが出発点となります。

実際の現場では、単なる製造委託にとどまらず、「コンセプト設計」「配合率の調整」「風味テスト」「パッケージデザイン」「物流」など、きめ細かな対応が問われます。

特にプロテインは「味」「溶けやすさ」などが消費者満足度に直結するため、幾度も試作を重ね、現場で納得感を得ることが要です。

OEM契約書で必ず押さえておきたいポイント

ジム運営者がOEMでプロテインを作る場合、契約書を交わす際は次のような点を抑える必要があります。

  • レシピ(処方)の機密保持と帰属権
  • ロットサイズ・納期・価格の確約
  • 原料の供給体制、入手困難時のリスク対応
  • 成分分析の頻度と検査方法(自社依頼or外部機関)
  • 製造不良(異物混入、賞味期限切れなど)時の責任範囲
  • パッケージやデザインに関する知的財産権の取り扱い
  • トレーサビリティ(追跡調査)の実現可否

また、定期的な生産計画の協議や、需要変動時の追加発注・キャンセルなども曖昧なまま始めてしまうと、想定外のトラブルの元凶となるので注意が必要です。

サプライヤー視点:バイヤーはどこを重視するか

サプライヤー(OEMメーカー)にとって、現在のバイヤー(ジム)は「単なる安さ」よりも、「安全・安心・透明性」や「迅速なカスタマイズ対応力」を重視し始めています。

昭和的な「お任せします、お願いします」ではなく、「根拠ある成分残高表の提出」「レシピ改良時のPDCA」「工場見学や立会いテイスティング」にまで踏みこむケースが増えています。

ゆえに、お互いの合意形成や見える化ナレッジ化が、現場でもかつてなく重要になっています。

プロテイン製造における成分管理の実務

原材料調達の現場で避けて通れない管理項目

プロテイン製造の起点は「原材料調達」です。

ここで押さえておきたい要素を挙げます。

  • たんぱく原料(ホエイ・カゼイン・ソイ等)のグレード
  • 主要成分以外の付加栄養素:ビタミン、ミネラル、食物繊維など
  • 甘味料や風味素材の安全性
  • アレルゲン表示・交差汚染の防止策
  • 原産国表示の義務・サプライチェーン上の追跡性

このうち、「どの商社・卸からどんなlotの原料が、どんなコンテナで運ばれてきたか」「残留農薬・重金属検査はクリアしているか」等、想像以上に細かい項目を遡ってまで開示できるOEMメーカーは信頼の証といえます。

工程管理 ― 製造現場のリアルな課題

工場内では、原材料の受け入れ〜粉砕・混合・充填・包装まで多くのレーンが動きます。

OEM契約でありがちな“見えないリスク”として、次のような例があります。

  • 別受注品(他ブランド)の切り替え時、残留混入を見逃してしまう
  • 工程ごとに手書き日報&マニュアル対応で、データ連携がアナログのまま
  • 人の勘・経験値に依存した品質管理が根強い

近年はIoT導入や工程QR化、ロットトレース自動化が進みつつありますが、中小・地場OEMではアナログ管理が根深いため、現地監査や工程ごとの抜き打ちチェック、トラブル時の迅速な是正指示体制が重要となります。

製品の品質検証 ― 分析証明書と現場検証

出来上がったプロテインには「成分分析証明書(COA)」の取得・開示が求められます。

たとえば「たんぱく質20g/杯」「脂質0.5g未満」など、ラベル記載との整合性が取れているか、外部認証機関での検査を求めるジムバイヤーも増加傾向です。

加えて、賞味期限テスト(長期保存・風味変化の経年テスト)、輸送時の気温・湿度管理など、商品が会員の口に入るまでの一貫した管理が差別化・信頼構築に直結します。

昭和的アナログ業界でも根強い現場課題と、その突破法

現場の“属人化”からの脱却

長年プロテイン製造の現場では、ベテラン従業員の「目利き力」「手作業ノウハウ」「経験勘」に頼るアナログな現場が根強くあります。

しかし、原材料の多様化や消費者クレームリスクの増大を踏まえると、今後ますます「工程ごとのデジタル連携」「監査体制の厳格化」「スタッフ教育の仕組み化」が不可欠です。

バイヤー(ジム)が監督権限を強化し、メーカーも自社工場見学会や動画でプロセス開示を進めるといった一歩踏み込んだ連携が新しい標準となりつつあります。

ラベル表示・コンプライアンスの徹底

オリジナルプロテインをジムブランドで売る場合、「景品表示法」「食品表示法」「健康増進法」など複雑な法規制があります。

アレルゲン表示や原材料表示・機能性表示など、行政指導や消費者庁指摘を受けやすい部分です。

この点でも、信頼できるOEMパートナーなら、行政関連の最新ルールへのアップデートや棚卸しコンサルまで担ってくれるケースが増えています。

ジム運営者は、担当者任せ・OEM丸投げ型から、専門家と直接ディスカッションできる体制を構築しましょう。

バイヤー・サプライヤーの新しい関係構築と今後の可能性

ジム発信で生まれる新商品開発イノベーション

最近のOEMでは、バイヤー側(ジム)からの「低糖」「グルテンフリー」「機能性素材プラス」など特化ニーズがどんどん高まっています。

この流れで、OEM側も「協創型(コ・クリエーション)」開発プロジェクトを立ち上げる動きが活発化。

現場スタッフ・トレーナー・会員の声を定期ヒアリングし、月次で商品プロトタイプを改良するPDCAループの導入例も見られます。

昭和時代の「バイヤー:お願いする人、サプライヤー:作る人」から「バイヤー:現場目線の課題・要望を積極発信する人、サプライヤー:その解決/提案で価値を提供するパートナーへ」と進化しつつあるのが、現場のリアルです。

今後求められる「透明性」と「双方信頼」― 現場こそが付加価値の源泉

近年、「トレーサビリティ」「成分分析書公開」「工場工程動画開示」など、透明化を競う波が起きています。

これからのオリジナルプロテインは「単なるOEM調達」ではなく、現場担当者同士のしつこいほどの“見える化議論”と“相互の現場立会い”、痛い所まで隠さないオープンな関係が最大の差別化ポイントになってきます。

OEMメーカーを選定する際は、「大手だから安心」ではなく、「工程見学を断らない」「自社の名前で損をしない矜持がある」「現場スタッフの説明力が高い」ことを重視しましょう。

バイヤー側も「困った時、現場のプロ・技術者と直接対話できる」体制づくりが、失敗しないオリジナルプロテイン開発の鍵といえます。

まとめ ― フィットネスジムの価値を高める“現場起点”のOEM活用

オリジナルプロテイン開発は、単なる「OEM委託」や「PB商品追加」ではありません。

OEM先との細やかな契約調整、成分管理の徹底、現場工程の可視化、消費者目線に立った品質向上など、一つひとつの地道な現場実践が信頼とブランド力を形作ります。

昭和的アナログさが色濃く残る業界だからこそ、「現場の声×新しいモノづくり思考」が、フィットネスジムの次代の競争力になります。

製造現場にいる方、バイヤーを志す方、あるいはサプライヤーとして一歩先の価値提供を考える方へ。

今こそ、「現場起点」「お互いの見える化力」「リスクを隠さない正直さ」を武器に、オリジナルプロテイン開発を通じて製造業の新たな地平線を切り拓いていきましょう。

You cannot copy content of this page