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OEMを活用して新規市場に参入する消耗品ビジネスの可能性

目次
はじめに:OEMで切り拓く消耗品ビジネスとは
現代の製造業界は、加速度的に変化しています。
その中でもOEM(Original Equipment Manufacturer:相手先ブランドによる製造)は、長らく続く業界構造を変革しつつ、新たな市場参入の武器として注目されています。
特に消耗品ビジネスでは、OEMの活用が従来の常識を覆しつつあるのが現状です。
今回は、製造業現場の視点で、OEMを活用した消耗品ビジネスの新規参入について、その可能性や課題、さらには具体的なトピックを深掘りします。
昭和的アナログ慣習が根強く残る業界構造のなかで、なぜOEMが突破口になるのか。
現場で20年以上を過ごした筆者の経験をもとに、ラテラルシンキングで実践的な内容をお届けします。
消耗品ビジネスにおけるOEMの役割とは
OEMの基本構造とサプライチェーン再定義
OEMは、製品を提供するブランドと、それを製造する企業が分離している形態です。
ブランド力、販路、企画力を持つ企業が、製造設備や技術力を持つ企業に生産を委託し、自社ブランドで販売します。
この仕組みは、かつては家電や自動車部品といった耐久財に多く用いられていましたが、近年は工場現場で使用される消耗品——たとえば潤滑油、カッティングツール、樹脂部品、フィルター、手袋、マスクなど——でも広がっています。
サプライチェーンの複雑化、グローバル化、QCD(品質・コスト・納期)要件の高度化を背景に、OEMを活用した「作り手と売り手の分業」は新しい市場の地平を開きつつあります。
なぜ今、消耗品分野でOEMが有効なのか
消耗品は、素材や生産ロットの工夫だけでは差別化が難しい一方、調達の効率・コスト削減、安定供給が何よりも重視される分野です。
ここにおいてOEMは、次のようなメリットを発揮します。
・初期投資を抑え、少量多品種の新規参入がしやすい
・大量生産によるコスト競争力向上
・ブランド力を活かした差別化やチャネル開拓
・現場ニーズに即したカスタマイズや短納期化の柔軟性
・品質保証やアフターサービス強化によるリスク最小化
近年では、消耗品の「サブスクリプション型供給」や「スマートファクトリーへのIoT連携消耗品」など、OEMを介した価値創造が新たな武器となっています。
OEM活用で実現する消耗品市場の参入戦略
現場視点での市場障壁と参入ルート
消耗品ビジネスは一見簡単に思われがちですが、業界独特の障壁が多く存在します。
昭和的な長期継続取引・口約束による仕入・取引慣行、大手商社やディーラーによる寡占状態、価格競争を重視した「安ければいい」文化、さらには現場担当者による仕様指定・スペックへのこだわりなど、参入障壁はかなり高いのが現実です。
この状況を打破するうえで、OEMは「隠された試行錯誤の場」となります。
たとえば、「自社ブランドでは敷居が高いが、OEM製造という裏方として参入してノウハウと信頼を蓄積する」あるいは「販売チャネルやパートナーシップを活かし、OEMで供給力・コスト力を補完する」といった二重構造の活用が現実的です。
社会環境の変化、たとえばパンデミックによる衛生用品需要増加、設備老朽化によるメンテナンス品需要などもOEM活用の追い風となっています。
実践的OEM導入のステップ
OEM活用による市場参入では、以下のプロセスが重要です。
1. 市場セグメントの明確化――どの消耗品分野で、新たな価値提供ができるか仮説を立てる
2. パートナー探索と選定――信頼できるOEM先の開拓、または自社がOEM供給者となるための条件整理
3. QCD要件の徹底管理――OEM先と一緒に、品質規格・コスト目標・安定供給体制を具体的に詰める
4. ローンチとフィードバックサイクル――実際に顧客への供給を開始、現場からのフィードバックをOEM先と共有して改良・拡張する
どの段階でも、自社の強み・OEM先の強みのすり合わせと、既存取引先・競合との差別化を徹底して考える姿勢が欠かせません。
OEMサプライヤーの立ち位置とバイヤーの本音
