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OEMアウターのサステナブル素材導入で気をつけるべき契約条件

目次
はじめに:サステナブル素材の普及とOEMアウターの現状
製造業の現場では近年、持続可能性を意識した素材選定が大きな潮流となっています。
とりわけアパレルOEM業界では、サステナブル素材の導入意欲が高まっていますが、導入にあたっては従来とは異なる契約条件やリスク管理が求められる場面が増えています。
本記事では、OEMアウター製造においてサステナブル素材を導入する際に気をつけるべき契約面のポイントについて、実践的かつ現場目線で深掘りしていきます。
製造業に従事する方、バイヤーを目指す方、そしてサプライヤーの立場でバイヤーの思考を知りたい方へ向けて、変わりゆくアナログ業界の本質も交えながら解説します。
OEMアウターにおけるサステナブル素材のトレンド
求められる持続可能性と透明性
サステナブル素材とは、再生繊維やオーガニックコットン、リサイクルポリエステル、環境配慮型染料など、環境負荷を抑えた素材を指します。
従来の合成繊維や石油由来素材からの脱却は、消費者の意識変化やSDGs推進の流れの中で、OEMバイヤーからの要求として急速に強まっています。
また、単なる素材の切り替えだけでなく、調達経路や原料証明、サプライチェーンの透明性も重視されるようになりました。
この流れは、これまで昭和からの慣習で「顔が見える取引」「目利き&経験値主義」が中心だったアナログ業界にも、DX化やトレーサビリティ強化の波として押し寄せています。
OEM生産における課題認識
OEMとは相手先ブランドの製品を受託製造する仕組みです。
買い手(バイヤー)は、環境ラベルやエシカルなバックグラウンドをセールスポイントにしたい反面、メーカーとしては原料確保の不安定化やコスト増、工程管理の難易度上昇といった課題と向き合っています。
このギャップを契約面でどう埋めていくのか。
それが次世代のアウターOEMで成功するためのカギとなります。
サステナブル素材導入時の契約条件、5つのポイント
1. 素材仕様・認証の定義を明確化する
サステナブル素材とは何か、その基準や定義が不明確だと、期待値のズレやクレームの温床になりかねません。
事前に原料種別(例:オーガニックコットン100%)、含有率、公的認証(GOTS、GRS、OEKO-TEXなど)の必要有無や提示範囲、第三者監査の有無まで、受発注双方で合意しておくことが重要です。
例えば「リサイクルポリエステル採用」とだけ記載されても、どれだけのリサイクル原料が混入しているのかはまちまちです。
仕様書や契約書において「リサイクル原料含有量80%以上」「Global Recycled Standard認証取得」のように数値的、客観的に記載すべきです。
伝統的な口約束主義や暗黙の了解が多い業界こそ、現場を知る管理職自らが認証条件や書類提出、監査立ち合い範囲まで細かく確認する姿勢が求められます。
2. サプライチェーンのトレーサビリティ担保
サステナブル素材はその「出自」が問われます。
どこの誰が、どのような環境管理下で、どんな工程を経て納入された素材なのか。
バイヤーは「不祥事リスク(グリーンウォッシュ)」を恐れており、メーカー側にもサプライチェーン全体でのトレーサビリティ資料・証明書提出など追加負担が求められます。
ここで重要なのが、一次下請け・二次下請け・原材料ベンダーまで遡るデータの取得と保全です。
例えば、従来から付き合いのある染色工場が「書類の提出に非協力的」「属人的な管理のまま」では、バイヤーの要望に応えられず契約不成立になるリスクすらあります。
無理にデータ提出をバイヤー向けに約束せず、まずは既存パートナーと現状確認を。
その上で、そこからどこまでトレーサビリティを情報的カバーできるか、段階的な合意を文書化することが現実的です。
3. 価格構成・原価転嫁ルールの取り決め
サステナブル素材はどうしてもコストアップ要因となりがちです。
素材価格の変動幅が大きく、また調達ロットや時期によって原価が異なります。
OEM契約書では「採用素材の価格変動リスク」をどちらがどの程度負担するかが重要な争点となります。
ここを従来通りの単年度固定価格で合意してしまうと、メーカー側だけがリスクを抱えることになります。
例えば「原料価格が前年度比20%以上高騰した場合は価格交渉に応じる」「海外為替変動がある場合は新為替レート反映」など、柔軟な価格調整ルールをあらかじめ明記して交渉しましょう。
