投稿日:2025年9月7日

OEM開発における市場調査と商品企画の流れを徹底解説

はじめに 〜OEM開発の本質を見極めよう〜

現代の製造業におけるOEM(Original Equipment Manufacturer)開発は、単なる部品供給や下請けではなく、パートナーシップによる共創の舞台へと進化しています。
かつての「作って終わり」から、「市場ニーズを的確につかみ、企画から設計・生産、品質管理、納品、アフターサポートに至る一貫した価値提供」が求められる時代です。
この記事では、現場経験豊富な筆者がOEM開発の真髄を、市場調査と商品企画プロセスからひも解いて解説します。

OEM開発における市場調査の重要性

OEMビジネスに新規参入する企業や、既存事業の拡大を目指す担当者の多くが陥るのは、「相手先ブランド任せ」の製品開発です。
しかし、真に価値ある商品を創出するためには、バイヤーでもサプライヤーでも『自社が“市場の課題解決者”となる』意識が必要です。

なぜOEMに市場調査が必要なのか

OEMは最終消費者向けブランドを持たない分、つい顧客企業の「言われたものを作る」姿勢に陥りがちです。
ですが、消費者環境の変化や競争激化の今、取り巻く市場を精緻に把握し、「埋もれた潜在ニーズ」「他社が気づかない要求」から商品企画を始めることが、差別化されたOEM製品づくりの第一歩です。

市場調査の具体的アプローチ

1. 最終顧客の動向を読む
展示会や市場調査レポートの確認、エンドユーザーへのヒアリング等で「なぜ、今これが求められているのか?」の本質をつかみます。

2. 顧客企業(バイヤー)の課題探索
バイヤーの調達意図・新規参入障壁や競合状況・設備投資方針などを直接ヒアリングし、自社が「単なる供給者」でなく「提案型パートナー」になれる分野を見極めます。

3. グローバル市場・マクロ環境の分析
世界の景気・法規制変化・SDGs/カーボンニュートラル・サステナビリティなどの大きな潮流をキャッチし、自社技術との親和性や今後の成長分野を検討します。

4. 自社の強み・弱みを徹底洗い出し
技術力・コスト構造・サプライチェーン・工程自動化対応力・品質管理体制など、自社のケイパビリティと市場要求のギャップを可視化し、「狙うべき勝機」を明確にします。

OEMの商品企画プロセス:ゼロベースの発想と現場力の融合

市場調査の結果をもとに、実際の商品企画へ移ります。
ここで最も大切なのは、「調査で見つけた未充足ニーズに、いかにして自社の持つ技術・人材・設備で応えるか」のゼロベース発想です。

企画立案のポイント

1. バイヤー・エンドユーザー双方の“未充足領域”をとらえる
例えば、「既存商品に対する小さな不満」「今までなかった新たな使い道」「コスト競争に陥る分野での差別化要素」などを明確化します。

2. サプライチェーン・生産現場へのリアリティ
製品化アイデアは、「現場で本当に作れるか」「調達部材・工程・品質保証面で再現性があるか」まで丁寧に詰めます。
現場経験者ほど、これらの細部まで目が届き、机上の空論を実現可能な企画へと昇華できます。

3. 生産可視化・原価シミュレーション
商品企画段階から、採算計算やボトルネック工程の予見、内外製区分の判断等を入れておくことで、スムーズな開発進行が可能です。

4. プロトタイピングとループ型検証
サンプル作成→初期評価→顧客フィードバック→改良というPDCAを短サイクルで繰り返すことが、バイヤー満足度の高い商品に繋がります。

OEM開発の現場から得られる“リアルな知恵”

OEMの商品開発は、現実の生産環境やコスト・納期・品質など多様な制約との格闘でもあります。
ここでは、私が現場で経験した“泥くさいけれど本当に役立つノウハウ”を紹介します。

アナログ優先から抜け出す難しさと突破法

製造業の現場は、まだまだ“昭和の流れ”が色濃く残るアナログ業務・徒弟文化が根付いています。
その中で、市場調査や商品企画・工程設計といった「ホワイトカラー的」な業務と、現場の「現物現場現実」主義はしばしば衝突します。

この壁を乗り越えるには、
・現場の経験者が企画部門に入り組むこと
・数値と感覚の両方で仮説検証を行う「2重チェック」型の思考
・ITツール(クラウド型工程管理、IoTセンサー)を現場運用レベルで徹底活用する
などの地道な努力が肝要です。

バイヤーの「本音」を見抜く現場力

OEMパートナーのバイヤーは、しばしば「建前」と「本音」を使い分けています。
表向きは「価格重視」「仕様厳格」と言いながら、実は「納期の柔軟性」や「工程変更の容易さ」あるいは「不良時の迅速対応力」など総合力を期待していることも珍しくありません。

サプライヤー側は現場感覚や過去の取引から「いま本当に求められているのは何か」を見抜き、企画や生産体制を柔軟に設計する力が必要です。

OEM開発のプロジェクト推進体制

OEM商品開発を成功させるには、バイヤー・サプライヤー双方の『組織横断型』連携も重要です。

バイヤー視点:社内調整の要点

バイヤー企業側は、マーケティング、購買、設計、生産技術、品質保証など各部門の「本当に担保すべき要求事項」を整理し、サプライヤーに正確に伝える体制が大切です。
加えて、発注先選定では「価格だけでなく、将来の展開力や成長性、突発事態への現場対応力」まで加味すべきです。

サプライヤー視点:現場巻き込みとリーダーシップ

サプライヤー側は、営業・開発・調達・製造・品質管理の各部門を早い段階から巻き込み、「開発から量産、出荷、アフターサービスまでの全工程を見据えた商品設計」をリードする役割を徹底します。

これからのOEM開発で問われる「新地平」

市場や顧客、バイヤー、サプライヤーが旧来のアナログ思考からどう脱却し、「協働して価値を創る」ためのパラダイム転換が求められています。

AI・IoT・デジタル技術の導入によるリアルタイムな市場動向検知、従来になかった新素材・新工法の活用、カーボンニュートラルや多様性対応といった世界的テーマへの対応など、OEM開発にも「今までにない発想」と「それを現場でカタチに落とす現実力」の両立が問われます。

まとめ 〜OEM開発における市場調査と商品企画の極意〜

OEM開発は“ものづくり”の枠を超え、パートナー企業と共に新しい価値を生み出す現代的ビジネスです。
その始まりとなる市場調査と商品企画では、
・実際の市場・顧客・バイヤーの課題や未充足ニーズを徹底的に掘り下げ
・机上空論ではなく、現場・工程・コストなどリアルな要素と照合し
・従来のアナログ慣習も受け入れながらも、新たな発想や方法論を積極的に取り入れていく
ことが成功のポイントです。

日本の製造業は、これまでの“職人芸”と“現場力”という遺産を持ちながら、新しい時代にふさわしい思考と仕掛けを使いこなすことが大切です。
OEM開発の現場経験者だからこそわかる「理屈と現実の間を埋める知恵」が、今後ますます価値を持つでしょう。

これから製造業でバイヤーを志す方、サプライヤーポジションからバイヤー目線に迫りたい方。
皆さんの新しい挑戦に向けて、現場の知恵・実践的な視点をぜひ活かしていただきたいと思います。

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