OEMサプライヤーに求められるもの
OEMサプライヤーとなる企業に求められるのは、つぎのようなポイントです。
・機密保持と信頼関係
・コスト・納期への柔軟対応力
・カスタマイズ・少量多品種への即応力
・不良品発生時のトラブル対応力
・法規制(RoHS、REACH、FSC等)やトレーサビリティ対応力
現場バイヤーからすると、「単に安いだけのOEMなら他社でも調達できる」というのが本音です。
むしろ、「特殊仕様への柔軟さ」「短サイクル試作」「現場へ踏み込んだ技術相談」などを通じて、現場課題の解決策を一緒に提示できるOEMサプライヤーほど重宝されます。
バイヤーの心理:なぜOEMサプライヤーを選ぶのか
調達バイヤーの多くは「リスク分散」「コスト低減」「納期短縮」「品質安定」をミッションとしています。
ただし、消耗品分野では現場担当者(=オペレーターや現場リーダー)からの“信頼”も大きな要因です。
OEMサプライヤーがバイヤーから選ばれるのは、
・自社の“直接管理できない領域”まで踏み込んで管理してくれる
・技術課題や予期しないトラブルに寄り添ってくれる
・「他がやらない繊細な仕様」や「国内外供給ネットワーク」など、表に出にくい付加価値がある
こういった側面が大きく働きます。
バイヤーは常に選択肢を持ちたい、リスクを小さくしたい、最小限の手間で最大効率を出したい。
この意識をOEMサプライヤーとして理解し、現場密着型で提案・提携する姿勢が、長期取引への近道です。
消耗品OEMビジネスで押さえたい最新トレンド
デジタル活用とスマートファクトリーの到来
OEM消耗品ビジネスは、今やデジタル化・IoT化と密接に関わる時代に突入しています。
・納品の“見える化”やトレーサビリティ対応(QRコード管理やクラウド在庫連携)
・消耗品の使用データと現場設備の稼働データを連携し、適正在庫/自動発注につなぐ
・バイヤーや現場責任者とのリアルタイムチャット、仕様変更リクエストへの迅速対応
これらは、OEMを介することで一気通貫のサポート体制を実現しやすい領域です。
特にスマートファクトリー化を目指す製造現場では、「部品そのものの供給」だけでなく「メンテナンスサービス」「納期データ分析」など、OEMの新しい付加価値が強く求められます。
エコロジー・SDGs対応 OEM供給の強み
持続可能性への関心が高まるなか、エコ資材や再生原料の消耗品、またサーキュラーエコノミーを志向したリマニュファクチャリング部材など、OEMによる柔軟な素材・仕様転換の事例が増加中です。
OEM事業者がサプライチェーン全体を俯瞰し、「省資源型提案」「廃棄物削減」「LCA(ライフサイクルアセスメント)対応」など新しい対応策を持つことで、先進バイヤーからの評価は急速に高まります。
サービス化・サブスクリプション消耗品の拡張力
工場自動化やIoT化とあいまって、「消耗品をモノ単体で売る」から「サービスとして供給する」ビジネスモデルへとシフトしています。
定期交換契約プランや、稼働状況に応じた消耗品供給の最適化など、OEMを介した包括的サービスへの需要は今後も拡大が予想されます。
とくにスタートアップ企業や業界外から新規参入する場合、OEMで生産力を補完しつつ、サービス面で独自価値を打ち出す手法は有効です。
まとめ:OEM×消耗品ビジネスで新たな価値共創を目指して
消耗品ビジネスにおけるOEM活用は、単なるコストダウンの仕組みを超えて、販路開拓・付加価値創出・サプライチェーン強化という“複合的な挑戦”の場になっています。
市場の変化をただ待つのではなく、現場密着型のOEM開発で、「自社ならでは」「まだ発見されていない」価値を顧客と一緒に模索する姿勢がこれまで以上に求められています。
サプライヤー・バイヤーの両視点を理解し、アナログ的な部分とデジタル化・サービス化の波をバランス良くとらえたOEM消耗品ビジネスは、今後も新たな市場の扉を開くでしょう。
現場で培った経験、失敗と工夫の積み重ねこそが、次世代のOEMビジネスをリードする最大の資産であることを、ここに強調しておきたいと思います。
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