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紙箱の角が潰れない罫線深さと折りプレス速度の最適化

目次
はじめに:紙箱の角つぶれ問題とは
工場現場を長年経験していると、包装資材、とりわけ紙箱における「角つぶれ」問題の厄介さには頭を悩まされてきました。
最終製品の外装として顧客の目に真っ先に触れる部分である紙箱は、見た目の良し悪しが品質評価に直結します。
特にEC需要の拡大や、店頭で手に取られる商品のパッケージ化が進む現在、紙箱の隅が潰れてしまうトラブルは生産現場だけでなくサプライチェーン全体の課題となっています。
この記事では、紙箱製造の現場で実際に起こる角つぶれ問題と、その核心である「罫線深さ」と「折りプレス速度」の最適化について、実践的なノウハウや業界・現場でのリアルな経験をもとに深掘りします。
アナログ時代から引き継がれる慣習や「非合理な常識」を照らし合わせながら、最新の知見で新たな地平線を切り拓くヒントを提供します。
バイヤーを目指す方、紙箱メーカーや包材サプライヤーの現場担当者、さらには製造業界で幅広く活躍したい方にも役立つ内容となるよう心がけました。
紙箱角つぶれのメカニズム:原因を現場目線で理解する
罫線(ケイセン)とは何か
紙箱(段ボール、厚紙含む)における「罫線」とは、板紙に折り曲げやすい溝を設ける工程を指します。
この罫線の深さや形状は、箱の組み立て難易度や完成品の仕上がりに大きな影響を与えます。
現場では「罫押し」、「スジ入れ」などとも呼ばれており、ベテラン職人の感覚や、メンテナンス担当者の独自ノウハウが色濃く残っている領域です。
角つぶれの主原因は何か
多くの現場検証とFMEA(故障モード影響解析)から明らかなように、紙箱の角が潰れてしまう主要な要因には
– 罫線の深さが適正でない
– 紙質と罫線設定のミスマッチ
– 折り曲げ工程の速度・加圧不適正
– 組み立て工程での段取り不良
– 輸送・保管時の過荷重(積み重ねパターン)
などがあります。
とりわけ「成型工程(折り+プレス)」で、罫線の深さとプレス速度が適切でない場合、折れた角が紙の繊維構造を壊しやすくなり、これが潰れの発生源となります。
また、作業者の慣れやヒューマンエラーも潜在的なリスクです。
紙箱の罫線深さ―現場の「勘」から「標準化」へ
罫線深さの目安は「紙厚の1/3」だけではない
古くから「罫線の深さは紙厚の1/3が目安」と言われてきました。
しかし、これはあくまでも標準的な地合い・グレードの紙での経験則に過ぎません。
最近はリサイクル材入りや高強度紙、環境配慮型の特殊紙の普及で、紙質による罫線の入り方に大きなばらつきが出ています。
現場で見逃しがちな「紙の繊維方向」「含水率」「表面コート有無」も、罫線の適正深度を左右します。
実際の現場では、同じ紙厚でも、
– 坪量が高い(密度が高い)→罫線は深く
– 繊維が柔らかい、または表面にコーティングがある→罫線は浅く
といった細かな調整が求められます。
そのため、ダイヤルゲージなどで常に罫線深さを計測し「開発時のトライアル」「現場の貼箱テスト」→「標準値のアップデート」をPDCAサイクルで運用することがポイントです。
最新工場は「デジタル罫線」管理へ
IoTの普及により、レーザーやセンサーで「罫線深さ」をリアルタイムで計測・記録できる設備も登場しています。
これにより、複数現場や協力工場間で「罫線標準値」を客観的なデータでシェアしやすくなりました。
しかし日本の多くの現場では、古い“手動ダイス”や「ベテランの目分量」が依然として主流となっており、罫線精度のバラツキが発生しています。
バイヤーや調達担当としては、サプライヤー選定時に「罫線管理の質」をよくヒアリングし、調達先の技術力や品質意識を見極めることが重要です。
折りプレス速度と加圧管理:過剰なスピードが角つぶれを招く理由
なぜ折りプレス速度が重要なのか
組み立てラインで大量生産を追求すると、つい「できるだけ早く」箱を折り・プレスしたくなります。
しかしプレス速度が速すぎると、紙の繊維内に圧力が十分に浸透せず、罫線部に亀裂が生じやすくなります。
また、自動機械では「押えロール圧力」と「ライン速度」のコンビネーション管理が甘い場合、「角がわずかに凹む」「一気に割れる」といった角つぶれ不良が増えます。
これを「見た目不良」として省くのが難しいことも現場の実情です。