業界的な慣習として「御社に任せる」「値段は据え置きで」とバイヤー側が押し切る場合がありますが、サステナブル調達下では現実的な判断と論理的説明能力が不可欠です。
4. 品質保証・適合検査体制の合意
サステナブル素材はバラつきや不具合リスクも大きい傾向があります。
例えば、オーガニックコットンは繊維の太さや品質にバラつきが出やすく、生地ロットによって色ムラや強度の違いが生じます。
従来品と比べ、品質規格や納入検査基準、返品条件、新しい不良発生時の対応ルールをOEM契約の中で細かく決めておくべきです。
また稀に「初回注文時にはバイヤー立ち会い検査」「第三者試験機関による素材判定」など追加的な検査費用や工数負担が発生します。
これらの追加コストもどちらが負担するのか、事前に話し合い、想定外の手戻りや納期遅延にならぬよう注意しましょう。
5. 継続供給の仕組みとリスク管理
サステナブル素材は流通量が限られており、旬の資源は引っ張りだこになります。
需給バランスが通常の合成繊維と違い、調達計画や受注生産ロットのずれが発生しやすいのが現実です。
例えばメーカーとして全量確保できない場合、「追加発注時は別規格品で代用可能か」「供給ストップ時のペナルティ規定」「平時の在庫責任範囲」などをあらかじめ契約書に明記することが大切です。
バイヤーも不安要素を理解した上で、継続供給体制の構築に協力的か、現場担当者の意図を汲み取る柔軟性が今後のカギとなります。
実務現場のあるある:アナログ業界脱却に立ちはだかる壁
調達・購買部門と生産現場の温度差
従来の製造業は「現場は現場」「調達は調達」と完全分業的な文化が強く残っています。
サステナブル素材導入においては、調達購買部門がバイヤー要望に引っ張られ、現場は納期や品質確保に追われている…という「温度差問題」が頻発します。
現実問題として、サステナブル素材は安定供給が難しく、納期遅延や品質ばらつきが起こりやすいのが特徴です。
無理な納期設定や、現場実情を無視したコストダウン指示は、経営リスクを高める恐れがあります。
現場長や管理職はサポート役に徹するのではなく、自ら契約条件の妥当性を吟味し、時にはバイヤーと正面から対話する姿勢が必要です。
DX化でも埋まらない属人的マインドの壁
トレーサビリティや書類管理システムの導入が進みつつある中、それでも「紙とハンコ」「電話とFAX」が根強く残るのがこの業界の実態です。
現場のベテラン層ほど「そんなことは昔からこうだ」「うちはうちのやり方がある」と変化を拒みがちですが、今後はサステナブル化=グローバル基準への適応です。
属人性を排した透明性ある業務フローへ移行するために、サステナブル素材を契機に「なぜいま変わらなければならないか」を社内で徹底的に議論しましょう。
これまでの人間関係を大切にしながらも、新素材・新契約条件を正しく理解し、次世代に対応できる生産現場作りが求められます。
OEMアウター契約における“ラテラルシンキング”のすすめ
発想の転換で新たな価値創出へ
サステナブル素材の導入には正解がありません。
逆境こそチャンスと捉えて、従来型OEMの枠を越えた提案力が生きる場面です。
たとえば
・小ロット受注から共同仕入れによるコスト抑制
・工場間連携による認証取得の協力
・顧客と直接イベントを開催し原料調達の現場を見せることによる付加価値創出
など、組み合わせと工夫次第で新しいパートナーシップやブランド力強化にも繋がります。
「これまで通りは通用しない」
「素材選定から契約条件まで、皆で協議し提案力を磨く」
これこそが、現場から始まるサステナブル時代のラテラルシンキングなのです。
まとめ:サステナブル素材導入契約の落とし穴と現場担当者へのメッセージ
OEMアウターにおけるサステナブル素材導入は、単なる“新素材”の投入に留まらず、取引契約の見直しや業務フロー改革も伴います。
ポイントは
・素材仕様・認証定義
・トレーサビリティ確保
・価格変動・原価転嫁
・品質保証体制
・供給リスク管理
昭和から続くアナログな付き合い方を大切にしつつも、グローバル基準と自社の実力を正しく認識し、現場・調達・営業が一丸となって変革に挑戦することが重要です。
「未来を変えるのは、いま製造現場で汗を流すあなた」です。
新たな素材で、より良いサプライチェーン、より誇れる商品、より強い組織づくりに、一歩を踏み出しましょう。
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