投稿日:2025年8月8日

社内カタログ機能で定番部品をワンクリック発注し作業時間を大幅削減

はじめに:今、製造業現場で求められる“工数削減”の本質

現代の製造業は、一歩間違えれば利益が簡単に溶けてしまう「コスト競争」の最前線に立たされています。

その中で「作業の効率化」と「コスト削減」は、現場の命題です。

特に、調達購買部門を中心に生産管理や現場の担当者が日常的に向き合っている“定番部品の手配”作業は、多くの企業で未だにアナログなまま。

「FAXやメールで毎度同じような注文書を作り、都度確認…」
「担当者しか知らない担当サプライヤーに、毎回似たようなスペックで依頼」
これらの業務がどれだけ時間を奪っているか、現場をよく知る方なら、お分かりいただけるはずです。

そこで近年再び注目を集めているのが「社内カタログ機能」を用いた定番部品のワンクリック発注。

本記事では、20年以上の製造現場の経験をもとに、そのメリットと定着のコツ、業界ならではの課題解決方法を実践目線で深堀りしていきます。

社内カタログ機能とは?その基本と進化

社内カタログ機能とは、自社でよく使う定番部品や消耗品、備品などを、Webなどの社内システム上にリスト化し、“カート”感覚で選んで発注依頼できる仕組みです。

これまでは一部の資材部門や総務で運用されていたこの仕組みも、デジタル化の波と手軽なクラウドシステムの普及により、誰もが簡単に業務に取り入れやすくなっています。

昭和的調達文化とデジタル発注の断絶

多くの製造業では、未だに
「○○さんしか詳しく分からない」
「ベテラン担当者の経験と勘に依存」
「同じような注文でも毎回エクセル見直し&手書きFAX」
というアナログ文化が残っています。

しかし一方で、グローバル化やサプライチェーン高度化の流れで、高効率な資材・購買業務への見直しが急務となっています。

このギャップを埋めるのが「社内カタログ機能」であり、現場の流れを変える要です。

社内カタログによる業務改善メリット

社内カタログ機能の力は、「定番・繰り返し発注」の手間を徹底的に省略できる点にあります。

具体的メリットは以下の通りです。

1. 発注作業の標準化とスピード向上

カタログで選択するだけなので、毎回同じ品目の検索や入力が不要です。

スペックや取引条件も登録済みなので、発注者ごとのバラツキが減少し、「伝達ミス」や「入力漏れ」も最小限に。

発注に掛かる時間が10分の1以下に短縮される事例も珍しくありません。

2. ノウハウ属人化の解消

「誰が」「どの商品を」「どのサプライヤーへ」「どの価格で」といった情報が社内で可視化されるため、
担当者の不在で部品調達が止まるリスクを激減させます。

新人でもベテランでも、「カタログから選ぶだけ」のルールで最低限の発注ミスも防げるのが強みです。

3. 購買データの一元管理とコスト意識の浸透

どの部品を、どの事業所で、どの程度使っているかの可視化が容易に。

これにより「この部品の調達先、他にも交渉できないか?」「まとめ買いで更なるコストダウンは?」など
現場と調達部門の連携もスムーズになります。

また、発注基準やコストへの意識が会社全体に浸透しやすくなります。

4. サプライヤーとの協力関係の盤石化

定番部品を安定した量・サイクルで発注することで、サプライヤー側にも生産計画上のメリットが生まれます。

その結果、信頼関係が強化され、価格や納期交渉も有利に進めやすくなります。

現場でのリアルな課題と、導入の壁

「定番部品のワンクリック発注は理屈上は理想的だが、実際には現場でなかなか根付かない」という声を多く聞きます。

自らの経験をもとに、リアルな導入課題とその突破口を整理します。

システム化アレルギーと現場定着の失敗例

現場にITツールがなじまない典型例として、

– システムの操作が複雑で敬遠される
– 「カタログ登録」自体が面倒で後回しされる
– 細かな品番違いが山積みで、どれを「定番」にしてよいか決まらない
– イレギュラー対応で結局は従来手段(FAX・電話)に逆戻り

という現象が見られます。

これに対し、「現場目線」でどのようにサービスレベルを設計・運用するかがカギです。

実践で効果を出す、現場主導・バイヤー視点の導入プロセス

1. 「定番品の洗い出し」と「現場ヒアリング」から着手

社内の調達履歴をもとに「年あたり何回以上発注されているか」を指標にして、“本当に使われている部品”からカタログをスタートします。

この際、現場担当者や購買スタッフに
「どの部品で日々困っているか?」
「発注や納品ミスが多いのはどこか?」
「最近増えているイレギュラー発注は?」
など、リアルな声を吸い上げることがカギとなります。

2. 情報の粒度と更新性を意識してカタログ設計

品番、名称、仕様、サプライヤー名、価格、納期、最低ロットなど、「これだけ載っていれば現場が迷わない」ポイントに絞るのが現場主導のコツです。

また、現場ニーズや取引条件の変化に即応し、定期的にカタログ内容を見直す運用体制も重要です。

3. サプライヤーとの合意と巻き込み

社内だけでなくサプライヤーとの事前合意を図り、カタログ登録された定番品の
– 価格の妥当性(長期継続契約による値引き交渉)
– 標準納期・供給能力
– 新商品や代替品情報の通知ルール
などを取り決めておくことで、
「カタログに載せたけど実は在庫切れ」「想定外の値上げ」などのトラブルを防げます。

4. 現場と調達部門の“合意形成”と成果の共有

システム導入時はただの“ITツール”に終わらないよう、「どれだけ作業工数が減ったか」「コストがいくら下がったか」を現場・調達部門・経営層が共有し、成功体験を積み重ねることが最重要です。

現場を巻き込んだ「成果見える化」は、アナログ文化から脱却するエネルギーになります。

サプライヤーから見たバイヤーの行動心理と戦略

サプライヤー視点で見ると、社内カタログ化は「発注の安定・定量化」だけでなく、「価格競争への備え」「受注量の確保」「自社製品の“定番化”」という新たな競争軸になります。

カタログに“指名掲載”されることで、サプライヤーはバイヤー企業とのパートナーシップをより強固にでき、販売計画も立てやすくなる一方、
競合他社のカタログ掲載争いも熾烈です。

バイヤー側は、
「定番品は複数社競合にしておく」
「定期的なカタログ見直しでベストプライス交渉を継続」
「新製品や特注品は柔軟な対応力を評価」
など、相見積もりの仕組みも平行導入して、サプライヤーのモチベーションと品質向上を促します。

このバランス感覚こそ、バイヤーとしての現場知見が最も問われる部分です。

まとめ:小さな一歩が“製造現場の未来”を変える

社内カタログ機能の活用は、昭和型の属人化・非効率文化を抜本的に変える起爆剤です。

細かい部品の“ワンクリック発注”から、業務標準化・サプライチェーン全体のコスト競争力まで波及効果が広がります。

最初は少数の定番品、限られた現場からでも構いません。

現場担当者・バイヤー・サプライヤーが一体となって「本当に作業を減らせる仕組みとは何か?」を考え、小さな成功を積み重ねていく。

この一歩が、必ずや製造業の未来を強く、しなやかにしてくれると信じています。

現場の皆様、バイヤーを目指す方、サプライヤーの皆様。

共に現場目線で、これからの製造業の新しい地平線を切り拓いていきましょう。

You cannot copy content of this page