投稿日:2025年9月3日

B2Cで需要の高い日用品カテゴリにおけるOEM化の可能性

はじめに:B2C市場で注目される日用品とOEMの重要性

B2C市場、すなわち一般消費者向けのマーケットでは、日用品の需要が絶えることはありません。
消耗品であるためにリピート率が高く、コロナ禍を経て衛生用品や在宅支援グッズなど新たな需要が生まれています。
そのため、企業間取引(B2B)が主戦場だった製造業も、最終消費者に一歩近づくB2Cビジネスへのシフトや多角化が進んでいます。

ここ数年、「OEM(受託製造)」という形で、自社ブランドを持たないメーカーや商社、小売事業者までもが日用品分野へ参入しています。
昭和から続く“自前主義”や“系列志向”が根強い日本の製造業ですが、時代の変化と共にOEMが新たな成長エンジンになる時代。
現場を知る立場から、日用品カテゴリのB2C市場におけるOEM化の最新動向と今後の可能性について解説します。

B2C日用品市場でOEM化が盛り上がる背景

リスク分散・固定費削減の戦略的意義

日用品の市場は一見安定しているように見えますが、原材料価格の高騰や為替変動、流通網の混乱など、リスク要因も多く存在しています。
工場の設備投資や人員の確保は決して安価ではなく、需給バランスの変動により不稼働リスク(遊休設備)の損失も考慮する必要があります。
OEMは生産ラインやノウハウを既に持っているメーカーに委託することで、自社の初期投資を抑えつつ、少ロット・短納期にも柔軟に対応できます。
この「身軽さ」と「変化への追従力」は、従来型の“量産・大量流通”だけに頼れない現代において、大きなメリットとなっています。

ブランド多様化と消費者ニーズの細分化

かつては大手ナショナルブランドとプライベートブランドの2極構造で推移してきた日用品市場も、今や「個性」や「サステナブル」「地域性」など新しい切り口が求められる時代です。
小ロット多品種の新規商品のテスト販売や、一定地域限定アイテムの開発など、OEMならではの“スピード感”と“柔軟性”が最大の武器となります。

コロナ禍でEC(インターネット通販)が台頭し、小規模事業者が自社ブランド商品を気軽に立ち上げられるようになったこともOEM市場拡大を後押ししています。

昭和から脱却するアナログ製造業の変革

“現場至上主義”で生き残ってきた日本の製造業は、まだまだデジタル化や自動化が進んでいない現場も多いです。
しかし、受託生産ビジネスの拡大や設備共用が広がることで、DX(デジタルトランスフォーメーション)や工場の自動化への投資が現場でも進めやすくなるという側面もあります。
結果、アナログな現場文化の転換や新陳代謝を促し、業界全体を持続的に成長させていくことができます。

日用品OEMに実際どう参入できるか?現場視点で徹底解説

OEM受託メーカー選定の要点

OEM製造のパートナーとなる工場やメーカーを選ぶ際には、以下のような現場目線でのポイントが重要になります。

・ロットの柔軟性と生産キャパシティ
大手メーカーは大量ロットが前提ですが、ニッチ市場では小ロット生産への対応が必要です。
自社の販売計画や販路拡大のタイミングに応じて、調整力のある生産現場に強みがあるメーカーを選ぶことが肝要です。

・品質管理体制
B2C日用品では「安全・安心」が最大のセールスポイントです。
ISO9001・ISO14001などの国際認証取得、製造物責任(PL法)対策、トレーサビリティの面で信頼できるか、現場のオペレーションまで確認しましょう。

・開発サポート能力
商品企画や試作品開発のノウハウ、原材料調達ネットワーク、デザイン/パッケージ提案までワンストップ対応できるかが競争力の源泉です。

成功する日用品OEMの秘訣

・市場分析と差別化ポイントの明確化
どのような「未充足ニーズ」や「使用シーン」にリーチする商品なのかを徹底的に明文化しましょう。
消費者アンケートやSNSの口コミ分析からヒントを得ることができます。

・パートナー工場との誠実なコミュニケーション
現場感覚と営業戦略のズレを放置すると、納期や品質トラブルにつながりやすくなります。
「生産現場に足を運ぶ」「工程ごとの進捗確認」「不具合時の透明性のある情報共有」など、昭和の現場文化の「泥臭さの美学」も意識しましょう。

