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初めてのOEM/ODMロードマップ:3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月の見取り図

目次
はじめに:製造業現場から見たOEM/ODMのメリットと課題
近年、多くの製造業企業が新規事業や生産効率化の切り札としてOEM(Original Equipment Manufacturer)やODM(Original Design Manufacturer)を活用しています。
特に、自社ブランドを素早く市場投入したいスタートアップや新規参入企業、コストダウンを目指す大手メーカーでの需要は年々高まっています。
一方で、受託側(サプライヤー)にとっても技術や生産力のアピール、安定受注の獲得といったメリットがあります。
しかし、OEMやODMのプロジェクトを実際にスタートさせると、
「思っていたよりも段取りが複雑」
「どこまで何を任せてよいのかわからない」
「どのタイミングでどうコミュニケーションすれば効率的か知りたい」
といった課題や不安の声も現場から数多く聞こえてきます。
本記事では、バイヤー(発注側)・サプライヤー(受注側)双方の視点から、昭和的なアナログ慣習が根強く残る日本の製造業現場でも実践しやすい、OEM/ODMプロジェクトの「3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月の見取り図(ロードマップ)」を解説します。
現場経験者ならではの注意点や独自ノウハウ、成功させるためのマインドセットも紹介しますので、これからOEM/ODMに取り組む方、実務に携わる方、発注側の考えを知りたいサプライヤーの方はぜひ参考にしてください。
OEM/ODMプロジェクトの全体像とポイント
OEMとODM、それぞれの特徴と関与範囲の違い
OEMは「設計・仕様を発注側が決め、サプライヤー側はその通りに製品を製造する」モデルです。
一方ODMは、「設計やデザインも一部または全部、サプライヤーが提案し、製品化まで一気通貫で請け負う」モデルです。
どちらも「外部の力を借りて自社ブランドで売る」ことがゴールですが、発注側に求められる知識や管理体制、プロジェクト進行の主役が異なります。
昭和的な「とりあえず作ってみて、トラブルは現場で叩く」というアプローチは、品質・納期・コストのリスクを高め、結局は全体効率を下げます。
まずは関与範囲と役割分担を明確にし、ロードマップ設計の入口に立つことが肝要です。
ロードマップ設計の前提:関係者の合意と目線合わせ
OEM/ODMのプロジェクトは「自社の一部機能を、サプライヤーにゆだねること」が本質です。
どんなに計画が秀逸でも、社内外のステークホルダー(設計、調達、生産、小売・販売、品質管理)がそれぞれ異なるイメージを持っていたら、必ず現場で摩擦が起きます。
プロジェクト初期段階で「誰が何をどこまで決め、どこから委ねるか」「リスクが顕在化したとき、どちらが主導で動くか」「顧客や市場の要件はどこまで妥協できるか」など、白黒はっきりさせましょう。
3ヶ月:準備と情報整理フェーズ
情報の棚卸しと要件定義
最初の1ヶ月〜3ヶ月は「準備と情報整理」が中心です。
発注側(バイヤー)はまず、
・自社の事業方針や商品戦略
・生産量、価格、想定リードタイム
・品質基準や規格
・知的財産や図面、仕様書の有無
など、必要情報を徹底的に棚卸しします。
ここで大切なのは、「とにかく全部出してみる」ことと「要望の優先順位をつける」こと。
現場では「調達(バイヤー)が全部決めて現場に丸投げ」や、
「営業が受けてきた案件なのに、設計や品質管理部門が後で混乱する」
といった“部門間の縦割りトラブル”が多発します。
できればキックオフミーティングを設け、関係部署の担当者が集合して可視化・合意形成を図ってください。
サプライヤーの選定と交渉スタート
発注側は、OJT的に「どのサプライヤーなら信頼して任せられるか」「どの領域をアウトソースできるか」を見極めて、候補企業をピックアップします。
ここでポイントは、
・技術力やQC体制だけでなく、“現場感覚”や“問題対応力”
・見積もりだけでなく、「過去の失敗例」や「他社事例」を質問してリアルな対話を重視
