OEMを活用した海外展開ペット用品の輸出戦略

はじめに：OEMとは何か？

OEM（Original Equipment Manufacturer）とは、製造業の重要なビジネスモデルの一つです。
委託者（ブランド側）が設計・企画した製品を、受託者（工場側）が製造する形態を指します。
受託側は自社のブランドではなく、委託側ブランド名で出荷します。

最近ではアパレルや家電だけでなく、ペット用品分野でもOEMの活用が加速しています。
特にグローバル市場でのビジネス展開を目指す企業にとって、戦略的なOEM活用は欠かせません。

この記事では、
OEMを活用した海外展開のメリット、
ペット用品市場の動向、
輸出戦略上の注意点や成功するための工夫について、
現場目線で深く掘り下げていきたいと思います。

なぜ今、ペット用品の海外市場が熱いのか？

近年、世界中のペット人口は爆発的に増加しています。
既存の市場だけでなく、アジア、南米、中東、そして新興国でもペットを飼う文化が広がりつつあります。

こうした背景により、フードからケア用品、トイレタリーグッズ、アパレル、ベッドなど、さまざまなカテゴリのペット用品需要が高まっています。
特に、“家族化”の進行や、健康志向、安全志向などにより、高付加価値な商品が求められているのが世界的傾向です。

日本のペット用品は元来、品質が高い・細やか・安全性や衛生性に優れるというブランドイメージがあり、海外バイヤーからの注目度も非常に高い状況です。

OEM活用が海外展開で有利に働く理由

OEMを活用して海外にペット用品を輸出する場合、大きく分けて3つのメリットがあります。

①コスト競争力の確保とスピード感

自社で直接海外工場を立ち上げたり、現地に生産設備を持つことは時間もコストもかかります。
しかし、信頼できるOEMパートナーを選べば、初期投資を最小限に抑えつつ現地市場の需要に即した製品供給が可能になります。
また、製品化までのリードタイムが短縮でき、スピード勝負の海外市場でも優位に展開できます。

②現地事情・文化特性の把握

OEMパートナーの中にはグローバル展開の実績が豊富な企業も多く、そのノウハウを取り込めます。
加えて、現地独自の規制や文化・流通事情などは現場の人間でないと分からない部分も多いため、ローカライズや現地特化商品の開発にも強みを発揮できます。

③リスク分散と柔軟な生産体制

海外展開は為替リスク、政治変動、物流課題などさまざまな難題が立ちはだかります。
自社だけで生産体制を抱えるより、OEMネットワークを活用した分散生産体制の方がフレキシブルに危機対応できるのです。
このリスク分散の視点は、コロナ禍や政情不安が相次ぐ昨今のビジネス環境ではますます重要になっています。

OEM戦略で成功するペット用品輸出のステップ

それでは、実際にOEMを活用して海外でペット用品を展開するには、どのようなプロセス・工夫が必要なのでしょうか。

1. ターゲット市場の徹底リサーチ

昭和時代の「とりあえず輸出」は時代遅れです。
輸出先の市場規模、消費者のニーズ、競合商品の特徴、価格帯、輸入規制など、事前の調査が成否を左右します。

たとえば、欧州市場は禁止原料や動物愛護の基準が非常に厳格ですし、米国では訴訟リスクや安全規格コンプライアンスが重視されます。
途上国ではコスト意識や流通チャネルの整備状況が全く違います。

現場感覚でいうと、「その市場でどんなイヌやネコが人気なのか」「現地のバイヤーはどういう機能・デザインを好むのか」といった“肌感覚”の情報も非常に大切です。

2. 最適なOEMパートナーの選定基準

安易に見積もりだけで決めると後々“粗悪品”や“納期遅延”“規格違反”に泣かされます。
20年以上の現場経験で痛感するのは、品質管理体制（トレーサビリティ、QC工程）、現場の熟練度、コスト透明性、各種認証（ISO、GMP、FDA等）取得状況が重視ポイントです。

さらに、単なる“ものづくり”工場ではなく「輸出書類作成」「輸送規制」「言語の壁」などもカバーできるオールインワン型パートナーが望ましいです。
現場同士の“阿吽の呼吸”やトラブル時の即応性も重視しましょう。

3. バイヤー目線での商品開発と差別化戦略

「なぜその商品が現地のショップ・エンドユーザーに選ばれるのか」を深く考えることがOEMの最大効率化につながります。
バイヤーは価格競争力だけでなく、リコールリスク、サポート対応、トラブル時の柔軟さ、ブランド価値など多くの観点でサプライヤーを選定しています。
従って、製品訴求の軸（安全性、素材、機能、デザイン、ブランドストーリー）を明確にし、展示会やオンライン商談で“刺さる”説明ができる準備を重ねるべきです。

4. サプライチェーン・品質保証体制の構築

アナログ業界にありがちな「口約束」や「現地任せ」は禁物です。
工程管理・納期管理・品質管理・出荷後のトレースまで、一気通貫のシステム・フローを構築しましょう。

加えて、現地代理店や輸入ディストリビューターとの協調体制も必要です。
物流面でも多国間輸送や通関、現地倉庫対応など「現場で止まらない仕組み作り」を念頭に置いてください。

5. 持続的な改善・フィードバック体制

昭和的な「製品は作って終わり」から「納入後もPDCAを回し続ける」状態へと意識改革が必要です。
現地バイヤー、市場データ、SNSクチコミ、クレームなど、すべてを商品･サービス改善の種と捉え、継続的なバージョンアップとサポート体制を敷きましょう。

OEM活用ペット用品輸出の留意点：現場の本音と課題

華やかな海外展開には、実は水面下でさまざまな課題が潜んでいます。

品質基準の差異拡大とコンプライアンス強化

例えば、国内では自信のあった製品が「海外規制」にぶつかるケース。
材料・成分、ラベル表示、パッケージ規格など、国ごとにクリアすべき基準の数は想像以上です。
ほんの小さな含有成分や注意表示ミスで、商品が入港できなかったり回収命令を受けることもあります。

文化・嗜好・仕様のローカル適合

国ごとにペットの種類やペットオーナーの価値観が驚くほど異なります。
たとえば、西欧では「大型犬向け」、東南アジアでは「小型・室内向け商品」など、ターゲット想定そのものがずれていないかを、常に再点検しましょう。

バイヤー/Supplier間の情報非対称性解消

デジタル化が進む一方で、日本のサプライヤーは「商流の情報量」「商習慣の違い」に苦労しがちです。
バイヤーの“考えていること”——たとえば、リピート発注の基準、期待値、評価ポイント、決済/与信の設定意図などは、できるだけ事前にオープンにコミュニケーションしましょう。

現場の肌感覚としては、トラブル時“後出しジャンケン”を防ぐためにも、仕様書、契約、納期、支払条件、品質基準などは書面＋現場立会いでしっかり握る文化を根付かせるべきです。

昭和アナログ的マインドセットの抜本的変革を

まだまだ「勘と経験と根性」に頼りがちな昭和型製造業文化。
しかし、世界基準・IT化・サステナブルへの要求が高まる今、視点をアップデートしなければ海外市場で生き残るのは困難です。

デジタルプラットフォームを活用したバイヤー・サプライヤー間の情報可視化、専門コンサルや通関士など外部のプロとの協業、現場の多様化・柔軟化へのシフトが必須です。
現地のバイヤーニーズや法規制を深く咀嚼し、最前線の現場感覚と俯瞰的な構造設計を両軸で持つことで、本当の意味での「グローバル競争力」が養われると確信します。