・初期コスト削減だけに目を取られない
特に化粧品・衛生用品などでは、最小ロットの単価はやや割高になります。
自社のブランド価値と継続的なスケーリング計画をもって、現場と一緒にコストダウン策を練りましょう。

B2C日用品OEMの業界動向とケーススタディ

衛生・健康カテゴリでの新潮流

除菌スプレー、ウエットティッシュ、マスクなどの衛生グッズは爆発的需要によりOEM参入が相次ぎました。
「アルコール配合」「アロマタイプ」「携帯用」など差別化切り口で地域密着メーカーが多数登場しています。

OEM化の進展によって、従来は自社製造一本だった老舗メーカーがOEMにも事業領域を広げるようになり、販路や商品開発の多様化が進行中です。

サステナブル視点での新規参入

環境配慮型洗剤、詰め替えボトル、再生プラスチック素材の商品は、もともと大手メーカー主導で展開された分野です。
しかし、OEM化によって、リサイクル原料供給に強い中小サプライヤーとコラボし、地域発のオリジナルブランドも誕生。
SDGs(持続可能な開発目標)への対応力は、新規事業成功の大きな武器となっています。

アナログ現場の自動化・DXとの融合

OEMビジネスの拡大は、生産ラインの自動化やAIによる品質監視、SCM(サプライチェーンマネジメント)自動化にも関心が高まっています。
現場設備のIoT化やBIツール活用による生産工程の見える化は、トレーサビリティ強化・不良品ゼロ体制の構築にもつながります。
“昭和感覚”のままでは競争についていけないことを、現場管理職も痛感しはじめているのが現状です。

サプライヤーの立場からOEMバイヤーの考えを理解する

OEMバイヤー(発注側)の最大の関心事は、安定した品質、納期遵守、そしてコスト削減にあります。
しかし、それだけではなく「開発スピード」や「市場の声の迅速なフィードバック」を受け止められる柔軟性も求められています。

現場でよくある問題は、「仕様変更への対応」や「突発的な受注変動」へのストレスです。
サプライヤーは、バイヤーの採用担当や企画担当と定期的に情報交換し、現場の制約や工程負荷を「見える化」。
OTD(On Time Delivery)のKPI管理や、異常時のリカバリー計画まで共有できる“協働体制”の構築が重要です。

また、単なる価格競争だけでなく「品質改善」「原材料の安定ソーシング」「サステナブル対応」など、+αの提案ができると長期的な関係構築につながります。

これから日用品OEMを目指す現場・バイヤーへのアドバイス

サプライヤー側へ

・自社の強みと他社との差別化ポイントを常に整理しておくこと
・見積回答や納期回答のスピード感を、“現場標準”ではなく“顧客標準”に合わせて見直す
・デジタルツール導入や工程改善によるコスト・品質・納期のPDCAサイクルを現場と一緒に回す
・海外OEM案件が増える場合の言語、規格対応など現場リソースの準備まで視野に入れる

バイヤー側へ

・OEMメーカーの現場力と開発力を客観的に評価し、単なる価格比較だけで絞り込まない
・商品開発のペース配分やテスト販売の頻度を、現場工場の負荷とバランスよく計画する
・現場担当者とのコミュニケーションを対話型で行い、「現場の困りごと」も受け止める姿勢を持つ
・サプライヤーの“昭和マインド”と“令和的スピード感”を融和させるため、定期的な相互レビューの場を設ける

まとめ:B2C日用品OEMの進化は現場と市場の化学反応

B2C市場で需要の高い日用品分野は、OEM化によって新たな可能性が広がっています。
単なる“コストダウン手段”ではなく、ブランド多様化・高付加価値・サステナブルなど、「モノづくり現場の力」と「生活者ニーズの多様化」が化学反応を起こす時代となりました。

サプライヤーもバイヤーも、一方通行ではなく共創・共進化のパートナーとして価値を磨き続けられる現場力が求められます。
これからも現場第一線から経営レベルまでが一体となり、日用品ビジネスに新風を起こしていくことが、アナログ業界の新生につながるでしょう。

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