昭和的な「取引先は系列だから安心」という発想は捨てて、現代は“レジリエンス(柔軟性・応変力)”にも注目しましょう。
初期交渉は、必ず仕様書やRFP(要求仕様書)をもとに、条件面のすり合わせを丁寧に行います。
6ヶ月:設計・試作・リスク検証フェーズ
PoC(試作・設計検証)の重要性
プロジェクトの中盤3ヶ月〜6ヶ月は、「設計・試作とリスク検証」です。
OEMであれば設計や仕様どおりに“量産試作”に進み、
ODMであればサプライヤー提案の“製品仕様”や“デザイン”を図面化・試作して評価します。
ここでありがちな失敗が、「試作段階の省略」や「部署ごとの部分最適」です。
昭和的な“現場力”に頼った職人技や口約束では、後々コストや手戻りのリスクに直結します。
試作フェーズでのチェックポイントは、
・設計図面/仕様に対する誤解やズレが現場レベルでないか
・材料や部品の標準化・共通化が進められているか
・試作結果のデータや不具合傾向を、三現(現場・現物・現実)的に分析しているか
このタイミングで顕在化した課題は、ベータ版をもとに「仕様変更の柔軟性」「品質のハードル」「生産の安定度」など、多面的に議論しましょう。
量産化/運用準備と工程調整
6ヶ月目にかけては、量産に向けての工程設計・品質要件の最終調整段階です。
バイヤーとサプライヤー双方の進捗状況を週次・月次のPDCAで管理し、「誰が・いつ・どこで・何をやるか」をガントチャート等で可視化します。
この時期は、
・検査仕様書、標準作業書などのドキュメント整備
・異常時のエスカレーションルールの整備
・量産前のファーストロット/パイロット生産での“現場テスト”
現業部門との情報共有や教育・訓練も欠かせません。
現場の暗黙知を言語化・見える化する努力が、最終的に“品質”と“納期”を守る強い現場をつくります。
12ヶ月:量産・継続改善とアフターサービスフェーズ
製品ローンチと市場流通
おおよそ12ヶ月前後で商品化・量産・市場ローンチというゴールを迎えます。
この時期は、「つくれば終わり」ではなく、「市場で売れて、お客様に満足されて初めて成果」です。
市場投入後は、
・品質不良や予期しないクレームの早期把握
・納入後の追跡調査・フィードバック体制
・生産ラインや工程への継続的なカイゼン活動
現場でありがちなアナログ的“なあなあ対応”は、取り返しのつかない信用失墜リスクに直結します。
ネット社会の今、“1件のクレーム”がSNSやECサイトで拡散される時代です。
現場・営業・品証・企画…あらゆる部門が、初動スピードと正確な対応フローを共有することが必要です。
生産・品質情報の蓄積と次期モデルへのフィードバック
また、OEM/ODMプロジェクトを“一度だけの取引”で終わらせず、ナレッジと経験を社内で体系化しましょう。
どの工程でどんなトラブルが起きやすかったか、どの契約条件や設計要素が後工程に良い/悪い影響をもたらしたかなど、データベース化が重要です。
“昭和的な属人化”から“ナレッジとDXによる組織的改善”へシフトすることが、今後のレジリエントなものづくり集団への進化につながります。
また、顧客ニーズの変化や新たな市場要求に応じて、次期モデル開発やODM提案へのステップアップも意識しましょう。
おわりに:OEM/ODM黎明期の現場マインドと成功するチームづくり
OEM/ODM導入フェーズの3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月とは、「何を、だれが、いつまでに、どこまでやるか」を明確化し、社内外のあらゆるアナログとデジタルの壁を突き崩していくプロセスです。
現場ベースで「多少のムリやごまかしで済ませる」文化は、DXやグローバル競争の今後、命取りになりかねません。
だからこそ、
・すべてを書き出して見える化すること
・曖昧な言葉や暗黙の了解をゼロベースで議論すること
・良い意味で“しつこく・細かく・現場主導”で詰めていくこと
が、アナログ文化からの脱却と業界の成長に直結します。
バイヤー、サプライヤー双方が「相手の目線」に立ち、現場で起きる“もやもや”や“違和感”も包み隠さず共有することで、ものづくり現場はさらに発展していきます。
OEMやODMのプロジェクトにおけるこの“現場ファースト”の考え方を、ぜひ皆さんの現場改革に役立ててください。
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