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サンダルの鼻緒が抜けない接着剤硬化時間と引張試験の最適設計

目次
はじめに~なぜサンダルの鼻緒が抜けるのか
サンダルは私たちの日常生活に深く溶け込んでいますが、一度鼻緒が抜けてしまうと、そのサンダルの寿命は著しく縮まります。
特に夏の時期、たくさん歩くシーンで突然鼻緒が外れ、困ってしまった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
メーカー側から見ると、「いかに長持ちするサンダルを作るか」「歩行中の応力に耐えられる設計とするか」は大きな課題です。
この解決策の一つが、接着剤の適切な硬化時間の設定と、それに基づいた引張試験(テスト)による強度確認にあります。
本記事では、20年以上の製造現場経験で得たノウハウをもとに、現場目線で「サンダル鼻緒の抜けない設計」のポイントを実践的に解説します。
サンダル製造における鼻緒の接着工程とは
サンダル製造の中で、実際の現場ではどうやって鼻緒を取り付けているのでしょうか。
一般的なフローは以下の通りです。
- サンダル本体(ソール部)の成形
- 鼻緒の素材の準備
- 接着剤の塗布
- 鼻緒の挿入・固定
- 接着剤の硬化(乾燥・加熱も含む)
- 仕上げ検査(引張試験含む)
この中で接着剤の「塗布」「硬化」「試験」の工程が、サンダルの耐久性に大きく関わる肝となります。
現場でありがちな課題
・接着剤の量が多すぎる/少なすぎる
・硬化時間がバラバラ(夏と冬で大きく変動)
・引張試験が形骸化している
・作業員の経験値頼み
こうした状況が続くことで、不良品の発生率が高まり、山積在庫・クレーム対応など、あらゆる工程で「ムダ」や「ロス」を生んでしまいます。
接着剤の硬化時間とは何か?基礎知識の整理
業界用語ではありますが、念のため「硬化時間」とは何かを改めて整理します。
「硬化」と「乾燥」の違い
接着剤が「乾燥」するとは、水分や溶剤が蒸発すること。
「硬化」とは、化学反応によって分子構造が変化し、固体化して強度が得られる現象を指します。
すなわち、見た目が乾いていたとしても、内部で化学反応が未完了の場合、本来の強度がまだ発揮されていない可能性があります。
現場では「硬化待ち」と言いながら、実際は「乾燥待ち」しかしていなかった…ということがしばしば見受けられます。
接着剤のタイプによる硬化時間の違い
サンダル製造で一般的に使われる接着剤の種類は大別して2つあります。
1) 溶剤系:空気中の水分や熱によって乾燥・硬化する
2) 化学反応系:二液混合や紫外線など、外部刺激で化学反応が進行する
どちらも説明書には「指触・初期硬化○分」「完全硬化24時間」などと記載がありますが、実際の製造現場では、季節・温度・湿度・塗布量・素材種類などが本来のスペックに強い影響を与えます。
また、メーカーの推奨スペックに頼るだけでなく、自社・自工場の「実際の現場条件下」での硬化テストが不可欠です。
引張試験による最適化設計とは
どれだけ「適切な硬化」を行ったとしても、鼻緒が簡単に抜けてしまうようでは、接着工程の意味がありません。
そのため、「引張試験」を活用して、適正な接着強度を調べる必要があります。
引張試験の進め方
サンダル鼻緒部の引張試験は、大きく分けて以下のポイントで実施します。
・取り付けた鼻緒を規定スピード・方向で引っ張る
・破断(抜け)までの荷重(Nまたはkgf)を測定する
・目標数値との比較(例えば「50N以上で抜けない」など)
業界動向—どこまでテストしているか
実はサンダル業界では、「引張試験の基準値」がメーカー毎、商品ランク毎にバラバラなのが現状です。
老舗や下請け小規模工場では、「親方の感覚」「これまでの経験値」に頼るアナログな方法も根強く残っています。
一方、グローバルブランドや大手量販店PB(プライベートブランド)品などは、「ISO基準」や「JIS規格に基づいた抜け強度の保証」が求められるようになっています。
ここに、サプライヤー(下請け側)は自社の引張試験データをしっかり準備し、バイヤー(発注側)の要求に応えられる「見える化」「管理手法」を持つことが大きな競争力になります。
現場で使える!硬化時間と引張強度の最適設計フロー
