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OEM商品の価格レンジと収益シミュレーションの方法

目次
OEM商品の価格レンジと収益シミュレーションの方法
はじめに―製造業に求められる「価格戦略」とは
近年、製造業においてOEM(Original Equipment Manufacturer)商品の需要が高まっています。
多品種少量生産やBtoB取引の増加により、OEMビジネスは企業の成長戦略の一つとして欠かせません。
しかし、OEM案件を受ける際、多くの現場やバイヤーは「どのくらいの価格レンジが適切なのか」「利益は確保できるのか」という問いに悩みがちです。
ここでは、昭和的な“根性値決め”から脱却し、現場目線で成果の出る価格設定と収益シミュレーションの考え方、現代の業界動向までを幅広く解説します。
OEM商品の価格レンジ―現場目線での決定ポイント
なぜ価格レンジが重要なのか
価格レンジとは、「これ以上は高くできない」「これ未満では受けられない」の限界値を指します。
乱暴に「ユーザーの言い値で決めればいい」「社内原価を少し上乗せ」では、会社の持続的成長は難しくなります。
現場で価格レンジを見極めるために必要なのは、原価の正確な把握と競合他社との差別化ポイントの整理です。
アナログ現場にありがちな「値付けの落とし穴」
長年続く製造業界では、よく「勘と経験」がモノいう値付けがまかり通っています。
例えば「今年も原材料値上げだから〇〇円アップ」「去年のOEM案件は〇〇だったから上司に聞いた通りで」というスタンスです。
このやり方では市場価値との乖離や過小利益、果ては赤字受注を招く恐れがあります。
バイヤーの“心理”と価格レンジ
経験上、多くのバイヤーは下記ポイントを重視して価格を見ます。
– 競合他社との比較(コモディティ化の場合は特に)
– 費用対効果と品質のバランス
– サプライヤーの安定供給能力や信用
表面上は「できるだけ安く、品質良く」と語りますが、実際には調達先の分散リスクや、イレギュラー対応力、トレーサビリティ(追跡可能性)も重要な競争軸となります。
OEM商品の原価構成を見直す
原価計算の基本―大項目だけでは足りない
「材料費・加工費・外注費・諸経費・利益…」という大カテゴリ分けは一般的ですが、OEM案件では細部に利益損失リスクが潜みます。
特に次のようなポイントを見逃しがちです。
– 設計変更対応コスト
– 来期以降のメンテナンス・サポート要員の人件費
– 納期短縮や繁忙期シフト対応時のコスト増
これらをざっくり含めて見積りを作るのは、十分な利益確保には繋がりません。
現場でしかわからない「隠れコスト」の抽出
たとえば新規OEM案件の場合、「手順書の作成」「新規治具製作」「製造ラインのレイアウト変更」など、一見すると通常業務の一部として吸収しがちなコストも発生します。
現場管理職や調達担当同士でプロジェクト初期から棚卸しチェックリストを共有し、表に出ない手間や消耗品なども原価に織り込む習慣が大切です。
価格レンジの具体的な決定プロセス
1. 市場調査とベンチマーク
製品と類似スペックの市場価格(定価だけでなく卸値・実売価格等)を物流現場や販売店経由でリサーチします。
競合商品の強み・弱みを書き出し、社内の優位性・劣位性を明確化しましょう。
2. 原価積み上げ式シミュレーション
詳細な積み上げ(材料費×歩留まり、加工費×工数、管理費×回避率等)で1個あたりの最低売価(損益分岐点値)を算出します。
特に受注量のスケールメリット、歩留まり向上・工程自動化による原価変動も変数として加えることが必要です。
3. 受注量と価格の交差点を考える
OEMビジネスでは「ロットがまとまれば安く供給できる」が基本です。
一方で過去の注文履歴やバイヤーの事業計画を裏側から予想し、「年4000個超で○○円」「この量だと赤字」というレンジを整理します。
バイヤー・サプライヤー間で“納得できる落としどころ”を探るためには、見せて良い「レンジ」も用意し、慎重に交渉しましょう。
4. 競争入札への備えと戦略的値決め
最近は大手企業ほど「見積コンペ」形式を採っているケースも多いです。
安値競争になると自社の独自性が埋没しがちですが、顧客固有要件(例えば短納期、多品種混流、バーコード管理等)があれば、その分の付加価値による加点方式で価格をコントロールします。
昭和的な「丸投げOK」「うちは下請けだから言い値で」を続けていては利益も未来もありません。
OEMビジネスの収益シミュレーション手法
基本の「損益分岐点分析」
売上高、固定費、変動費、利益率…基本的な損益分岐点分析は、Excelや無料のWebツールでも用意できます。
1製品あたりの収支がどう推移するか、「生産ロット別」「歩留まり別」「出荷条件別」の複数パターンで収益シミュレーションを回してみます。
現場独自の「見えざるコスト変動」をどう反映するか
OEM案件において、ヒューマンエラーによるロスや予想外の検品回数アップなど、現場で初めて見えてくるコスト変動項目があります。
これらを「想定発生頻度」と「発生時コスト」のマトリクスで組み立て、平均ガード値(リスクバッファ)を上乗せするのが管理職・まとめ役の現場感です。
バイヤー・サプライヤー間の「ウィンウィン」を数字で見える化
最適価格設定は「自社が無理なく持続できる」「バイヤーが納得して継続発注する」両方の利益が交錯する点を探します。
“粘り強い現場交渉”と“数字に基づく納得材料”、この2軸で提案書や値決め議論ができれば、一次請け、二次請けサプライヤーであっても主導権を握りやすくなります。
世代交代・デジタル化が進む今、何が重要か
「安さ一辺倒」から「価値提供」への転換期
OEM価格交渉の現場では、従来の「安ければいい」から「工程管理・納期厳守・トレーサビリティなどの総合力」が求められています。
アナログ管理や曖昧な原価把握で受注してしまうリスクを避け、クラウドやIoT、MESなど現代の情報技術も活用し“見える原価”で納得価格を提示する体制づくりが進んでいます。
OEMビジネスの未来と変革のポイント
デジタル時代の製造現場では、「データ共有」「協働設計」「見積自動化」といった変革が起きています。
これにより、従来は明文化しづらかった現場ノウハウや“目配りコスト”も見積書に織り込みやすくなり、バイヤー・サプライヤー双方が健全にウィンウィンとなれる環境が整いつつあります。
20年以上の現場経験から言えるのは、「適切な価格レンジと確かな収益シミュレーション」こそが、目先の損得以上にOEMビジネスの未来を切り拓く力だということです。
昭和的価値観を尊重しつつ、現代の新たなツールや考え方を柔軟に取り入れながら、現場主導での価格交渉・収益管理に挑戦してみてください。
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