投稿日:2025年9月8日

OEMによるペットカート開発で失敗を防ぐ設計・試作の流れ

はじめに:OEMペットカート開発で直面する課題

ペット産業の成長に伴い、ペットカートのニーズが急速に広がっています。
OEM(相手先ブランド製造)によるペットカート開発に参入する企業も増えていますが、失敗事例も少なくありません。

設計や試作段階で失敗を避けるには、単なるコストダウンや図面通りの量産だけでは不十分です。
現場発想で「なぜ失敗が起きやすいのか」「バイヤーが何を求めているのか」を知り、実践に活かす視点が重要です。

この記事では、製造業の現場目線からOEMペットカート開発における設計・試作の正しい進め方と、その中で押さえておきたいノウハウを解説します。

OEMペットカート開発の全体フロー

ペットカートのOEM開発は大きく以下の流れで進みます。

  1. バイヤーヒアリング
  2. 商品企画・仕様確定
  3. 設計設計
  4. 試作・検証
  5. 量産設計・立ち上げ
  6. 出荷・納品

このプロセスごとに“失敗の芽”が潜んでいます。

ポイントは、アナログ業界特有の「伝達ミス」「勘と経験への依存」を排除し、デジタル技術や現場データを活用して着実に品質を積み上げることです。

ステップ1. バイヤーヒアリング ―なぜここから躓くのか?

OEMビジネスに参画する多くのサプライヤーが陥るのは、「バイヤーの要望を正しく深掘りできていない」ことです。

ペットカートでは特に、

  • ターゲットペットの種類や重さ
  • 飼い主の使い勝手や移動手段(階段・車・電車など)
  • 収納方式や折りたたみ方
  • デザイン性と安全性のバランス

など、細やかなヒアリングが必要です。

バイヤー自身が必ずしも製造に詳しいわけではないため、「こんな感じ」「今までのカートに似せて」という抽象的な依頼になることが多いです。

ここをそのまま受け取ると現場設計への伝達ミスが発生し、試作後の仕様変更に繋がります。
OEMサプライヤーとしては、QCD(品質・コスト・納期)をシビアに意識しつつ、ヒアリング力を磨くことが肝要です。

現場のリアル:昭和流“以心伝心”からの脱却

製造業では「この辺りは言わなくても分かるよね」といった昭和的な伝達文化が今も根強く残っています。
しかしOEMでは“当たり前”は大きなリスクです。

ヒアリング時は「なぜそれが必要なのか」「もし想定外の使い方をしたらどうなるか」と本質に迫る質問を投げかけ、文字と図面で記録することが必須です。

ステップ2. 商品企画・仕様策定 ―お客様視点と製造現場視点のせめぎ合い

バイヤーの要望を深掘りしたのち、商品スペックと詳細仕様を確定します。
ここで特に注意すべきは、「カートの軽量化」と「耐荷重・安定性」のトレードオフです。

市場調査では「軽さ重視」の指摘が多いですが、現場からすれば剛性・安全性を維持したまま重量を下げるのは技術的に容易ではありません。
小さなコスト要求や後工程の圧力で安易に妥協すると、事故リスクやリコールに直結します。

仕様はバイヤー本位に流されず、根拠ある技術計算やサンプリングテストの実績を添えて提案・合意形成することが必要です。

現場ノウハウ:各部材の“見えないコスト”を伝えられるか

軽量だからとアルミやプラスチックを選定した結果、現場での加工性や調達リードタイムが伸び、逆に納期リスクや品質不良が発生するケースが多発しています。
設計者や購買担当者はその材料選定の裏側の「現場負担コスト」を定量的に伝える力が今後求められます。

ステップ3. 設計設計 ―CADだけに頼らない、現物主義の大切さ

仕様が固まったらいよいよ設計工程です。
最新のCAD設計やシミュレーションツールが普及していますが、ペットカート分野は「実際のペットの動き」「突発的な押し引き」「段差でのショック」などシミュレーションだけでは完全に再現しきれない点が多々あります。