加圧プロファイルのカスタマイズが解決のカギ
品質重視の工場では、紙厚・罫線深度ごとに「プレス圧力と速度」の最適パラメータを
– スロースタート→フルプレス→スローアウト
などと細かくカスタマイズしています。
たとえば「厚手の紙」+「罫線浅め」の場合、最初はゆっくりと折り始め、徐々に加圧・加速し、最後に圧縮しすぎないよう抜き取るパターンです。
逆に「柔らかい紙」+「罫線深め」では比較的早い速度でも問題が起きにくいですが、紙質のムラやロール圧のズレに注意します。
現場で多いミスとして「メンテナンス不足」「加圧ローラーのガタつき」「速度センサー不調」もあり、OEE(設備総合効率)向上の観点でも要チェックです。
昭和から続く紙箱業界の“アナログ”課題と改革
「目視検査」と「職人頼み」を乗り換えるコツ
現場に根強い習慣として
– エース職人の経験に頼る
– 角つぶれ基準は「目視・触感」
– 不良が出たらその場で“応急処置”
など、属人的ノウハウが問題の本質解決を妨げてきました。
平成から令和の今、バイヤーやサプライヤーそれぞれが
– データ記録(罫線深さ・加圧・不良発生率)の「見える化」
– 品質検査の自動化(画像検査機、AI外観解析)
– 標準化・教育マニュアルの整備
を推進することで、組織全体の品質を底上げするフェーズに入っています。
この流れはESG(環境・社会・ガバナンス)投資やSDGsの観点からも重要視されており、“新しい昭和・平成常識”の刷新が現場の生産性と顧客満足向上につながります。
最適な罫線&折りプレス条件の決め方―現場の実験プロセスとコツ
試作サイクルで「理論」と「現場感覚」を融合させる
理想的な条件を導くためには
– 紙質ごとの罫線テスト(数値計測+仕上がり外観評価)
– プレス速度・圧力を複数組み合わせた組み立てテスト
– 組み立て→輸送→開封までの“実使用シミュレーション”
を、現場主導で企画・実施することが不可欠です。
ポイントは、
– バイヤー/サプライヤー/品質保証部門を巻き込む
– データに基づいた条件表(設定値マトリックス)を作成
– 不良率・クレーム件数の推移をKPIとして一元管理
など、全社最適を目指すことです。
「誤差を楽しむ」スタンスで再現性を追求する
紙箱生産は素材の個体差が大きく、完全な再現性は難しい世界です。
しかしこの「誤差」や「微妙なバラツキ」を個性や学びのチャンスととらえ、現場の試行錯誤や改善活動につなげる文化づくりが、最終的な“角つぶれゼロ”の目標達成にも寄与します。
昭和の現場では「決められたことを守れ」が重視されていましたが、今後は「標準からどれくらい逸脱したら問題か」も同時に管理する考え方が求められます。
バイヤー・サプライヤーが知っておくべき「罫線深さ・プレス速度」管理の最前線
最適化のためのツールと人材育成
最新の設備・ICTだけでなく、「なぜこのパラメータが重要なのか」を現場全体で共有する飢材育成やQCストーリーの構築が、ヒト+技術の両輪として不可欠です。
とくに「デジタル管理+現場対応」のハイブリッド型人材の育成が競争力を左右します。
調達・購買の視点からのチェックリスト
– サプライヤー選定時に「罫線管理、プレス速度管理」の手順・実績を事前確認
– 実機立会い(立上げ時、変更時)で現場検証する
– テストサンプル入手→自社工程連携で不具合フロー確認
– トレーサビリティを持ったデータ記録(ロットごとに履歴)
– 定期的な見直しと協働改善活動の仕組み化
これらはコスト低減のみならず、見栄え品質や市場クレームのリスク低減にも大きく寄与します。
おわりに―“角つぶれゼロ”実現へ、発想のラテラルシンキングを
紙箱の角つぶれ対策は、単なる作業改善ではなく「素材×工程×人」を一体的に考え抜くラテラルシンキングが必要です。
従来の現場の“勘”や経験も大切にしつつ、数値とプロセスの見える化、新技術の導入、組織横断の改善活動を積極的に取り入れることで、製造業としての新たな価値創造が実現します。
この記事が、日々の現場で悩む方、新たな改善に挑戦したい方、バイヤーやサプライヤーの立場で自社・顧客双方の満足度向上を目指す方の一助となれば幸いです。
「角つぶれゼロ」の道は険しくとも、常に“現場軸”+“新しい発想”で歩み続けましょう。
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