製造現場で実際に使える仕組みとして、硬化時間と引張試験の最適設計例をご紹介します。
1. 原材料・接着剤スペックの「適正情報」の取得
メーカーカタログ・SDS・サンプルデータなど、すべての接着剤情報を整理します。
工場の「温度・湿度」「素材特性」「塗布量」といった自社条件もリスト化し、実際の生産現場でのエビデンスとします。
2. シミュレーションと小ロット検証
新たな接着剤や新素材を使う場合は、生産現場を想定したミニテスト(工程通りの温湿度・作業ペース・塗布量など)を複数パターン実施します。
ここでポイントとなるのは、最終ユーザーを想定した「歩行時の力」に基づく引張試験です。
JISや海外規格で参考値を集めながら、自社基準値(例えば平均的な成人男性の全体重の2倍=約120kgf相当に耐える、など)を設計します。
3. 標準工程書(SOP)へ落とし込む
接着剤の塗布量、硬化時間、気温や湿度ごとの注意点、検査タイミングまで明示した標準工程書(SOP)を整備します。
定量的な「○時間硬化」「○N以上の引張試験合格」などの基準を設け、現場の誰が作業しても一定品質が出せる体制を作ります。
4. 引張試験の見える化と記録管理
検査現場に引張試験機を常設し、生産ロット毎に抜き取り検査を実施します。
抜けた・抜けないだけでなく「何Nで抜けた」の記録を残し、不具合品・歩留まりを数値で分析します。
このデータを蓄積することで、作業者・作業条件ごとのバラつきや、長期変化・季節要因の影響をタイムリーに把握できます。
5. バイヤー・顧客への「品質証明」として活用
完成品の「引張強度実測データ」をバイヤーに提出することで、商品企画段階から納品後のクレーム対応まで、バリューチェーン全体での信頼性向上につながります。
特にOEMや海外輸出の場合、「自社品質管理基準」としての公的な証明が競争力となることは、ここ数年で業界トレンドになりつつあります。
サプライヤー・バイヤーのための実践的アドバイス
サプライヤー視点
・「うちのやり方」を守るだけでなく、バイヤー側の要求品質・顧客クレーム情報にも積極的にアンテナを張る
・引張試験の数値だけでなく「どんな条件で試験したのか」までをデータ化
・現場のアナログ管理とデジタルデータ(Excel等)のハイブリッドを活用し、抜け漏れを防ぐ
・工程短縮化(硬化時間の短縮など)と不良率のトレードオフを都度評価する
バイヤー視点
・発注先選定では「引張試験データ」の有無を評価基準にする
・「忙しいから短納期で」と無理強いすることが硬化不良→抜け不良→クレーム増加につながることを理解する
・「なぜこの強度基準なのか」を現場と一緒に考える姿勢を持つ
昭和から令和へ—アナログとDXの融合による業界革新
現場力や職人技も間違いなく重要ですが、「経験だけで未来は守れない」ことも事実です。
本記事でご紹介したように、「最適な硬化時間」と「引張試験強度」のロジカルな設計は、規模に関わらず全てのサプライヤーにとって今や必須の取り組みです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用し、IoTセンサーで硬化状態を記録したり、クラウドの試験データ管理で一元化する事例も増えてきました。
しかし、「どれだけ高度な道具を使っても、基本の作業工程がいい加減では意味がない」という昭和的な現場感覚もおろそかにはできません。
アナログ・デジタル双方の強みを現場で活かし、抜けないサンダル作りを目指すことがこれからの製造業の新しい価値創造になると確信しています。
まとめ
サンダルの鼻緒が抜けないための最適設計は、「適切な接着剤硬化時間」と「現場目線の引張試験」の2本柱から生まれます。
昭和期から変わらない手仕事の精度と、現代的な数値管理をうまく融合することが、アナログ業界の次なる成長のカギです。
サプライヤー・バイヤー問わず、現場で起こる真の課題と向き合い、抜けないサンダル生産に一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
現場で使える実践的な知見が、次世代のものづくりを支える力になることを願っています。
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