現代的な3Dデジタル設計と、アナログ的な「現場立会い」「設計意図のすり合わせ」を組み合わせる姿勢が重要です。

現場発想:設計レビュー会の本当の意味

率直に言えば、レビュー会が「単なる儀式」になっている現場もいまだに存在します。
設計者、調達購買、品質管理、製造現場――各部門が自分の専門分野だけでクローズになるのではなく、「なぜこの設計なのか」を互いに語り、リスクと費用感と現実的な工作性を“腹を割って”確かめる場が肝心です。

ステップ4. 試作・検証 ―生産現場を巻き込んだ素早いPDCA

設計を終えたら、まず小ロットの試作を行います。
ペットカートでは、標準モデルだけでなく「実際のペットを乗せて段差を越える/負荷をかけてみる」といった動的試験も不可欠です。

試作段階でよくある失敗例は以下の通りです。

  • 設計図通りだが組み立てが難しい(部品同士の公差やバリへの配慮不足)
  • 想定外の場所に力が集中し現場で破損
  • 生産現場で治具や道具の追加が判明し、工程設計が遅れる

このようなトラブルは、「設計担当+現場リーダー」の混合チームで昼礼・小集団活動を繰り返すことで、迅速にフィードバックし改善できます。

また、バイヤーにもプロトタイプを早期提示し、タッチアンドトライで意見を吸い上げると納得度が高まります。

現場志向:品質管理の“体感値”を活かす

JISやISOの基準だけでは拾いきれない現場の“勘所”こそ、アナログ産業ならではの強みです。
経験値の高いベテラン作業者の「ここが気になる」「こういう使い方もありそうだ」といった感触を記録し、設計改良に活かしましょう。

ステップ5. 量産設計・立ち上げ ―歩留まりとコストの見極め

試作が成功したからといって安心できないのが量産立ち上げです。
ペットカートの量産では「工程ごとの歩留まり」「部品調達ロス」「組立て・検査の標準化」が課題になります。

昭和時代からの「なんとか現場が頑張る」では通用しなくなっています。

以下の点に注意が必要です。

  • 作業手順書・動画を使って組立作業を見える化する
  • 不良品のフィードバックループを早期に確立する
  • バイヤー・サプライヤーの担当者同士が工程ごとに定例で歩留まり状況を共有する

現場の声を活かせるKPI(生産性・良品率・サイクルタイム等)を設けて評価することで、単なるコスト削減でなく現場の納得とやりがい創出にもつながります。

OEMサプライヤーが押さえるべき最新動向

近年は設計〜調達〜生産〜品質管理までデジタルツールで一元管理(PLM:Product Lifecycle Management)が進みつつあります。
ペットカート分野でもクラウドCADや簡易CAM、オンラインでの受発注・工程管理への置き換えが始まっています。

ですが、アナログ業界では「新技術への不安」「現場ノウハウの言語化ができていない」といった障壁が根強く、デジタル化のメリットを十分享受できていない事例も多いです。

OEMサプライヤーとしては、以下の「現場+デジタル」ミックスを意識しましょう。

  • 紙・口頭伝達をやめ、すべてを可視化し記録する
  • 現場作業手順やノウハウを動画・画像で蓄積する
  • 数値で管理できる項目(トレーサビリティ・作業時間など)をデータ化する

これにより、属人的な勘や経験から「再現性ある仕組み」への進化につながります。

まとめ:バイヤー・サプライヤー双方の“納得解”を追求しよう

OEMによるペットカート開発は、多様化・高度化した要望に応えつつ、品質・コスト・納期(QCD)を同時に満たすことが求められます。

・バイヤーの背景や真意を深くヒアリングし
・仕様を根拠あるかたちで提案・合意し
・設計から試作・量産まで現場の知恵を取り入れる
・現場のアナログ感覚と新たなデジタル技術のバランスを取る

こうした“地道なPDCA”が失敗を回避し、真に価値のある製品開発につながります。

今こそ、「昭和の個人技」から「令和のチームワーク型ものづくり」への転換を。
バイヤー・サプライヤー双方が納得できるパートナーシップを築き、ペットカート市場の明るい未来を一緒に創造していきましょう。

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